「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第6回のテーマは「不満は借金」です。

  • 夫婦間の不満は「借金」

実は、うちの夫はキレる人なのです……。

基本的にはいい人なんですが、いくつか「キレる」スイッチがあって、それに触れるとキレてしまいます。これは私が夫に対して思っている「唯一、かつ最大の欠点」だと思っているのですが、逆に言えばそこ以外には不満がありませんでした。

なので、付き合いはじめからある時点までは、そういう場面になると私が一歩引いて「いつもはいい人だし、こういう感情的なモードの時に何を言ってもしょうがないし……」と我慢していました。

んが! ある時、「我慢の限界!!!」に達した私が5倍くらいキレ返し、大爆発。

その後、1カ月以上の冷戦を経て、夫から「もうキレないように努力する」と言われ、「不機嫌とキレるのは加害行為である」「キレた時点で正当性は一切ない」と認めさせて和解しました。

マイナスの感情って「借金」と同じなんだと思います。

最初のうちは、「まあ、これくらい」とか「家族なんだし」とか思って許してしまう。ところがそれが解消されないまま、次もまたその「イヤだな」ということが起こり、一つ一つは些細なことでも、それがだんだんと溜まった末、ある日「もう無理!!!」と限界を超えてしまう。

離婚を経験して、「離婚や別れの原因になることは避けよう」と日々努力しているのに、それでも無自覚、そして無意識に我慢したり溜め込んだりしてしまうんだな……と自分も反省しました。

この時の私が溜めてしまっていた「負債の処理」は時間もかかったし、実際に夫婦の危機でした。それでも乗り越えられたのは、お互い「別れないように努力しよう」という共通の目的があったからだし、その後夫が自分の欠点を認めて改善しようと努力しているのがわかったからです。

とはいえ、これ以降まったくこういう問題がなくなったかと言えばそうでもなく、日々小競り合いはあります。それでも以前のように、「いやここは私が引いて我慢して、事を収めなくては……」みたいな気持ちはなくなりました。それは問題の先送りだし、負債を溜め込むだけなので。

大爆発以降、私は夫の「不機嫌」や「キレ」を一切許容も我慢もせずに、「イヤだな」と思った瞬間に「イヤだ」と意思表示するようにしています。さすがに夫もその時点で「あっ、またやってしまった!」と気が付くのでそこで修復できます。

前回「お願いの練習をする」という話をしましたが、「我慢せずにすぐに不満を伝える」のも日々の練習だと思っていて、問題が小さいうちに処理をしていくのが大切だと実感しています。そして練習を積み重ねていくうちに、徐々に同じ失敗をすることがなくなっていきました。

というわけで、最近は夫が理不尽に突然キレることが少なくなっていて「人は何歳からでも変われるんだなあ……」と感じられるようになりました! もちろん、ここに至るのには夫が努力できる人だったから、というのもあります。こういうのは誰にでもできることではないのかもしれない。

でも、「自分は(相手は)こういう人間だから」と諦めずに「もっと快適な人間関係を築いて、円満に生活したい」という気持ちがあれば、ある程度のことは改善できるんじゃないかなと思っています。

負債を抱え込みすぎて、取り返しの付かない「破産=離婚」になる前に「こまめな不満の清算」をオススメします。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。