「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第54回のテーマは「お母さんの『怒りのツボ』」です。

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息子にも、パートナーにも「怒らないで言う」「かわいくお願いする」という価値観を共有して、家族で実践している我が家なのですが……。

私は息子が本を雑に扱うと、怒ってしまいます。いや、そりゃ踏むのは言語道断。本は壊れるから! せっかく買ったのに壊すならもう買わないよ!!! といきなりテンション高めの叱責が出ます。しかし、踏むだけでなく「本の上で飲み物を飲む」とか「汚れた手で本を触る」とかも「ちょっとやめて!」と叱ってしまいます。

やっぱり余裕がないと、怒っちゃうんだな〜と思います。本は汚れたり、破れたり、折れたりすると、なかなか「キレイ」に後戻りができないものなので、できる限り本をキレイに保ちたい私は「ギャー」ってなっちゃうのです。

これに関しては、自分的には「落ち着いて、わかってもらえるように話そう」という気はないです。子ども自身がケガしそうになってるときや、誰かに危害を与えそうなときに「落ち着いて伝える」とか、やってられないじゃないですか。私にとっては本も同じで破損させたくないわけです。なので強めの「抑止」が出ます。

「相手は子どもなんだし、本とか大事にできないよ〜」と、本に対してあまりこだわりなく思っていられたら大丈夫なのかなとは思います。

実際、息子が赤ちゃんのときは全然気になりませんでした。しかし、息子自身が3歳くらいから本が好きになって「この本がいい」と本を選んだり、自分で読んだりするようになると「自分と同じくらい本を大事にしてほしい」という気持ちが高まってきたんですよね。

でも、私と息子は別の人間なのに「同じ価値観でいてほしい」と思うのは危険です。相手との差違にイライラしちゃうからです。たとえ親が買ったとしても、それは「息子の本」で息子がどう扱ってもある程度は尊重するべき……と思うように、自分で注意しています。

もちろん、踏むとか折るとか破損は「息子を尊重」する以前に、ダメなことなんですけど、一番私が「うう……」と抵抗を感じてしまうのが、実は「カバーを外す」「帯を捨てる」ことなんです……。

これは大人でも分かれるところだと思いますが、私は「本の帯が捨てられない」タイプなんです……!!!

というか、私は仕事で本の装丁をすることもあり「本はカバーも帯もセットでひとつの商品」という意識が強いのです。確かに「帯」はそもそも宣伝のためだったり、いらないもののはずですが、「新刊には帯」が業界で慣習となり「本には帯がついているもの」みたいになっているので、私は「帯も本の一部でしょ……!」と思っています。私は自分の本は全部自分でデザインしているので、個人的にはできれば買っていただいた皆さんにも「帯……捨てないで……!」と思っています。

もちろん、読むときに邪魔だったり、つけっぱなしだと曲がったり折れたりするので、外してその本に挟んでおいたりすることはあります(本棚を見る限り、ほとんどの本に帯がついたままですが……)。

なのですが、息子にとっては帯も、カバーも「邪魔」なものなんですよね。いや、そりゃそうですよ。4歳児にカバーなんて、持ってたらよれるし、曲がるし邪魔だということはわかります。なので、そっとカバーにマスキングテープを貼り固定したりしていたのですが、「外して」と頼まれることに……。

本によってはカバー下の表紙は1色刷りなので、本の作り手である母の信条としては「カラーのほうの、カバーのままにしてあげて〜〜〜」と思ってしまうのですが。ああ……モヤモヤ。でも、そこは「この人が快適に本を読むためだから……」と尊重しています。

しかし、カバーも帯も捨てられないので、お母さんのための「子どもの本のカバー入れ」があります。その箱の中に、カバーと帯をせっせとため込んでいます。まあ、いつか読み終わったら友達の子とかにお下がりする可能性もあるので、そういうときにカバーをかけてお下がりできるのは、きっといいことだと……思いつつ、大量のカバーを箱に詰めています。

何が親自身の「こだわり」や「生理的嫌悪感を覚えること」なのかをよく考えて、息子とどう折り合いをつけるかをよくよく考える、という行為は「怒らないで言う」「かわいくお願いする」ということにも繋がると思っています。家族のこだわりを大事にしつつ、自分のこだわりも大事にして、場合によってはいきなり「コラ!」と怒ってもいいってことにしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。