「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第5回のテーマは「タスクを抱え込まない努力」です。
我が家は「ツーオペ育児」を目指していて「育児はお父さんとお母さんの仕事」と心がけているのですが、気が付くとなぜかお母さんのほうに比重がよっている……ということになりがちです。
ご飯を食べさせる、お風呂、寝かしつけなどは比較的「育児」として認識されやすくシェアもできるのですが、「髪の毛が伸びた」「爪が伸びてる」など細かいケアに関しては、ついつい気が付くほう(うちの場合は母親)にタスクが偏ってしまいます。
男性のほうが細かい差違に気が付きにくい、「髪型変えても気が付かない!」などとよく言われますが、育児に関してもそんな気がします。
でも私はそこで「男はどうせ気が付かない」と諦めるのではなく、「自分のほうが気が付く能力が高いんだな」と認識して、そのうえで「やって」と頼む。という選択をしています。
とはいえ、「髪の毛を切る」などはうまいヘタがあるので、我が家では私の仕事。しかし、3歳児が一人でずっとじっとしてくれはしないので、iPadで動画を見せるのはお父さんの仕事。自分でiPadを持たせると髪の毛が落ちてきたり、集中が切れてカットの途中で「もう終わり」とイヤがったりしてしまうので、お父さんがなだめすかしながら気をそらしてくれるのは大事な仕事です。
なので「髪の毛を切る」のはお母さんが気が付いて、お父さんに指示出しをして一緒にやるタスクになっています。
実は昔は、何かを「やって」とパートナーに頼み事をするのがとても苦手でした。頼むくらいなら、自分でやったほうが早いと思っていたタイプでした。しかしそれによって、気が付けば「何もかもが自分の仕事」という状況になってしまいました。
私に一番足りていなくて、なおかつ必要なのは「人にお願いごとをするスキル」だったのです。
これに気が付いてからは、なるべく「頼む練習」をすることにしました。「一日息子の面倒を任せる」といった大きな頼み事の前に「小さな頼み事」をしておかないと、大きな頼み事の「大変さ」が増すからです。
母親の一日ワンオペと、父親の一日ワンオペの「大変さの比重」が違うとしたら、それは日々のタスクをどちらがこなしているかによります。
息子の爪を切るのは髪の毛を切るよりは簡単なのですが、息子が「お母さんがいい」とイヤがったり、老眼で小さい爪がよく見えなかったり……とお父さんのほうが難易度が高め。ということで、まあ実際はだいたい私が切っちゃうんですよね。
なのでせめて……と、最近は息子の熱を測るというタスクを任せることにしています。保育園でプールがあるため、夏は毎朝検温するんですが、「私がやろう」と思うところを、毎日「いや、頼もう」とお父さんにお願いしています。
面白いのは、頼んでいるうちにだんだんお父さんが「熱を測るのはオレの仕事」と思うようになるんです。なので、タスクを相手に渡したいときはストレートに「お願い」するのがいいなと思っています。
確かに「お願いする」って、それはそれで労力を使うことなんですよね。だから「こっちが指示出さなくても動いて欲しい」と思ってしまうところもあるのですが、そうではなくて「頼み事をするのが苦手だから、日々タスクを相手に任せる練習しなきゃ」という気持ちで「小さなお願い」をしていきましょう。それならイラっとしないし、日々の頼み事のハードルが下がっていくのでいいです。
一度タスクを抱え込んで失敗した私は、自分ばっかりタスクを抱え込まないように日々意識して生活しています。
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。