「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第34回のテーマは「得意なことは得意な方がやればいい」です。
パートナーの作るお弁当は、茶色しかなくてもおいしいんですよ。いいじゃないですか。
とは思うんですけど、じゃあ自分が「私が作りました」ってその茶色だけのお弁当を持って行けるかというと、「見栄え……なんとかしないと」って思って頑張っちゃう気がします。
なんなんでしょうか、この我々日本人にすり込まれた「お弁当、見栄えよくあるべし」という恐ろしい呪いは。世界中見渡してみても、こんなに「お弁当の見栄え」に力を入れてる文化の人達、いなくないですか?!
東南アジアとかの屋台のテイクアウトはビニール袋ですよ! アメリカの子どものお昼ご飯は紙袋にサンドイッチですよ! とか言ってみたところで、花見やピクニックなどの「持ち寄り弁当」の見栄えを気にしなくてよくなるわけじゃないのが悲しいところです。
そもそも、「持ち寄りパーティに持って行く手作りの品」というもののハードル自体が高過ぎやしませんか? 私は今までほとんどやったことがありません。手作りするならどこかの素敵なパン屋さんとか、お総菜屋さんとかに行って買って済ませます。
私自身が、自分の作ったものよりプロの作ったものを食べたいのだから、ほかの人にも同じように買って持って行った方が安心です。むかーし、まだ私が初婚の頃にお客さまをお招きする時は、多少頑張ってゴハン作りましたけども……持ち寄りに関してはやる気なし。お金で解決したい。そういう感じでした。
だが! 我がパートナーは果敢にその難題にチャレンジしたんですよ!
その心意気だけで褒めちぎりたい。素晴らしい! 素敵! と思ったんですけど、それ自体なんか「男だから」という高下駄めっちゃ履いてるなとは思いました。女性が「持ち寄り一品料理」を作ったとしても、心意気だけでは褒められないのがまだまだ世の中の雰囲気だと思います……。まあ、だからこそ素敵なお弁当を作ると「女らしい」などと評価されるのだとは思うのですが。
で、実際にパートナーの持ち寄り料理、または花見弁当は全部茶色でも「わー、すごいー自分で作ったんだ!」と褒めちぎられていました。いや、実際おいしいからいいんですけど。
女性が作ってきたものが全部茶色でも、おいしかったら全然問題ないとは思うのですが、どこかでやっぱり男の料理だと見栄えは少々見劣りしても、「無骨」みたいな言葉で女性よりも許されている気はします。
とはいえ、何度もやっているうちにパートナー本人が「もっと素敵な見栄えのお弁当にしたい」と思うようになりました。ほかのみなさんのお重の中身が素敵なので……。
本人的には最初は「まあいっかー」と、「男だから」とか「初心者だから」ということに甘んじてみんなよりも見劣りするお弁当であることを気にしてなかったのですが、だんだんと「もっとなんとかしたい」と思うようになったようです。「料理作る」のが当たり前になってくると見栄えを気にするようになるのは、別に男女関係ない向上心なんですね……。
で、お重を買っていざおかずを詰めるところになって、「やっぱりうまくできない!」と言い出したので「じゃあ私がやろうか~」と「お弁当を詰める」係だけ担当することになりました。一応、私は美術系出身なので……パートナーよりかはバランスよく詰められます。あと、その場にあるものでなんとか取り繕ったり、工夫したりするのが得意なのです。
じゃあ無理してパートナーが頑張らなくても、そこだけ私がやればいいじゃん! ということになりました。冷静に考えれば夫婦で担当家事が分かれていたとしても、苦手なパートはより得意な方がやればいいですよね…。
先日もお友達の家にお呼ばれした時、息子が突然「カップケーキを作って持って行って」というので、慌ててパートナーがカップケーキを焼いたのですが「手作りおやつ」を入れて行くものがない。また無骨にタッパにつっこんでいくか……? となった時に「チョットお待ちなさい!」と、ストックしてあったかわいい空き箱を見繕い、どっかでもらったかわいいペーパーナプキンを敷き、さささっと詰めて「なんとなく、かわいい」感じにすることができました。私がかわいい箱を捨てられない性分で助かった……!
見栄えの部分というのは、料理の最後のおいしいところだと思ってたので、私だけおいしいところを取って悪いんじゃないかな? などと私は思っていたのですが、パートナーにしてみれば「苦手なことをやらなくていいなら、任せたい」という気持ちだったみたいです。
一連の作業の中でも「得意な方に」途中からお任せするのも夫婦、家族ならではの分担なのかもしれません。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。