「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第229回のテーマは「家族の『失敗』に怒らないときと怒るとき」です。
最近気がついたのですが、私が息子やパートナーに「怒る・怒らないポイント」は明確にあります。
連載第199回でも書きましたが、子どもの失敗にはあまり怒りません。子どもが食事中にこぼしても、パートナーは「あーもう! 」と言ってしまうタイプでした。でも「別に子どもだって失敗したくてしてるわけじゃないんだから、怒らなくてもいいのでは……? 」という話をしたら、「そうかも」とパートナーの態度もちょっと変わったことがありました。
大人だって、うっかり失敗することがありますよね。私は「大人がやっても怒らないことは、子どもやがやっても怒らない」ようにしています。例えば、「好き嫌い」。私には、できれば食べたくない食べ物があります。酸っぱいものが苦手で、酢の物が出たらテンションが下がります。あと辛いものは体質的に無理です。なので自分では選んでは絶対食べません。パートナーはカキフライが好きですが、私は苦手。わざわざ私が好きじゃないものをパートナーも出さないので、私は日常で好きじゃないものを食べることはほぼありません。
大人は好き嫌い尊重してもらえるのに、子どもは尊重してもらえないとしたらおかしいですよね。
なので、子どもが好き嫌いをしても、あまりに栄養に偏りがあるとかでなければ気にしません。ただ、食べたことがないのに「嫌だ」というのはダメ。「なんとなく嫌」を認めると経験する機会を失ってしまうので、親の責任として「チャレンジして」と食べてもらうようにしています。それで食べてみて、好きか嫌いか、普通に食べられるかそうでないかを判断してもらいます。「食べたくない」と言っていたのに、食べてみたら「あれ、おいしい」ってことはあります。それでも、食べたことがあってなおかつ「嫌だな」と思うものは食べなくてもOKです。
大人が意図しないうっかりの失敗をしても、私は責めません。そういうことは誰にでもあるからです。ちなみに、パートナーはわりと忘れ物をするタイプ。仕事へ行ったな~と思っていると、結構な頻度で「あれ忘れた……」と帰ってくることが多いです。
私は小学生のときクラスで「忘れ物クイーン」だったことがあるので、自分を全く信用していません。なので旅行の前とかはかなり神経質に「あれ入れたかな、これ入れたかな」と、うなされるレベルで気にしています。
だからといって、パートナーが家族旅行で出発後に「財布を忘れた! 」となっても、別に腹は立ちません。もちろん「えええ! 」とびっくりしたり、不安になったりはしますが、その時点で怒ったり責めたりしても、どうにもならないし……という気持ちのほうが大きくなるタイプなんですよね。
そして、相手を責めるよりも「じゃあどうしたらいいか」のほうが先になります。今回のマンガでも描いた話のときは、本当に「もうすぐ空港につく」というところだったので青ざめました。でもちょっとだけ余裕を持って出てきていて、運転手さんも「大丈夫そうです」と言ってくれたので、すぐに戻ってもらい、かなりギリギリでしたが間に合いました。もちろんタクシー代は余計にかかったのですが、間に合ったほうが大事。解決すれば、特に責める必要もない。という感じです。
じゃあどういうときに怒るかというと、あらかじめ「こうしておいてね」と言ったのに忘れられたり、やってもらえなかったりしたときです。それは「やってくれる」という期待が裏切られるからですね。
息子に対しては「能力的に本当はできること」をやらないときに怒ります。いつもは出来てる帰宅後のランドセルの片付けや、本当は食べられるものを食べない、といった場合。事情を説明されれば聞きますが、そうではないときや、なんとなく……みたいな場合は「やって」「食べて」とはっきり伝えます。
私がパートナーに怒りが湧く時は大体、パートナーが「感情のコントロールがうまくできず、加害的なコミュニケーションをした」時です。それ以外ではたまに「お願いしていたのにやってもらえなかった」ときにも怒ってしまいます。
大体、お願いしたことはやってもらえるのですが、今年息子用にPCを買おうと決めた後、パートナーが買うと言っていたので(買うのはパートナーですが、最終的には割り勘)「じゃあ、物価高騰で値上がりしそうだから誕生日よりも前に買っておいてね」と何度も言ったのに買わないまま時が過ぎ……。「値上がり」のニュースを見たとき、つい「値上がりするから、早く買ってって言ったでしょ! 」と怒ってしまいました。
結論としては、値上がりが発表されただけでその瞬間はまだ前と同じ金額で買えたので、すぐに買うべきPCをその場で決めて買いました。怒らないでも解決できたとは思うんですが、「起こってほしくない」と思っていたことが起こってしまうと、私も感情的になっちゃうんだな、と思いました。
できれば怒らずに生活したいのですが、「怒らない」と「怒れない」もまた別です。場面によってはときに怒りも大切だとは思っています。誰かを傷つける怒りではなく、自分を含めた誰かを守るための怒りは大切です。でもそれ以外はなるべく怒らず生活したいなあ……と思っています。
新刊『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい! 』
(幻冬舎刊/1,100円)
12月7日発売予定。家事分担や育児にまつわる諸問題を話し合って解決してきた著者・水谷さるころ&事実婚パートナーのノダD。しかし子どもが大きくなって、しかもコロナ禍に突入したことで、夫・ノダDの「不機嫌&キレ問題」が再燃焼! 「これは家族だけでは解決できない! 」と決意して家族でカウンセリングに通い、改善していった実録コミックエッセイ。担当カウンセラー・山脇由貴子先生のコラムも収録。くわしくはコチラ
著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』
(幻冬舎/1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。