「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第222回のテーマは「子どもの話を聞くということ」です。
最近の悩み事は「子どもの習い事のモチベーションをどうキープするか」というところが多いです。
習い事、始めははいいけどずっと同じテンションでやってくれるとは限らないですよね。我が家はわりとずっとこんなテンションで、「やりたくないモード」が来たらいつも、「せっかくやっているのだから、続けてほしい」と話し合いをしています。
ゲームを報酬として頑張らせたものの、私が口うるさく言うから嫌だと言われたり(連載218回)、レベルアップしてきて難しくなったからやりたくないと言われたのを説得して続けさせたり(連載206回)……子どものやる気問題が私の課題となりつつあります。
「やりたくない」と言われるたびに、自分が子どものころ親に無理矢理ピアノを続けさせられてピアノが嫌いになってしまったことを思い出します。とりあえず「文句を言わずにやれ! 」という昭和のストロングスタイルはいい結果を残さないというのが私の心情です。
せっかくお金を払って習い事をしているのに、そんな風になるのだけは嫌で、息子の習い事に関してはかなりセンシティブになってしまいがちです。今、息子がやっているのは「英語」「ピアノ」「空手」です。
せっかく「楽しい」とか「やりたい」という気持ちで始めたものなのに、苦手意識を植え付けられたり嫌な思い出になったりするのはもったいないですよね。かといって、難しいとかレベルがあがって簡単じゃなくなったときに、「難しいからやめたい」と言われて「いいよ」とやめさせてしまうのももったいない。
子どもは、「ここまで頑張れば、ここまで上達する」という体験が多くありません。だから、親がある程度その「難しい」というところを乗り越えさせて、成功体験を積ませることもときとして必要だと思っています。小学校低学年くらいではまだ親のサポートが必要だと思います。
ちなみに空手は親がやっていて、一緒に連れて行ってるうちに本人もやるようになりました。成り行きで始めたのと、親がやっているからこそ口出しが多くなるなど、一番「やりたくない」と言い出すことが多い習い事です。なので、毎回毎回じっくり話を聞いては解決するようにしています。
英語はオンライン、ピアノは近所ですが、空手は移動に20分ほどかかります。ちょっとばかり「嫌だなあ」というのは、だいたい「行くのが面倒くさい」くらいのレベルで、行けばころっと楽しそうにやることが多いです。
なので子どもがどれくらい本気で「今日行きたくない」のかを推測して話を聞くようにしています。空手に関しては、「空手頑張るからゲーム買って」という交換条件がすでにあるので、ある程度それを言えば渋々はやります。でも子どもだって納得していなければ、ちゃんと稽古はしません。ちゃんと稽古しない→怒られるを繰り返せば「もう嫌だ! 」となってしまいます。モノで釣ってもモチベーションは続きません。
子どもの「やりたくない」は深堀りしないと本音が出てこないこともあります。「うまくなってほしい」という親の意見には「うまくなってどうなるかわからない」と言われる。確かに、まだどこかで成果を見せることもないので「うまくなってどうするの? 」という気持ちになるかもなあと思いました。でも、じっくり聞いたら「運動会の練習が大変で疲れている」というほうが大きい問題だったようです。
どうしてやる気がでないのか、というのは大人でも実は自覚できないこともあります。それを子どもがしっかり説明できるわけないですよね。だから、大人がじっくり話を聞いてあげる必要がある。
運動会の練習のスケジュールは知っているので、たしかにいつもより体育の時間が長くて大変なのかもと思いました。なので「今回はお休みしてもいいよ」ということにしました。そして翌週はしっかり元気に稽古に参加しました。
ちゃんと「今日やりたくない理由」を聞いて、子どもも納得すれば「一週休ませてもらえた」という安心感を得て、「でもゲームも買ってもらったし、頑張ってやるか」と思ってくれる。モノでモチベーションを上げるのはちょっとしたオプションであって「自分の話を聞いてもらえる」かどうかのほうが大事なんだなと思いました。
これでしばらくはずっとやる気でいてくれるかというと、そういうこともなさそうなんですが……! せっかくやっている習い事。親子の信頼関係を深めつつ、息子のよい経験になるように日々試行錯誤しています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。