「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第214回のテーマは「義実家帰省も割り勘」です。

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夏休みといえば、帰省。コロナ禍ではありますが今年は義実家に帰省する予定です。私は義実家に帰省するのは全然嫌じゃなくて、むしろ楽しい、というのは何回かこの連載でもお伝えしていて、友人には「羨ましい! 」とよく言われています。ちなみに初婚のときも、義実家は居心地がよかったので、私は「義実家運」がいいのかもしれません。ありがたいことです。

再婚するときに帰省について話し合いをしました。「帰省、またはお互いの家族行事も基本的には割り勘」「ただし同伴したくないならしなくていい」「どうしても同伴してほしい場合はしてほしい人がお金を出す」というルールにしました。「行きたくない」だけならまだしも、「行きたくないのにさらにお金を払う」なんて、禍根しか残らないですよね。

とはいえ「片方がお金を払って同伴してもらう」という選択肢も実は揉めやすい。「行きたくない」場合、お金を払ってもらうと実は「我慢して付き合う」という負担がかかります。それで結局不満気になり、お金を払ったほうは「なんだよ金払ってるのにその態度」となって、結局喧嘩になる。だから本当は「行きたくないなら行かない」が最適解なんじゃないかなって思っていました。

なので、最初は「私だけ後から行って、先に帰るとか? 」などいろいろ考えていたのですが、蓋を開けてみたら「義実家たのし~」となって「行きたいから自分の分は自分で払う」ということになりました。

とはいえ、それぞれの実家の距離が違います。人から「さるころさんちは割り勘でフェアと言いつつ、さるころさんの負担のほうが大きくないですか? 」と言われることがあります。

たしかに、私の実家は近県で電車に乗って1時間。実家に帰ったとしても泊まりはなく、日帰りです。それを「割り勘」したところで、大した金額にはなりません。パートナーの実家に帰るには飛行機、宿泊、場合によってはレンタカーなどもかかります。「帰省」ということだけ考えればフェアではないかもしれないのですが、「家族旅行」だと思えば、参加するのに自分でお金を払うのはありですし、パートナーの親戚に私が会いたいから行っているので、私的には「遠い場所に行くからアンフェア」だとは思っていません。

ですが、問題が全くないかといえばそうではありません。私が義実家に行くのは問題がないのですが、反対になると揉めがちだったからです。「お互いの実家の距離でかかるお金が違う」ことは問題にならなくても、全然別の「心理的な負担」のために問題が起こりがちでした。

パートナーはお酒が好きなのですが、私の家族は両親をはじめあまりお酒が飲めません。私自身もお酒は弱いので遺伝だと思うのですが、私の実家のイベントではあまりお酒を飲まないのです。お酒が大好きなパートナーはそれが「行ってもあまり楽しくない」という理由でした。

もちろん、我が家的には「私達は飲まないけど、お好きな人はどうぞ」という感じなので、パートナーだけお酒を飲むということもありました。でも、お酒を飲む人は「みんなも飲んでいる場」が好きなのであって、「自分以外には誰も酔っ払ってない場」で飲むのは楽しくないんですよね……。

人見知りしがちなパートナーが「一緒にお酒を飲んで仲良くなる」ということができないのはハードルが高いようでした。それはそれとして、お酒自体が好きなので、気にせず飲んだこともありましたが、誰一人お酒をのんで緩んでいない場で一人だけ飲んで緩むわけに行かず、結局「飲んでも、飲まなくても」心理的負担が多かったようです。

そういった経緯があって、パートナーが私の実家のイベントに積極的でなかったため、一度私がパートナーと子どもの分の飲食代を全部払って家族の食事会に参加したことがあります。家族揃って参加したかった私は、食事代を全部持つことにしたのです。しかし決して安くはない金額だったにもかかわらず、パートナーは結局「お酒飲みたいな……」とどこか不満げ。私は「私が食事代を払っているのに……? 」と思っただけでなく、「私はパートナーの実家には積極的に行っているのに、その態度はなくない? 」と思ってしまいました。

その後喧嘩になり、パートナーは気遣いが足りなかったことを謝ってくれたのですが、予め「揉めないように」と考えていても、うまくはいかないなあと思いました。お金と気持ち、どっちもフェアというのはそうしようと思っても難しいものですね……。

そんな感じで結婚初期は揉めがちでしたが、最近は揉めなくなりました。夫婦の話し合いが積み重なったのもありますが、パートナーも私の実家で前ほど緊張しなくなったようです。結婚生活が10年経ってやっと、というところではありますが、時が解決してくれることもあるんですね。

心理的な負担という気持ちのフェアさとお金については、今後もお互いが不満のないようにいいバランスを探していきたいなと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。