「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第211回のテーマは「子どもに秘密を作らない」です。
世の中には過去のことは封印するタイプの人と、そうでない人がいると思いますが、私は完全に後者です。
私とパートナーは共に離婚経験があり、パートナーは前妻との間に2人の子どもがいます。とこのように世間に公表しているくらいですから、もちろん子どもを含め誰にも隠していません。
今から10年以上前、再婚を前提としてパートナーとお付き合いを始めるにあたり、最初にパートナーに言ったのは「子どもに内緒にしないでほしい」ということでした。当時中学生と小学生だった子どもたちに、離婚した父親が「再婚を前提にお付き合いしている人がいる」というのは、世の中では「子どもにわざわざ言わなくていいこと」だと思う人もいるかもしれません。
まず子どもたちに報告をして、その後実際に会いました。たまに一緒に面会をするなど、「父親とその再婚相手」としての我々のことを開示するように意識していました。当時小学生だったパートナーの娘は、最初に聞いたときは、離婚したということはわかっていたものの「本当にもうお父さんは家に帰ってこないんだ」と思ってショックを受けたそうです。しかし、面会をして話をしているうちに「お父さんは、再婚しても自分たちのお父さんのままなのだ」ということがわかってもらえたようです。私達が子どもを作ろうと思ってる、という話もあまり反対されず、妊娠したら報告しました。そして2人とも出産後は「弟」にすぐに会いに来てくれました。
それから10年以上経ちますが我が家と前妻の子どもたちとは、結構な頻度でのやり取りがあり、離婚家庭の子どもと父親(とその家族)としてはかなり円満なコミュニケーションが取れているほうだと思います。
もちろんこれは、子どもたちとの相性が良かったなどの「運」もあると思っています。でも、私は「仲良くしよう」と思っていたわけではなくて、「情報を開示したうえで、判断をするのは子どもたち本人である」と思っていました。その上で「仲良くする気にはなれない」というのであれば、無理して仲良くするのはお互いストレスしか生まないし、距離感を持って付き合おうと思っていました。
私は自分が子どもの立場だったら、「嫌か嫌じゃないか」や相手のことを「好きか嫌いか」を自分で決めさせてほしいと思っています。なので、何かの判断を「こうするべき」「こうしたほうがいい」とどんな言い方でも大人の都合で強制したくありませんでしたし、「もしこうなったら困るから事実を伏せよう」とか、彼らの知る機会を失わせることもしたくありませんでした。
そもそも、人の好き嫌いや気が合うかどうかは、血がつながっていたとしても、必ずしもポジティブな関係になるとは限りません。どんな立場であったとしても、相手が「信頼できる」と思うことができれば良好に付き合っていけると思っています。
そんなわけで「相手が子どもでも隠し事はしない」私なので、もちろん自分の子にも自身の「離婚」は伝えてあります。離婚再婚もオープンな家庭をやっていて思ったのは、「離婚」がタブーなのではなくて、家の中に「タブーな話題」が存在することが家族にとってネガティブな影響があるのではないか、ということです。
母親に父親の話をすると嫌がられるとか、親戚に離婚した親の話をすると悪しざまに言われるとか、「この話はしないほうがいいのだな」と思うような話題があるのは子どもにとってはよい影響がないと思います。
私は姉に「娘が赤ちゃんの時の写真に元夫さんが写っていたので、娘にさるころの元夫だと説明したけどいいんだよね? 」と言われたのですが、そこで事実を隠すというのは「タブー」を作ることです。タブーを作らないほうが、ストレスがない風通しのよい人間関係が作れると思っていますし、実際に私は「秘密がないほうが気楽だな」と思っています。
もちろん、子どもに自分自身の過去の話を全てするわけではありません。例えば親の恋愛遍歴を知りたい子どもがいるとも思わないですし、当然「言わない」ことはたくさんあります。しかし、自分の死後の手続きをするのは子どもである可能性が高いわけです。婚姻歴というのは、「死後に事実が判明する」可能性が高い事例なんですよね。
子どもに過去の婚姻歴を言わず、死んでから戸籍を見て「お母さん(またはお父さん)って前にも結婚してたの!? 」となるのは子どもにも迷惑になりかねないので、そこは最初から隠さないほうが心理的に「安全」だと思っています。
「もしその事実を伝えて、小さい子どもがショックを受けたらどうするの? 」と言う人もいます。実際に、パートナーが娘に「再婚したい人がいる」という事実を伝えたときにはショックを受けたわけです。でも、私は大人として「ショックを受けた、という事実と向かい合う」ほうがいいと思うのです。そこを避けるということは「ショックを受ける」という前提をただ先延ばしにするだけで、決して解決するわけではありません。そして、それが親が死んでからわかろうものなら、「親が子どものショックを受けるという事実から逃げ切った」ということになります。それは親として子に不誠実だとも思うのです。
何が「誠実な態度」であるかどうかは、人によって違うと思います。それに口にすることもできないくらい心に傷が残る離婚だった場合、「子どもに」というよりは「誰にも言いたくない」ということもあると思います。でもそうではない場合に、「大人にとって都合が悪いことは子どもは知らなくていい」という態度は取りたくないなと思うのです。
ちなみに、子どもに隠し事はしませんが「なんでも話す」わけではありません。例えば「決定していない事項」は言わないようにしています。「もし○○だったら」「○○になるかもしれない」は子どもに大人の不安の片棒を担がせるだけです。子どもと大人の力のバランスを考えて、いつも子どもが安心して過ごせる環境を作りたいと思っています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。