「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第21回のテーマは「頑張る方向を変えてみただけ」です。

  • 家事シェアへの罪悪感の正体

最近、「家事の手抜きに罪悪感がある」という記事が話題になっていました。夫婦で家事がシェアできると、ワンオペに比べて格段に生活が楽なわけですが、私は今のところ「罪悪感」はありません。

私は本当に、離婚したときに「良き妻」という理想のイメージを「結婚の素敵なフワフワとしたイメージ」と一緒に捨てちゃった感じがあります。

私は初婚で「良き妻であれ」という圧に違和感を覚えまくったこと、結婚しただけでそれまでやっていた仕事を「主婦の趣味」扱いにされたことなど、「なんじゃそりゃー」ってことがたくさんあって、結婚生活にメリットを感じられなかったんですよね。

仕事は勝手に評価を下げられて、そして家事は1人で抱え込む。どうしてこうなった? といえば、自分自身が「そういう風になる結婚」をしたからです……。

一番の原因は、元夫自身は「別に結婚したくなかった」ってことだと思います。でも私はしたかった。

だから、相手に負担をかけず「共働きだから大丈夫」と言い、そして相手にメリットを感じさせるために「家事はやるから大丈夫」と言ってしまった。どうしてそこまで結婚したかったの? と今なら思います。でも当時は、結婚しないで何も将来が決められないのが怖かったんですよね……。

で、実際にやってみて「いや~これが一生続くとか、辛すぎるな」と思って離婚してしまった。だから、私にはもう「良き妻」になりたい、という願望もプレッシャーもなくなってしまいました。

でもそれって、すごく荒療治だったと思います。結婚してみて、離婚して挫折を味わってからじゃないと、解けない呪いって相当強い……と。「人生、ちゃんとするにはかくあるべし」の呪いがそう簡単に解けないというのもわかります。

でも、振り返って考えてみると、私は「結婚したい」と思ったときも頑張っていたし、結婚生活の間も頑張っていた。離婚してから、「どうしてこうなったんだっけ? 」と自分の人生や価値観を反省しまくったときも頑張っていたし、再婚するとき「どういう結婚生活にするか」を話し合ったり考えたりしたときも頑張っていた。

そして、今も「円満に本当に自分達が快適な生活をするにはどうしたらいいか」ということについて、頑張ってやってるよなあと思うのです。

だから、家事をパートナーとシェアして自分自身が楽になっても罪悪感はないし、夫に子どもを預けて1人で出かけても罪悪感はないのだと思います。

そして、家事を楽にすることを「手抜きしてる」と思ってしまうなら「家事の効率化を頑張ってる」と、考えたらいいのでは? と思いました。

私は、人はメリットがなければ苦労はできないと思っていて、どうして「何もかも抱え込む生活」をしていたのか、ということと向かい合ってみました。

そしたら、「夫の世話をしていることで、自分に価値があると思いたかったんだな」ということに気が付いたのです。自分よりも家事能力の低い夫といれば、自分が責められることも、自分のダメなところと向き合うこともないし、他者から「頑張ってるね」と評価してもらえる。私は結婚して「安心」したかった。だから、夫の世話をし続けることで「自己評価と他者評価」という点では「安心」を手に入れることができたんですよね。

今は、パートナーとの力関係はバランスが取れていて、私が家事にダメ出しをされることもあります。自分のだらしないところとか、うかつなところと向かい合わないといけない。

でも、どちらかが圧倒的に何かを背負っていて、どちらかはそれによって何も言えない、みたいな関係よりもずっと楽だなあと思うようになりました。だって、以前は私が家事を全部背負っていて、私が失敗したら誰もサポートもリカバーもできなかったのに、今はパートナーがしてくれるから。

何もかも背負うことで得ていた「安心」よりも、それを手放したことで、もっと別な「安心」を手に入れることができたのだと思います。

どうせ頑張るなら、頑張る方向を変えてみるとまた違った世界が現れるのかもしれない。そんなことを思いました。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。