「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第206回のテーマは「習い事を頑張ってやらせるべきか」です。

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息子は3歳のころから英語を習っています。これは以前も書いたように(連載138回)、早期教育とか英語が話せないと……という親の気持ちからではなくて、本人が「これは英語でなんていうの? 」と聞きまくるブームがあったからです。

本人がノリノリで続けること数年。成長とともに「なんで英語やってるんだっけ」みたいになってきて、最近ではゲームのほうが上。騙し騙しやってきましたが、ここ最近ついに「今日は英語か……嫌だな」「英語はつまんない」と言うようになってしまいました。

連載105回でも書きましたが、私は幼少期にピアノを習っていました。「やりたくない」と言ってもやめさせてもらえず、毎回めちゃくちゃ叱られて無理やり練習させられるうちに、ピアノの前に座ると肩が痛くなるようになってしまいました。

その時に母が言っていたのは、「もともとはあなたがピアノ習いたいって言ったんでしょ」でした。そしてそれを言われるたびに小学生の私は「幼稚園のときに言った言葉なんて責任取れないよ……! 」と思っていました。

そして息子が英語を続けて4年。とうとう「英語つまんない」と……! そしてついつい私は思ってしまったのです。「あなたがやりたいって言ったんじゃない」と。でもそれを言われても、「3歳のときのことなんか知らないよ」って思うのもわかっています。なので言えない……!

思わず「ここまでやってきたんだし、結構できるほうだと思うよ? もったいないから続けたら~? 」という説得をしてしまいました。子どもの自主性を尊重する親が理想だったのに……。

とはいえ、前は何が楽しくて今は何が楽しくないのか? ということも聞いてみました。すると「前は英語でいろいろと楽しく遊んだりしたけど、今はお勉強すぎて楽しくない」とのこと。たしかに、未就学児童の頃は「英語に親しむ」のがメインで、文法とかはあまりやっていませんでした。しかし、今はもっぱら文法ばかりです。比較や過去形など私が中学生の頃にやっていたような文法をやっています。

「つまらない」「興味ない」となると、途端にどんどんとできなくなっていくというのを目の当たりにしました。レッスン中に「絶対そんなの知ってるはず」という簡単な単語が全然出てこない。あんなに英語が好きだったときはたくさんの単語を覚えて楽しそうだったのに、今は「川ってなんだっけ? 」という有様。3~4歳のときに覚えていたたくさんの単語を、どんどん忘れてしまっているのです。

いや~本当に子どもにとって「楽しい」「好き」というのが、どんなに力になるのか。ということを実感しました。

興味を失い「楽しくないのにやってる」となった途端に、坂道を転げ落ちるように忘れていってしまう。「早期教育は意味がない」ということを言う人もいますが、早くからやるよりも、本人が目的を持って「楽しく続ける」ことが大事だなと思いました。

しかし、ここでやめることを選ぶのではなくて「どうやったら楽しくできるか」ということを考えました。

英語の先生はコロナ禍になって2年半、ずっとオンラインレッスンです。それも「楽しくない」理由の一つですが、かといってまだ来てもらうというのも難しい。しかも、先生が諸事情で変わっていて、今は4人目の先生です。今の先生とはオンラインでしか会ったことがありません。

前の先生は何が楽しかったのか聞いてみると、「ゲームをしたり、クイズをしたり、絵本を読んでくれたのが楽しかった」と言うので、今の先生にも「文法もやりつつ、最後にオマケとしてクイズやゲーム、絵本の時間を作ってくれませんか? 」とお願いしました。

すると、先生は他のレッスンでは「もっと文法をきちんと教えてほしい」というリクエストが多いらしく、頑張って文法をやっていたとのこと。我が家は「英語が楽しい」という状態を作ってもらったほうがいいですとお願いしました。その後のレッスンは「楽しいこと」が増えたらしくて、「英語、また楽しくなってきた」と言われました。よ、よかった! 

私は「練習しないと怒られる」「やめたいのにやめさせてもらえなかった」という体験から、ピアノに対して苦手意識しか残りませんでした。その体験が逆に今は生きていると思います。習い事の「やる気」を子ども任せにせず、かといって強制もせず、ほどよくサポートするというのはかなりの労力がかかりますが、自分が体験した習い事の思い出の二の舞にならないようにしたいと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。