「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。記念すべき第200回のテーマは「我が家の話し合いについてのルール」です。
この連載も200回を迎えました! ありがとうございます。200回も毎回、ネタがよくあるなあ……と自分でも思っているのですが、日々「あ、これは書かなきゃ」と思うメモが必ず手元にあります。
そう、こんなにも夫婦・家族のコミュニケーションに尽力しているにも関わらず、相変わらずしょっちゅう小競り合いをしています。
今回は200回記念なので、マイナビニュースの読者の皆様が夫婦関係において「どんなことに悩んでいるか」というアンケートを見せていただきました。そして多かったのが、「夫婦の話し合いがうまくできない」というお悩みでした。「相手が話を聞いてくれない」「自分の心の準備がなかなかできない」など、いろいろなお悩みがありました。
なので、今回は我がパートナー、ノダDに「話し合いをするときにしてほしいこと」を聞いてみました。それを元に「我が家の話し合い」について、過去の連載200回の中からピックアップしつつまとめてみました。
まず、ノダDの希望は「何を求めているのか先に言ってほしい」ということ。「話があるんだけど」とか「聞いて欲しいんだけど」と声をかけたときに、「どこにこの話の結論が来るのか」「そして自分にどうしてほしいのか」がわからないと、行き先を知らない車に乗せられたような気持ちになってノダDは不安になってしまい、イライラしだすのです……!
これは連載90回「ネガティブな話をするときのコツ」で書きました。パートナーは最初「女って共感が好きだよね」とか「女の話って結論がよくわからないよね」などと言っていたのですが、実は言ってる本人もすごくやってるんですよ……!
そもそも、私は人の話を聞く時に「この話の目的は何かな? 共感かな? 解決かな? 」などと、すごく探りながら人の話を聞いてしまいます。なのでパートナーが「自分がどういう結論を求めているか」を開示しなくても、こっちが「最適な答えを出してあげよう」と思って行動してしまう。だから自分もやっていることに気が付かず、「自分は男だから理論的に話している」と思いこんでしまう。こっちの労力に救われていることって、相手は自覚することができなかったりするんですよね。
それはそれで腹立たしいのですが、とはいえ「こちらは気を使って相手の希望を探っているのだから、同じくらいパートナーに気を使って欲しい! 」というのは我が家ではしないようにしています。
その理由は連載19回「「どうしてわかってくれないの? 」の前に」で書きました。子どもの勉強において、「わかるまで自分で考えろ」というやり方は、「苦手意識を植え付けて、勉強嫌いにしてしまう」という話があります。それを読んで「夫婦の話し合いも同じだ! 」と思ったのです。
「自分と同じくらい気を使ってほしい」というのが答えだとすると、その正確な答えは自分の中にしかないので、どこまでやったら正解なのかは絶対相手にはわかりません。なのにそれを「自分で考えろ」と突き放してしまうと、苦手意識を植え付けて、話し合うことを嫌いにしてしまうと思ったわけです。なので、なるべく自分の正解は相手に開示する。そして相手がそれを理解してやってくれたら感謝する。つまり、勉強でいうところの「花丸をつける」。そうすればどんどん理解が進む。と考えています。
というわけで、我が家は二人共「話の結論」「何を求めているか」を先に開示するようにしています。これを心がけると、不幸な行き違いが減るのでおすすめです。
ノダDの話し合いの希望、2つ目は「弱いフリをして話さないでほしい」というもの……。
これは連載40回「ケンカの仕方も夫婦それぞれ」でも似たような話を書きました。パートナーに対して「怒りではないコミュニケーション」をすると、大体ロクな結果にならないのです。こちらとしては、怒るのは疲れるしイヤなので、「こういうことが悲しかった」みたいなことを言うと、なぜかイヤな感じで返されてしまい、全然話を聞いてもらえません。どうも、パートナーにとっては「本当は強いくせに弱いフリをしてる」と感じるらしいのです。ええ?! なにそれ……! という感じです。
私は怒りたくないし、パートナーにも怒られたくありません。なので、できるだけ問題が起こらないように回避してしまいます。前にイヤだと言われたこと、文句を言われたことをなるべく「そうならないように」行動しています。なのに、どこまでいっても結局文句を言われてしまうんですよね……。それで「どうやったら文句言われなくて済むの? 」と聞くと、同じように「弱いフリして話されるとムカつく」と。
パートナーいわく、私が「怒られたくない」と思って行動することが、そもそも間違っているらしいのです。パートナーとしては「文句を言われないようにしよう」と勝手に先回りしたり気を使われたりするくらいなら、自分が文句を言った瞬間に「うるせえ! 文句言うな! 」と言われるくらいがいい……と言うのです。
たしかに、私がいくらがんばってもパートナーに文句を言われたり、イヤな感じの態度を取られたりした場合、最終的に私は「はあ? うるせえ! 」とはなります。最終的にそうなるなら、ムダに気を回すのをやめろ……とのこと。まあ、それは一理あるとは思うのですが、この話し合いを聞いていた息子が「いや、ボクはお父さんはそんなことを言ったの忘れて『なんでそんな態度なんだよ! 』って怒り始めると思うよ」と冷静に指摘していました。7歳児に指摘されるお父さん……。私もそう思います! だから私はトラブルを避けようと「パートナーが文句を言いそうなこと」を必死に避けようとしてしまうんですよね。なので、このパートナーの希望通りできるかは、今のところわかりません……!
連載131回「『かわいい妻』はパートナーが作る」では、「かわいいの割合が減った」と言われたけど、その原因はパートナーだ、という話を書きました。やっぱりパートナーは私に「強いんだから、強くいてほしい」と思っているようです。パートナーの希望に添っているとどんどん山賊の頭領みたいな立ち振る舞いになってしまいます……。
あと、夫婦の話し合いはだいたい私がパートナーの仕事部屋に行って行うことが多いのですが、連載41回「『ドアの開け方』ひとつも大事」で書いたように「バーン」ってドアを開けないで。と言われています。怖いそうです。そうかなあと思っていたのですが……連載14回「愚痴って終わりにしてない? 」で思いっきり「バーン」と開けて、パートナーが「びくっ」としているところが描いてありました……。今はちゃんとノックして、なるべく優しくドアを開けるようにしてます。
話し合いがうまくできないなら、まず「どうやったらうまく話し合いができるか」から話し合うしかないんだと思っています。我が家の場合、両方とも離婚経験者なので「問題をできる限り話し合いで解決したい」というモチベーションが高いというのはあります。話し合いができず、別離に至る悲しみと苦しさをもうイヤというほど体験しているのです。なので今はお互い頑張れるのだと思います。
それともう一つ、結婚前から私が「先輩」でパートナーが「後輩」の状態で、空手を始めたのも影響しています。空手のようにフィジカルで練習するものって、上達が目に見えるんですよね。そして「最初はうまくできなくても、練習すればうまくなる」ということが実感としてわかる。なので、夫婦の共通認識として「どんなにうまくできないことでも、練習を続けていけばできるようになる」と思えるのです。コミュニケーションも失敗しても「次こそうまくやりたい」と、諦めずに練習を積むことができるのだと思います。
同じように、「話し合い」は才能や性格だけではなくて、技術と経験が必要なんだと思います。「他者は思い通りにならないのが当たり前」なので、相手と自分の間をいかに円滑に埋めていくかをテーマに、これからも色々と試行錯誤したいと思います。こちらの連載も引き続きよろしくお願いします!
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水谷さるころのパートナー・ノダDこと野田真外が、女子栄養大学名誉教授・松本仲子氏に「本当はやらなくていいこと」を省いて美味しい料理を作るコツを教えてもらうレシピ本です。イラストとマンガは水谷さるころが担当。1月13日発売。くわしくはコチラ
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バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。