「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第20回のテーマは「夫婦関係も学習の積み重ね」です。

  • やってほしいことをやってもらうには?

今回の話は、前回の続きです。

子どもを勉強嫌いにさせないようにするには、「わからない問題を延々と考えさせずに、答えを見せて解き方を理解して練習しよう」というもの。

「できない、わからない」と思い続けると、「自分は勉強ができない」という苦手意識が育ち、勉強が嫌いになってしまう。そうならないように、さっさと答えを見て練習したほうがいい。という話を、私が育児関係の記事で読んだときに「これは夫婦のコミュニケーションでも同じでは? 」と思ったのです。

そして、既婚の友人に「夫に花を買ってもらいたいけど、夫はそういうことはしてくれない」という話をされたときに、「自分で『花を贈るという行動』を教えるしかないのでは」という話をしてみました。

なぜか「女性に花を贈る」というのは、モテ男ができる上級テクみたいに思われていて、男性側からすると「オレはそういうキャラじゃないし」とか、それをやる・やらないの間に大きな自意識が立ちはだかることのようです。男性は花を贈られる機会も少ないでしょうし、自分がやってもらって嬉しいというイメージも少ないので「花なんかもらって、何が嬉しいの? 」くらいのことを言いかねません。

でもそういう自意識とか合理性とか、「女は花を贈られると喜ぶ」テクニック的なものも全部一回取っ払って、「自分のパートナーは、花をもらうと嬉しいかどうか」のシンプルな答えと向き合ってもらうのがいいのではないでしょうか。「女は花でもあげときゃ喜ぶんだよ」みたいなのも、雑です。花に魅力を感じない女性だっているはず。

そうではなくて、目の前にいる、自分の大事な相手が何をしたら喜ぶのかという問題は、そんなに難しいことではないと思います。

なので、「花を贈ってくれたら嬉しいのに」と思うなら、その「正解」をちゃんと伝えて、そして伝えられたほうはシンプルに受けとめることができたら、お互い夫婦としての大事な共有ごとが一つ増えると思うのです。

うちの場合、夫にはビールをあげると喜ばれます。私は下戸でお酒を飲まず、ビールの味もわからないのですが、夫は「ビールならなんでもおいしい」ということなので、「最近なんだか仕事が大変そうだな」とか、「この前ちょっと悲しいことがあって、落ち込んでたな」とか、「子どもの面倒見てもらって、私だけのお出かけをさせてもらったから」とかそういう理由で、ビールを買って帰ることもあります。

「女性は相手に気遣いができるのに、男性はできない人が多い」というのもわかります。うちの場合もそうでした。私は「そういう気遣い、私にもしてほしい」と頼んだ時は、「家族なのに、そこまで気を遣わなきゃいけないの?」とも言われました。(8話参照)

私は初婚で離婚したとき、元夫が「これができない」「こういうことはできるタイプじゃない」ということがある度に、「私がそういう人と結婚したのだから、しかたない」と受け入れていました。でも、そういうことがどんどん増えていくと「私には、私がしてほしいと思うことを、誰かにしてもらえる人生とはこの先ずっと無縁なの?! 」という絶望ばかり増えていきました。希望に満ちてしたはずの結婚が、絶望しかない生活に感じるようになってしまったのです。

とはいえ、再婚したからって「なんでもできる完璧な夫」と結婚したわけではありません。でも、今のパートナーは、私の話を聞いてくれます。なので、私は「私が喜ぶ正解」をちゃんと伝えています。

抵抗されることもあるけれど、「それをするとこんな良いことがあるよ」と納得させて、そしてやってもらい、「やって良かったこと(私が喜ぶとか)」を実感してもらって、またやってくれるようになる……というところまで、できるようになりました。

何も言わずに、嬉しいことや喜ぶことを相手がやってくれるのは理想だけど、黙っていてもそうならないのであれば、「自分の喜ばせ方」を一番知っていて欲しい人には伝えていくしかないのだと思うのです。

ちなみに我が家では「お母さんは花を贈ると喜ぶ」ということを、父親と一緒に花を買いに行った息子は学習したようなので、「よしよし……! 息子は花を贈れる男に近づいた……! 」と思いました。フフフ。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。