「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第198回のテーマは「イライラしないために無理しない練習」です。
前回、イライラを自己開示できるようになったパートナーの話を書きました。
自覚して自己開示ができるというところまで来たパートナーなんですが、今回はその先の話です。自覚して自己開示ができた後にすること、それは「そうならないようにする」ということです。そもそも問題が起こらないようにすることができれば、問題は完全に解決したことになります。
そのために、疲れているのに無理して食事を作らないようにするにはどうするべきかを話し合いました。私も息子もあまり食事に執着がありません。しかしタイプが違っていて、私は基本的に「なんでもいい」ので出てきたものは食べます(辛いものなど、特定の苦手なものはありますが)。しかし、息子は「これがいい」という特定のものしか食べず、そうでないなら「食べなくていい」というタイプ。
なので、パートナーは主に「息子対策」を考えて食事を作っています。なるべく思いつめないように、「食育より発育」をテーマに、息子がニコニコ食べられるものを選ぶようにしています。それでも栄養バランスを考えて食事を作るのは、結構至難の業です。
パートナーは「毎日献立を考えると、脳みそのリソースを使いすぎる」ということで、週に一度、まとめて宅配サービスに食材をオーダーしています。その時点で大体の一週間のメニューが決まっているのです。そうすれば、毎日「今日はどうしよう」と悩むことがないし、買い物も毎日しなくてすみます。
しかし、この「すでに決まっているメニュー」にもデメリットがあります。それは、予定が狂うと冷蔵庫に食材が残ってしまうこと。なので、パートナーは自分が決めたシフトをこなそうとしてしまうのです。これが、疲れていても無理に夕飯を作ってしまう理由になっています。
私は炊事担当ではないですが、料理ができないわけではないので、「疲れた日は代わるよ」と提案するのですが、キッチンや冷蔵庫の中身の管理にいろいろとこだわりがあるパートナーは、「それは最後の手段」となかなか明け渡してくれません。私としては、代わりに食事を作る手間よりも、無理してイライラされたくない気持ちが大きいのですが、タスクを変わったところで別のストレスがあるなら解決になりません。
彼にとっては、自分が思っているのと違う状態が目の前で展開されるのも、ストレス源なんですよね。もちろん、パートナーがいない日は私が食事の用意をしていますが、自分が家にいる限りは「自分でやりたい」という気持ちが強いです。なので「さるころに代わってもらう」という選択肢はほぼありません。
それによってパートナーは「ちょっと疲れてるけど、頑張れば予定通りやれる……! 」と思ったものの、最終的に疲れすぎてご飯の時間にはイライラモードということが、我が家ではわりと起こりがちです。それを避けるために、事前に「この日は仕事がギリギリになりそうだから」と、自分でメニューを考えて備えることにしてもらいました。
そして仕事に行く前にご飯、お味噌汁、できたら副菜も仕込んでおいて「帰りにちょっとでも疲れていたらお惣菜を買う」と決めたとのこと。帰ってきて疲れていたら、私が「指定どおりの品を配膳する」ことにすれば、疲れないしイライラして家族にストレスを感じさせることもないし、みんなハッピーです。
ですが、実際には配膳すら私に回ってくることはありません。なぜなら、そこまでやればイライラするほどのタスクはないからです。だったら自分でやろうと、パートナーが夕飯の準備をします。こういった「こだわり」は、家事タスクを分担するハードルになりがちです。しかし、分担したり任せたりするのがストレスになるなら、それを踏まえた上で対策をするしかないなあと思います。
ちなみに私も、自分の担当家事についてはこだわりがあるタイプです。なので、パートナーの気持ちはわかります。でもそのこだわりを一旦横に置いて、「自分の方法とは違うけどまあいいか」と思う練習もしています。
たとえば洗濯物。私が担当ですが、週末に家族で出かける前に「あとこれだけやりたい」というタスクがあったりします。以前ならパートナーが「時間がないなら俺もやるよ」と言って手伝ってくれたりしても、つい「全部やるから! 」と言ってしまったのですが、「こだわりを一旦横に置く」ことを意識してからは、素直に手伝ってもらえるようになりました。夫婦でやっていると、息子も「ボクも手伝う」などと言って参加してくれることもあります。こだわりを横に置くと、分担しやすくなるなあと実感しました。
こだわりを貫くにしても横に置いておくにしても、とにかく「ストレスなく、家族がニコニコできる」ことが我が家では優先事項です。パートナーと私のスタイルが違っていても、最終的にお互いがストレスなく過ごせるようにしていきたいと思っています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。