「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第184回のテーマは「汝、常に相手の求めに応じよ」です。

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パートナーは家族を想っているし、実際に色々してくれるのですが、なぜかたまに「しょうがないなあ」という、渋々とした態度をとりがちです。自分のやりたいことがあったり、別のことに気を取られたりしているときはそういう態度になりがちです。

せっかく何かしてくれても、これがあると途端に「やってくれてありがたい」という気持ちがガクンと下がるんですよね……。私は「かわいくお願いしてほしい」と常に息子に頼んでいます。「やってくれて当たり前」みたいな態度はダメ。ちゃんとお願いしてほしい。これはパートナーにも頼んでいるのですが、この「かわいくお願いしてほしい」「きちんとお願いしてほしい」は、同時に頼まれたほうも「きちんとお願い」されたら渋らずにやることがセットなんですよね。そうじゃないと、お願いするほうからの信頼が損なわれるからです。

私は「やってやってるんだから、感謝は当たり前。やってやる方はどんな態度でもいい」というアプローチをされた場合、「じゃあやらなくていいです」となってしまいます。「きちんとお願いする」のは何のためかといえば、「真心と誠意の循環」のためです。どちらかの態度に誠意がないとこの循環が起こらなくなってしまう。

循環がないと何が起こるかというと、「信頼関係が損なわれる」のです。お願いしたときに「いいよ」とスムーズに受け取らない人には、お願いしたくなくなります。わが家では息子がなんでもかんでも「お母さんに頼む」というバランスの悪さが発生しがちなのですが、これはパートナーの「お願いの受け取り下手」に原因があると思っています。

「気軽にお願いする」というのは「この人は頼んだらちゃんとやってくれる」という信頼があるからです。信頼というのは安心感ですよね。だから、結局息子から何かあったときの報告というのも「信頼関係があって、安心感がある」相手に向きます。

なので、信頼関係を構築したいなら、相手からの「お願い」を渋らずに、スムーズに「いいよ」とやるというのは、とても重要なことだと思うのです。

私がここがどうしても気になるのは、私の実父が「しょがねえなあ」と言いながらお願いごとをするタイプの人だった……というのもあります。父はその世代にしてはかなりケアのできる穏やかな人なのですが、私は何か頼んだときに「しょうがねえなあ」という感じの態度を取られるのがすごくイヤだったのです。

パートナーにも同じように、「しょうがないな」という態度を取られることがイヤです。私は「人に何かしてあげる喜び」というものがあると思うんですよね。少なくとも、私は「人に何かをする」のが好きです。かといって、何の縁もない人に「何かする」ことはあまりありません。なので、それは親しさや信頼関係の証でもあると思うのです。

「渋る」という態度は、突き詰めれば相手に「あなたに労力を割くことが、私の喜びではない」というメッセージになると思うのです。大人同士であれば「じゃあいい」で済みますが、親子関係ともなればそうはいきません。だから、できる限り子どもからの要望は無茶な要求でない限り渋らないし、子どもにもきちんとお願いしてもらうようにしています。

なのですが、パートナーは子どもに対して油断しているのか、たまに「え~~俺がやるの? 」みたいな態度を取ることがあります。そのせいか、パートナーは息子に「今日学校であったこと」をよく聞いているのですが、あまり話してもらえません。「お母さんにばっかりお願いする」とか「お母さんにばっかり話をする」と不満を漏らすことがあるのですが、だったら子どもからの要望を渋る態度をやめるべきだ……という話をしました。

息子はお母さんが大好きだからお父さんに冷たいんじゃない。お母さんが息子から信頼を得る行動が多いからだ。ということに気がつけば、不満を言ってる場合ではない。子どもに対して「はい喜んで! 」と言うかどうかまでは別ですが!

相手の求めに渋らず応じれば信頼関係が深まるのは、親子間だけでなく夫婦間も同じですし、全ての人間関係において同じだと思っています。とはいえ私の場合、「相手の求めに応じる」をちょっとやりすぎちゃって初婚で失敗してしまった経験があります。一方的に応じるのもバランスは悪いものです。なのでやっぱり「ちゃんとお願いしてもらう」とか、自分も相手にお願いしてやってもらうなどのバランスは大事です。

常に「真心と信頼の循環」を家庭内で回して、ストレスのない家庭にしたいと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。