「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第176回のテーマは「子どもの話をどれくらい聞いてあげたらいいのか」です。
子育ての基本として「子どもの話をよく聞いてあげましょう」とよく言われます。でも、実はちゃんと理解してなくてもいいらしいんですよね。ゲームの話とか、正直よくわからなくても、「お母さんよくわかんないから」と言うよりは「(よくわかんないけど)なるほど、楽しいんだね」と、受け止めてあげることが大事なのだそうです。
パートナーの子ども時代は息子にわりと似たタイプで、本人いわく「ちょっと成長の早い子」だったそう。他の子よりも早く字が読めるようになって、本を読んでは周りに「これって○○なの? 」とか聞いていたそうです。
しかし、周りの大人が「いや~マコちゃんは頭が良くてかなわないな~」と、一見褒めているようで、まともに取り合ってくれなかったという経験から、大人に対する不信感を持ってしまったという話を聞きました。「子どもなのに」「子どもだから」「子どものくせに」という扱いをされるのってイヤですよね。
そういうことから、なるべく「子どもだから」は横において、本人の興味・好奇心に付き合おうと思っています。息子から聞く「爪はカルシウムじゃないよ、ケラチンだよ」などと言う話は、私にとっても「へ~そうなんだ」と目から鱗でした。そこから一緒に本やネットで調べて親子で話をしたりというのは、結構楽しいです。
そこからちょっと難易度が上がるのが、ゲームの話です。子どもの間で大流行している「Minecraft(マインクラフト)」というゲーム、ご存知ですか? ブロックを使っていろいろなものを作るゲームなのですが、ゲームの構造がわりと複雑です。ゲームの中で「冒険の旅」みたいなこともできるし、自分でいろいろなものを作ることもできます。
最初、一緒にやろうと調べたのですが……私にはなんだかよくわからない! 一方、息子はそんな親を尻目にYouTubeで攻略動画を見てどんどん覚えていきました。なので私はゲームの詳しい内容については全然わかっていません。しかし息子はその複雑な設定、スペックを「あれがこうで、これがああで」としきりに説明してきます。
我が家は現状一人っ子なので、受け止めてあげられるのが家の中では親しかいません。なのでなるべく聞いてあげています。これについては「そうか、それが楽しいんだね」でとりあえず乗り切っています。
とはいえ、同級生のお友達とマイクラの話をしても、全員が同じようにすべての設定やスペックを理解しているわけではなさそうです。みんな各々「自分のやりたいことだけ」しかわかっていない様子。同じマイクラ好きのお友達同士でも、お互いが「あれがこれで」と説明しあっていて、受け手は「へー」みたいな感じだったりするので、親も「へーそうなんだ」でも大丈夫そうです。
最近「いくらなんでもそれは厳しいな」と思ったのは、息子が「学童で読んで面白かったから買って」とねだられた「面積・体積」の解説マンガを買ったときです。息子は体積や面積の求め方を理解してとても楽しかったらしいのです。私も改めて読んでみると、普段全然使わない「円錐・四角錐」の求め方なんかが出てきて「そういえばこんなだったっけ」と楽しめるところもありました。なのですが……お風呂に入っているときに「体積クイズ」を出されました。
息子は本に出ていた問題をそのまま全部覚えており把握しているのですが、こちらはそのページを読んでいません。そして、突然「体積クイズです。縦が12センチで……」と始まりました。
「ごめん、縦と横じゃなんだかわからないから、『幅』と『奥行き』と『高さ』で言って」と語彙の統一からはじまって、脳内で図形を構築して、さらにそこから計算をさせられました。いや、させられたっていうか、そんなに頑張らなくてもいいんですが「子どもの好奇心を真面目に受け止めなければ! 」という気負いがありすぎて、やってしまったのです。
それと同時に、どこか子どもからの「お母さんはどれくらい理解しているの? 」という「値踏み」みたいなものも感じてしまったんですよね……。なのでちょっと頑張っちゃったというのもあります。お母さん、数字は苦手だけど小1にバカにされたくはないんです。ちなみに小学生向けの例題なので、計算は簡単だったので(だから息子も覚えている)できました。そして数字は苦手だけど、ビジュアルイメージがある図形問題は得意なんです! 美術系のお母さんは!! とはいえ、暗算で体積は厳しいし、この先も無茶振りされていくのでは……と思うと、一抹の不安が。
いくら「大人は真面目に受け止めてくれない」と思われたくなくても、物事には限界があるなと思いました。「お母さんはどこまでわかってるの? 」みたいな、人を試す感じも良くないし、全てを受け入れるだけが親の役目ではないなと。なので、「お父さんもお母さんも楽しいなと思えるクイズにしてね」とお願いしておきました。
「子どもにとって良いことをしよう」と思っても限界はあるし、どこまでやったら「話を聞いて受け止めた」ということになるのか……? と、相変わらず悩みます。子育てに「正解」はないなと思いました。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。