「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第173回のテーマは「ご近所付き合いしてるだけで感動しちゃう」です。
前回「大人になっても友達は作れる」というポジティブなことを書きました。ですが! 元々そんなポジティブな考えで生きてきたわけではないのです。
最近、地域のママ友や繋がりのある人達とやりとりをしているときに、ふと「すごい! 私、ちゃんと人付き合いしている」と感動しました。つまり、以前は人付き合いにコンプレックスがあったのです。
前回も書きましたが、私は高校から美術系の学校に通っていました。なので、16歳のときからずっと「好きなものが近い人」に囲まれてきました。学校を卒業してからもずっとフリーランスで仕事をしてきたので、企業への就職経験がありません。好きなことを仕事にしてきたという自負はありつつ、それは同時に「自分はちゃんとした社会人ではないのではないか」という不安がつきまとうものでした。
その不安がMAXになったのが、アラサーの時期です。「ちゃんとした大人になりたい」と強く思った結果、「早く結婚したい」と思いつめてしまいました。自分の人生が不安定だと感じて、何か間違いなく安定したものが欲しくなってしまったのです。結婚はその当時の自分からみると、「絶対的な安心をくれるもの」に見えていました。結婚して子どもを作れば、「社会的な人間」として安定した立場が得られるように見えたのです。
ですが実際に結婚しても、私が感じていた不安は全く解消されませんでした。「ちゃんとした社会人になりたい」と思っていたのに、結婚したとたんに「夜は家にいないといけないし、仕事もできないよね」と、飲み会の誘いも急な仕事の依頼もなくなりました。私が思っていた「ちゃんとした社会人」=「型にはめられる」ことが増えるということだったのです。
ちなみに結婚してみて、結婚式や引っ越し、親戚への挨拶、お祝いのお返し等々……今まで外側からなんとなくしか知らなかったことを実際にやってみて、「世の中の仕組み」がわかったのはすごく楽しかったです。なるほど、こういう感じなんだな! と知ることができたのが最大のメリットでした。「ちゃんとした大人」になった気分を味わったのは確かです。
しかし、私は夫の稼ぎで暮らすことも求めていなかったし、実際に夫の稼ぎで暮らしてもいなかった。でも「結婚して、ちゃんとした社会人になりたい」という私の行動は保守的なスタイルに見えてしまったのです。経済的にパートナーに頼る前提ではないのに、「結婚したんだから、旦那さんに養ってもらうんだよね? だからそんなに仕事しないよね? 」と思われてしまい、仕事は減りました。人生の不安が解消されるどころかますます不安が増えてしまったのです。そして、そもそものスタートが間違っていたということもあり夫婦関係もちぐはぐになっていき、結果的に離婚を選択しました。
離婚は私にとってかなりの挫折感を味わう体験でした。進学も仕事も、自分が「やりたいこと」を選択してきのに、結婚は自分が進んで選んだ選択が、まったく上手く行かなかったからです。
離婚してから「自分が本当にしたかった生活」を考え直した結果、失敗の原因は自分が世間知らずだったことに原因があったことに気が付きます。私は美術系の学校を卒業してからずっとフリーランス。世間に男女の賃金格差があることも知らなかったし、「結婚した女性」がどう扱われるかも知らなかった。私は反省し、いろいろなことを調べ直しました。そして自分に合う生活をするために、再婚では「事実婚」を選択して、夫婦別姓、母子別姓を選択しました。
たくさん悩んだ結果、ある程度吹っ切れて「自分らしく生きる」と決めたのはいいのですが、「とりあえずやってみよう」という感じでうまくいく確証があったわけではありません。また失敗するかもしれない。なので、離婚時に感じた「ちゃんとした大人になりたかったけど挫折した」という気持ちを完全に払拭できたわけではありませんでした。
そういった経緯があり、出産後に「ママ友や、地域の人との付き合いができるのだろうか……」という不安を抱えることになります。子どもが保育園に無事に入れたのはいいものの、周りはみんな企業で働きながら子育てもしていて、離婚もしてない「ちゃんとした大人」に見えていたからです。
なのですが……蓋を開けてみたら、ママにだっていろんな人がいました。二度目の結婚の家庭もうちだけじゃなかったし、いろんな職業の人もいます。年齢も考え方もさまざま。いろんな人がいて、どの家庭もそのうちの一つでしかなく、我が家も別に特別ではないと思うようになりました。そして子育てを始めて7年が過ぎ、気がついたらママ友もできて子どもを通じて地域の人たちとも交流できていました。
だんだんと自然とそうなっていったので、先日ご近所さんからもらった栗を煮ていたときに、「普通に地域にコミットしてるじゃん! あの頃不安だった私に教えてあげたい!! 」と、はっと気が付いたのでした。
自分が自分を受け入れて、相手のことも受け入れる。無理して誰かに合わせなくてもいいし、周囲の目を気にしなくてもいい。でもそれは自分がなにをしたくて、なにをしたくないのかたくさん迷って、悩んで考えた結果できるようになったことだと思うのです。なので、悩んでいたときも無駄ではなくて、その後に今があるのだと思います。
きっとこれからもまだまだ迷ったり悩んだり、選択したことがうまくいかなかったりすると思うのですが、たまに振り返って「昔できないと思っていたけど、今はできてる」ことを再確認して、自分を認める瞬間があるのも大事だなあと思いました。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。