「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します第147回のテーマは「不機嫌を撒き散らさないようにするには」です。

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第130回「隣にいてくれるだけで心強いときもある」でも書きましたが、フリーランスにとって「PCの不調」は大変ダメージになります。なにせ、替えの環境が整ったPCが何台もあるわけじゃないし、PCを直す時間が作業時間を圧迫します。締切のある仕事をしている身として、PCが不調になることは致命的です。

ということは、私もわかっているのです。わかっているけれども、その心理状態で子どものコミュニティに参加するのはなかなか厳しいものがあります。「メンタルが落ちてるならわざわざ来なくてもいい……! 」と思うのはこちら側からの意見ですが、当事者にしてみれば、「復旧作業はした、それには時間がかかる。今日はこれ以上何をしてもどうにもならないから子どものイベントに参加しよう」ということだったようです。

しかし、この時はその状態を引きずり、ほかのママ友・パパ友とまったく話さない。かといって子どもの相手もしない。むっつり不機嫌な状態で場にいるだけ……となりました。

性別に関わらず、自分のメンタルをコントロールするのが苦手なタイプの人はいます。パートナーは、以前よりはかなり改善しましたが、本来「自分の状態を自覚する」のが苦手です。「不機嫌でむっつりしている」のを自覚していれば対処のしようもあるんですよね。

でもこれに、「あなたは今不機嫌でむっつりしていますよ」「どうにかしてください」とメッセージを送ると、だいたいの場合火に油を注ぐことになります……。不機嫌や心の状態が悪いことには原因があります。そちらに気を取られていて、周りに注意が行っていないわけです。そんな時に人から指摘されると、さらにメンタルが悪化する場合が多いです。

つまり、人前で「ちょっと態度が悪いよ」と言えば、人前で夫婦喧嘩することになりかねない。かといって、スマホに「態度が悪いからなんとかして」と短文を送りつけたところで、気分がさらに悪化するだけ。こういう場合、本当にどうしたらいいのか悩みます。ほかの人は、とくになにか気を使うことはないまでも、「この人何しに来たのかな」くらいは思っているはず……と思ってしまい、私にストレスがかかります。

ストレスが溜まってしまうと、結局「この問題を解決したい」と切り出すときには、こちらは不満でいっぱい。結局喧嘩になります。喧嘩にならないためには、こっちが不満とストレスを抑えて、穏やかに話し始めないといけないわけですが、そうするとだいたい伝わりません。むしろ「はあ? 」みたいに返されて、結局夫婦喧嘩になるので、どうやっても避けられないのです……。私自身はとにかく喧嘩したくないのですが、喧嘩しないと伝わらないことがありすぎるのが悩みです。

どうすれば、我慢してストレスを溜めることなく、その場で「あなたは今、とても感じが悪いのでニコニコしてください」と伝えられるか……ということを考えました。スマホでメッセージを送るのは、たぶんこちらの真意が伝わらずに逆効果。じゃあ、ハンドサインかな? しかし、ほかの人達に気を使わせたりしたくない。そうだ……! こっそり、パートナーの爪を自分の爪でカリカリしよう……!!

というわけで、次に「あなたは今とても感じが悪いですよ」と伝えたいときは、パートナーの中指の爪をカリカリすることにしました。ポイントは、ちょっと気持ち悪い行動であることです。普通のコミュニケーションでは、こちらの不満やストレスが伝わらない。かといって、ストレートに言うと機嫌がさらに損なわれる。じゃあもう「ぎょっ」としてもらうしかない! ちょっと妖怪テイストです。不機嫌なメンタルが「火」だとすれば、油ではなく冷水をぶっかけるしかない。

パートナー的には、できれば突然中指の爪をカリカリされたくはないらしいので、これでいくことにしました。これで「あ、今すごく感じが悪く見えているんだな」と自覚できた場合、気持ちを立て直せるならニコニコするように意識をして、それが無理ならその場から離れる、ということにしました。そして、できれば「外で誰かといるときに中指の爪を、カリカリされないようにしよう」という気持ちになってくれたようです。

我が家はこうやって数々の対処法を考えているのですが、こういう話をすると「解決方法を提案しているのはさるころさんですよね。結局さるころさんがお世話をしてあげているんじゃないですか? 」とか言われることがあります。でも、正直言うと困っているのは私なのです。パートナーは別に他者に不機嫌を撒き散らしたところで、無自覚なので困りません。無自覚が問題になっている以上、私は自分の困りごとは自分で解決するしかないと考えています。

もちろん、私の提案にパートナーが同意してくれなければ意味はありません。パートナー自身は自分の特性を指摘されると、それを素直に受け入れて私の提案に乗ってくれます。物事を改善しようという意思はパートナーにもあるのです。なので、こういうことを続けて行くしかないんだろうな……と思っています。

パートナーの特性を考えて提案しているわけですが、どうも私の提案が妖怪っぽいテイストになりがちなので、私がどんどん「妖怪人間」になっていったなら、それはパートナーのせい……。パートナーが特性を自覚して自分で改善してくれたらいいなと思っています。早く人間になりたい~!

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。