「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第140回のテーマは「子どものために夫婦仲良くしたい」です。

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最近、徐々に周りに「子どもが20才を越えた後の親子関係」の話をする人が出てきました。私自身は38才初産なので、まだまだ小児の育児中なのですが、年上の友だちの子どもたちはもう20代になったりしています。若者たちを見ていると、ああ……私も20代の頃ってこんなだったかなと思うこともよくあります。

ですが、大人になってから「親としての目線」が入った状態で見ると、親の影響の大きさをひしひしと感じることがああります。

幼児を育てている今は、「親から子どもへの影響」ということがよくわからないなあと思うことが多いです。親から子への影響よりも、子ども自身が持って生まれた要素が幼少期は強いからだと思います。

自分が育児をしてみて、「子どもって生まれたときからこんなに性格がはっきりしてるの? 」とびっくりしたし、子どもの趣味趣向もそうです。父親と母親の趣味、どちらからも影響を受けるのかと思いきや……息子は母親のほうの趣味と合うようです。元からある資質みたいなものって、大きいのだなあ。性格は親の育て方だけで決まるんじゃないんだ! と思いながら、新鮮な気持ちで育児をしています。

なのですが、若者と話していると「親の影響」を感じることがあります。親の影響がよくわかるのは、幼少期よりも青年期のほうなんですね。

若者は経験値が少ないために、「社会」のモデルケースが親になりがちです。なので社会と自分が関わる価値観は、親からの影響を受けやすい。もちろん私自身もそうだったし、そんなの当たり前ではあるのですが、自分が若かったときは、どこまでが「親の影響」でどこからが「メディアや世間から常識だと思わされてること」なのか、よくわからなかったのです。でも、自分の中に親としての目線が入ってくると、若者たちの仕事観や恋愛・結婚観などに、すごく「親の影響」が存在することがリアルに感じられるようになりました。

とくに、恋愛観や結婚観には大きく影響があるのだなと思います。「親の不仲がすべてネガティブに影響する」というわけではありません。私自身は、両親が円満だったために、「結婚」に対して何の疑問も持つことなく、「なんとなくのイメージ」だけで全然自分と合ってない結婚をしてしまった……という失敗がありました。親が不仲だったからこそ、よりよい結婚をしたいし、意識が高いという人もいます。なので「親が不仲=悪影響」ではないと思っています。

しかし、夫婦仲がよくないために、母親または父親の感情的な繋がりがすべて子どもに向かうというのは、子どもにとっていい影響を及ぼさないな……とも思うことがありました。漫画『凪のお暇』(著・コナリミサト/秋田書店)の11巻を読んだ時のことです。パートナーに恵まれなかった母親が娘に過大な期待をしてしまう、という描写がありました。私はこれを読んで、本当に「こわい!! 」と思ったのです。

うまくいかなかった自分の人生を「なんとかしてくれる存在」として、子どもに過大な期待をしてしまい、子どもがそのプレッシャーで苦しむという話なのですが、私の周りにもそういう人は世代に関わらずたくさんいる……! と思いました。

親が子どもを想うのは大事なことですが、子どもが大人になっても「自分(親)を幸せにしてくれる存在」であることを期待し続けるのは、子どもにとって本当にいいことなんだろうか? と思うのです。私自身は、今子どもに幸せにしてもらっていると思うのですが、「夫に幸せにしてもらう」ことを諦めたくないなとも思っています。子ども以外に私の人生を幸せにしてくれる人がいることは、子どもが自分自身の人生を生きて幸せになるために必要なんじゃないかと思うからです。

たしかに夫とケンカすることもありますし、何度伝えても変わらないところに悲しくなる日もあります。でも、夫と信頼関係を築くことを諦めて、「子どもだけを幸せにして、子どもに幸せにしてもらおう」と選択してしまうことがこわいのです。なので、できる限り子どもが成長して巣立った後も、お互いがお互いを幸せにできる存在であろうと日々できる努力はしたいと考えています。

と考えてはいるのですが……本当にダメならダメで、無理して関係を続けることはせずに他のパートナーを探すつもりです! 無理することが一番良くないですよね。また、仲良く年老いたとしても、夫は年上なので先立たれちゃう可能性も大いにあります。そうしたら「看取ってくれる年下の彼氏を作ろう! 」と考えています。とにかく、子どもだけに人生のすべてを依存したくないだけなので、猫も飼うし、大事な人を増やしていこうとも思っています。

とはいえ、現状子どもにとっても私にとってもいいのは「夫婦仲がよいこと」です。なので、私のため、子どものために夫婦仲を良くしたい。私達夫婦は健全な関係を保ちたくて、「無理して家族を続けないように」と事実婚を選んだのですが、子どもができたり関わる人が増えたりすると、やっぱり簡単には別れられなくなります。

共有財産を持たないようにしても、子どもや関わっている人たちの「気持ち」が共有財産になっちゃうんだな~と、結婚生活が長くなるにつけ思うようになりました。私達が不仲だと、子どもをはじめ深く関わっている人を悲しませてしまう。だから、夫婦仲を良くすることを頑張ろう……と改めて思いました。

でも、子どもが親の手をつないでくれてるうちは、子どもと手をつなぐのでいいかなと思いました。我々夫婦歴、たったの9年。これから先もまだまだ長い予定です。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。