「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第135回のテーマは「子どもも大人もフェアなペナルティー」です。
家族の揉めごとってイヤですよね。私は基本的に子どもにガミガミ言うのもイヤだし、パートナーが子どもにガミガミ言うのもイヤです。
子どもは親に比べて身体的にも経済的にも弱いので、最終的には言うことを聞くしかない立場。話し合ったりお互いの要望をよく聞いたりせずに、親が簡単に強制できてしまう相手です。私はそれを「フェアではない」と常に思っており、子どもに対して身体的な優位性を行使して何かを強制しないようにしています。
男女間においても、体格などの面で男性のほうが女性よりも身体的に優位な場合が多く、酷い場合には恫喝や暴力、DVにも発展します。そういう問題に断固として闘っていきたい心情の私は、自分も自分より弱い子どもに対して「身体的な優位性を発揮しない」ことを心がけています。
とはいえ、親も人間なので子どもの態度で感情的になることはありますよね。とくに男親であるパートナーは、以前に比べて感情的な要素は減ったものの、子どもを強く叱りつけることがあります。我が家では、大きな声を出すことも「身体的な優位性の行使」という扱いなので、力で抵抗できない相手を大きな声で怒鳴りつけることはNG行為です。
そんな風に、コミュニケーションがうまくいかないとイライラしたり怒ったり……というのがイヤだったので、新たなルールを考えました。それが「ペナルティーはペロペロ」です。第92回「息子の態度の裏にある愛情」でも似たようなアプローチを考えたのですが、ちょっとしたイタズラやおふざけに対して、いちいち本気で怒るのをやめようというものです。
毎日毎日保育園に行く前に「靴下をはいて」→「靴下履きなさい! 」→「何度言えばいいの! 」みたいになるのが、本当にイヤなんです。「怒られたからやる」という行動パターンを作るのもイヤだし、怒られることに慣れて「親が怒ってからやればいい」と思われるのもイヤ。なので、私はとにかく「怒り声」を出したくありません。もちろん、子どもに問題があるときは「それはダメだ」とわかるようにしっかり叱るのですが、些細なことではいちいち声を荒げたくない。
パートナーにも同様に怒り声を出してほしくないので、「言う事聞かないならペロペロしちゃうぞ」ということにしました。ペロペロというのは「ペロペロ」と言いながらくすぐる程度のことが多いです。これは最も効果があるのは親のほうで、「下らないこと」を言っていると怒る気が激減するのです。
ちなみに子どもが「されても平気だも~ん」と親を舐めた態度のときは……本当に舐めます。腕などをべろりと。感染症対策が大事な状況なので、衛生状況には気を配り本当に舐めたらキレイに拭いてあげています。
とはいえ、基本的にこのペロペロモードは「ゆかいなおふざけ」です。やってる間は基本的には子どもは笑っています。日常の中で「○○しなさい! 」というお説教モードをいかに減らすか。というのが目的で、6才児相手の現在は結構効果があります。
しかしもうすぐ小学生になる息子。「朝の支度をする」などのタスクはやっぱりスムーズにはいきません。今のところ息子は「○○しないとペロペロするぞ~」というと「ペロペロされたくな~い」と笑って逃げ出して、靴下をはいたり上着を着たりしてくれます。とはいえ、この作戦は一体何才までOKなんだろうか? とも悩みます。
基本的なスタンスとして、親としては子どもにペロペロなどのスキンシップ的なアクションをするのは楽しいです。子どもも好意的にされれば楽しくやりとりしますが、さすがに大きくなったらできません。これは期間限定の「シリアスな叱りモードの回避作戦」ではあります。
ただ、ペロペロ作戦をしていて「これはアカン! 」と思ったのは、「お父さんとお母さんはボクをペロペロしたいのだ」と思い始めた息子が、別の交換条件のときに「ペロペロしていいから○○させて」と言い出したときです。
「ペロペロされたくない(ちょっとしたイヤなことをされたくない)」から「靴下をすぐはく」というのはそれなりに動機と行動が釣り合っているのですが、「ペロペロしていい(行為を報酬として差し出して)」から「○○させて(別の報酬を得る)」、つまり「身体的な接触が報酬になる」というのは非常に危険な考え方ですよね……。
その時は「その交渉は成立しない」ということを伝えたのですが、子どもはいろんな受け取り方をするのだなあと思いました。さじ加減が難しい。親は監督者として、シリアスを回避する楽しいやりとりでいられるラインを守らないといけないなと思いました。
ちなみに以前の「息子がパンチをしたらお父さんが10回チュッチュする」という作戦は、しばらくやっていたら息子がお父さんにいじわるすることがなくなったんですよね。なので、息子が満足したり納得したりすれば自然と必要なくなることもあるのだろうなと思います。
できればユーモアがあって、楽しくコミュニケーションしたい。親がイライラしないように、あの手この手を考えています。なので、この作戦を卒業する頃にはまた別の作戦を考え出したいし、できたらあれこれ言わなくても自分で進んでタスクができるようになってもらいたい。
タスクができるようになるのは、また別のアプローチが必要だと思うので、それも成長に合わせて考えて行きたいと思っています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。