「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第132回のテーマは「お買い物するにもセンスと才能が必要」です。
最近気が付いたのですが、私はあんまりお買い物の才能がないっぽいんですよね。世の中には積極的にお買い物をするタイプの人と、必要だから買うというタイプがいるなあと思っていて、私はどっちかというと後者です。
我が家はパートナーも私も、物欲はないわけじゃないけど「必要だから買う」タイプだなあと思います。パートナーの場合、必要じゃないのに買うのは「面白Tシャツ」、私の場合は「古墳グッズ」くらいでしょうか。それ以外はわりと必要だから買う、という感じです。
現在大学生のパートナーの娘(息子の異母姉)は、我が家とは月1回の面会交流を続けていて、先日お誕生日だったので彼女の欲しいモノを買いに行きました。そこで「今年はデパコス(デパートコスメ)がいい」と言われて買い物に付き合いました。私はコスメに関しても「必要だから」「これでいい」という買い物の仕方をしています。「これがほしい」「これがいい」という買い物を見て、「ああ、これがいいで欲しいモノを買うのは気持ちがいいな~」と思いました。
第130回「隣にいてくれるだけで心強いときもある」でも書いたのですが、私は仕事道具であるPCにしても、必要にかられていたしかたなく買うので、ニューマシンを買うのも正直あんまり楽しくありません。性能などあれこれ調べて、新しいマシンを買うことにトキメキを感じることができるタイプの人を羨ましく思うこともあります。
家電もそうです。私は家電を買うときも「これでいいや」の極みで、値段と機能がそれなりに満足できればいいのです。必要になったら仕方なく調べて、とりあえずの妥協点を見つけて「これでいいや」と買います。友人が「新しい家電を買った! ここが素晴らしい」などと言うのを見ると、「ああ、羨ましい! 」と思ってしまいます。素晴らしい家電が羨ましいのではなくて、調べるモチベーションと、買い物したことで得られるトキメキが羨ましいのです。
現在、我が家は持ち家もなく車もありません。どっちも必要も興味もないんですよね。私は「とりあえず快適ならOK」なのです。持ち家があると、長く使うインテリアなどを考える必要がありますよね。素敵なおうちにお邪魔すると「素敵~」と思います。
一方我が家は、生活スタイルに合わせて引っ越しすることにしています。次の家がどういう家になるかわからないので、今の家に会わせて「とりあえず」「これでいいや」という家具に囲まれています。そして、「あれ、私はこの先もずっと“とりあえずの家具”に囲まれて生活するのか」と気が付きました。
……でも、それなりに快適なんですよね。実家に帰ると、今も私が子どもの頃からある家具が並んでいます。40年くらい同じものを使っているわけですが、それに耐えうる良い製品なんだろうなと思います。私も実家にいたときは家を買って、一生モノの家具を買うことが、「正解」なんだと思っていました。
しかし、初婚で離婚をしたときに、「世間や親がやっていたから当たり前だと思っていたこと」と「私にとっての本当にやりたいこと」をよくよく考えた結果、「私は別に本当に欲しいモノ以外は手に入れなくていい」と思うようになりました。“とりあえずの家具”に囲まれているな……と気が付いたと同時に、自分が素敵なインテリアに囲まれて、素敵なおうちに住みたいという気持ちがないからこうなんだ、ということにも気が付いたのです。
若いときは、40代になったらきちんとした場所へ行く時用の高級ブランドの靴やバッグ、服を持っている「大人」になっているのだろうと思っていたけど……今現在、持っていません。もちろんフォーマルな衣服はセットで持っていますが、それがブランドものである必要がないなと思ったので買っていません。「持ってないとおかしいから」「普通は持っているから」みたいな理由でなにかを買う必要はないなと思ったのです。なので、気が付いたら「大人になったら持っていると思っていたモノ(親が持っていたもの)」を持っていない人生になりました。
もちろん、時代の変化もありますよね。30年くらい前まではもっと物質的な価値観が評価されていて、「コレを持ってないと恥ずかしい」みたいな価値観が今よりもずっと強かったと思います。しかし今はそういう価値観はだいぶ薄くなったなと感じます。なので、私みたいな「より価値のあるものを、きちんと調べて買う」ことを楽しめない、めんどくさいな~と思うタイプの人間は生きやすい時代になっているなと思います。
もちろん私の「これでいいや」にも基準があって、「これで」の基準に見合わないものはダメなので、こだわりが全くないわけではありません。ちょっと前にパートナーが「新しいこたつがほしい」というので、おまかせしました。前から使っていたこたつは楕円の天板だったのですが、新しいのは四角い天板になり、部屋全部が四角に占領されて「部屋のデザインのバランスがこれではイヤだ! 」と感じてしまいました。夫婦で話し合った結果、新しいこたつは返品ができたので返品してもらい、前からあった楕円形の天板のこたつを今も使っています。「これでいいや」は「なんでもいいや」なわけではないのでした。
無理に「良いモノを選ぶ」ことをせずに、ある程度適当に決めることが快適ならそれを大事にしつつ、どうしても譲れないところは死守。とにかく快適になることを優先して、この先も生活していけたらいいなと思います。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。