「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第13回のテーマは「ダメ出しするならお手本見せて」です。

  • ダメ出しするならやってみて

うちの息子は「スーパーママっ子」です。お母さん大好き。お父さんはおまけ……くらいの扱いでした。

最近少しだけ緩和されていますが、1歳くらいから4歳になるまでの3年間は「お父さん差別」が強い子でした。

お父さんしかいないときは素直に言うことを聞くらしいのですが、両方いる場合はお父さんが何かしようと思っても「お母さんがいい」となりがちでした。それについては誰が悪いわけでもないし、パートナーはかわいそうだなと思ってはいました……。

確かに「お父さんがする子どもの世話」のほうが、抵抗されたりぐずられたりして負担が多くなるからです。だからといって「お母さんが何でも子どもの面倒を見る」のはなんだか違うよね? と思っていました。

でも徐々に徐々に「息子の世話はお母さんがやる」みたいになっていっちゃうんですよね。

そして、子どもがぐずったときの対応なんですが、パートナーはわりと「ダメ出し」してくることがありました。本人は多分親切心のつもりで「それじゃあダメだよ、こうしないと」みたいなことを言ってくるんですが、いやいや、「たった今、目の前に息子がいるのになぜそれを自分で実行しないのか? 」という疑問。

これは完全に「お母さんが息子の面倒を見る」と思っているからですよね。確かにお母さんの言うことのほうが聞くのですが、それだからといって息子へのアプローチをすべてお母さんがすることになると、ますますお父さんの言うことを聞かなくなるのではないでしょうか?

というわけで、ダメ出しされて納得いかなかった場合は「たった今、ここでその私に言ったアドバイスを実践してみせてください」とお願いすることにしました。

「やっぱりオレじゃあ聞いてくれないって~」と弱音を吐かれても突っぱね続けた結果、お母さんと息子がモメたときに無事に「お父さんが息子をなだめる」ことができるようになりました! やったー!

パートナーの行動が成功するのを見ていたら自然と私も「そうやってアプローチしよう」となります。やっぱり本人ができないことを「こうやってやりなよ」と言われることほど、納得いかないことってないですよね……。

パートナーは育児に積極的に参加しようと思っているし、基本的に家族で過ごす方針で、私はとても助かっています。育児の現場に1人以上大人がいるというのは、タスクを分ける以外にも、現場をわかってもらえたり、大変なことがあったときに「大変だね」と気持ちを分かち合えたりと、それだけでもとても気が楽になります。

でもせっかく両親がそろって子どもと過ごしているのに、片方だけが責任を持って行動しないといけなくなっていくのはなんだかもったいない。というか納得いきません。

育児の当事者意識は、本当に気を抜くと片方が抜けてしまうな~と思っています。「育児はお母さんの仕事だし」とか「頼んでもどうせうまくできないし」みたいに片方が抱え込むと、お父さんは成功体験を積むこともできず、スキルが積み上がりません。

以前の自分だったら「私が子どもの対応をもっとちゃんとできるようにならなくっちゃ! 」と抱え込んで、そして後から「でもお父さんがやってもよくない?! 」と不満を抱えていただろうなと思います。そういうことを反省して、今は自分が「完璧な対応ができるお母さん」を目指さず、「足りないところはお父さんに補ってもらおう」くらいの気持ちでいます。

パートナーが自分で息子にアプローチして、息子の感情をコントロールすることができれば妻に「ダメ出し」して夫婦喧嘩になることもないし、息子は気持ちが収まってお父さんを信頼するし、いいことばっかり。

「私がやらなきゃ」と言う意識を捨てて「お父さんが自分でやって」という姿勢を貫くことにしています!

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。