「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第129回のテーマは「サンタが来るおうちと来ないおうちがある」です。

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年の瀬ですね。みなさんのおうちにはサンタさんは来ましたか?

子どもが生まれて以来、我が家ではこの問題について話し合ってきました。パートナーは「子どもがサンタさんを信じるのは、親にとっても楽しいんだよ」と言います。なので、今のところ我が家には「サンタさん」が来ます。なのですが……私は「なんで子どもに積極的にみんなで嘘をつくんだろう」と思ってしまう方なんですよね。

私自身は、子どもの頃サンタさんが来ない家でした。クリスマス前になると母が新聞に入ってるおもちゃのチラシを子どもたちに渡してくれます。その中から丸をつけて、「これをお父さんに頼んで! 」と母に渡すのが、我が家のクリスマスでした。子どもの立場としては、いつもよりも父親が帰ってくるのが早くてすごく楽しみだったという、わりといい思い出があります。なので、私は「親から直接もらって、親に感謝したほうがいいのでは……」と思ってしまうのだと思います。

もちろん、私が子どもの頃にも「サンタさんの来るおうち」はたくさんありました。しかし小学3~4年生くらいになると、「おまえ、まだサンタ信じてるのかよ~」とマウントが始まります。ある年齢の子どもにとって「サンタを否定すること」“大人”に見える時期があるんですよね……。私はこれもすごくイヤでした。

私はサンタを信じてる子に「アレは親がやっているんだよ」と言うことはなく、「ああ、この子のおうちはサンタさんが来る家なんだな」と思っていただけです。しかしマウントを取る子は、「信じてないのが大人だ」と思うと同時に、ずっと「サンタがいる」と信じてきたことに対して、どこか裏切られたような気持ちを持っているのでは? と感じていました。それで、まだ信じている子を同じような気持ちにさせたいのではないか……と、小学生ながらにモヤモヤしていました。そして、「なんでわざわざ大人は子どもに嘘をつくんだろう、うちの親は嘘つかないけど」と思っていました。私は最初からその「信じる・信じない」論争に巻き込まれなかったので、「サンタが来ない家」だったことに肯定的なのだと思います。

なのですが、我が家のパートナーは「サンタさんがいる」ということを共有できるのは、子どもが小さいうちだけなのだから、これはよい風習としてやろう。というので、今のところ私も付き合っています。

パートナーには「いない鬼に豆まきをするのは抵抗がないのに、なぜサンタはそんなにイヤなの? 」と聞かれるのですが、鬼は目に見えないけど、概念としてはいると思っています。人の心に鬼もいれば、サンタもいる。そこまではいいのです。豆をまいて邪気を払い、福を呼ぶのは「気の持ちよう」とか「心がけ」に繋がるので、よいと思っていますし、サンタクロースについても同じようなものだと言えると思います。

しかし! プレゼント概念じゃなくて、実際にある“物”なので、そこがモヤモヤするんだと思います。誰かが買ってきて、そこに置かないといけない。実際には知らない人が鍵を開けることができて勝手に入ってきたら怖いのに、サンタはOKなんだ……と思ってしまうのです。

ちなみに私は慈善団体やNPOに寄付をするタイプですし、チャリティも見かければ参加します。なので、そもそもの「サンタクロース」という概念をみんなで共有して、人に施しをしたり善意を分けたりすること自体にはとても肯定的に考えています。善意が行き交うことはとても素敵なことですよね。なので、プレゼントは親が買ってるんだから親に感謝しないとおかしい、という考えだけが正しいとは思っていません。子どもに嘘をつく、という行為が含まれているのが苦手なのです。

自分の中でその辺のことが納得できていないので、私は子どもに積極的にサンタさんの話をしません。そして自分の家には来なかったことも話しているので、サンタさんについては「よくわからない」というスタンスを取っています。それがより子ども的には違和感がないらしく、息子は「サンタクロース」の存在を信じています。私としては、実際私が嘘をついているわけじゃないので、まあいいか……と思いながらも、パートナーが通販サイトで買ったプレゼントをラッピングしているので、結局片棒は担いでいるのですが。

善意や楽しいことの中にも呪いはある……と思ってしまうのは、私が親の結婚を見て「結婚したら、苗字を相手の名前に変えて、相手のケアをして尽くすんだ! それが幸せなんだ」と思い込んだことにも関係しているような気がするんですよね。親はそれでよい関係を築いて幸せだったかもしれないけど、私には全然向いてなかった。他の選択肢があると知っていたら違ったかも知れない……と思って、今に至ります。素敵なことや幸せなことにも、「他の選択肢もあるよ」という気持ちで、息子に「サンタさんが来なくても、楽しいおうちはあるんだよ」と言うのかもしれません。

ちなみに息子から「お父さんとお母さんからもプレゼントが欲しい」と言われ、「サンタさんからプレゼントもらうと、なんで親からはもらえないのか」ということにちゃんと答えられず、結局プレゼントを買ってしまいました。買ったのは前から欲しがっていた「だるま落とし」なんですが(笑) 高価なものじゃないからいいかなと。

親の要望、子どもの要望、どちらも尊重しつつ、誰も悲しい気持ちにならないようにするにはどうしたらいいのか、とクリスマスになると毎年考えています。でもこうやって考えることが大事なのかもしれないなあと思いました。

今年一年、コラムを読んでくれたみなさまありがとうございました。よいお年を! そして来年もよろしくお願いします。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。