「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第120回のテーマは「我が家の『思い出の味』ってなんだろう」です。

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「お袋の味」という話になると、我が家ではわりとセンシティブになります。なぜなら、我が家は母親が炊事を担当していないからです! 気にしているのは炊事を担当している「お父さん」のほう。お袋の味みたいな話をテレビなどでされると「ケッ、お袋の味ってなんだよ!! 」となってしまいます。「うちはオヤジの味だ! 」と……。

一方、炊事をやってない私は別に何とも思ってないのです。「はあ、まあどっちでもいいじゃない」みたいな感じで……。炊事をしていないほうは、男だろうと女だろうとその辺の問題への感度が低くなるような気がします。すみません。

マンガにも描いてありますが、私の母は非常に料理が上手で、日々美味しいご飯が出てくる家でした。それゆえ、初婚のときに「美味しいご飯を作るのは妻の役目! 」と思い込んでしまったようなところがあると思います。ところが、別に私自身は料理が好きでも家でいつも美味しいものが食べたいわけでもなかった……ということに、離婚してから気が付きました。

私自身が美味しいものを食べたいわけじゃないので、婚姻中、ずっと元夫の好きなものを作り続けた結果、離婚後は自炊が一切できなくなってしまったのです。そして、毎日カップラーメンを食べて生きていました。パートナーと付き合い始めのときもそういう状況で、それを見かねた彼がご飯を作ってくれるようになって、現在までずっと続いています。

「食育」という観点では、私の母は非常によい食育をしてくれました。しかし、「妻たるもの、美味しい食事を作らねば」という刷り込みはされても、「常においしい食事を家で食べたい」という根本のモチベーションのほうは全然育ってなかったんですね。

2人の姉たちは料理好きで、家族に美味しいご飯を毎日作っているので「親の教育」としては成功しているはずなんですけども、私に関してはどういうことなんでしょう? 親の教育がちゃんとしてても、本人の素質として「食べるものが適当でも平気」だった場合、こんなにもろくも崩れ去るなんて……。

私は別に料理自体は苦手じゃないのです。ただ、毎日何を食べようかと考えるのが苦手なんです! パートナーは「毎日適当な食事とかしてたら心が死んでしまう! 」という人で、私と暮らすようになってから「食べたいものがあるから」と毎日料理をするようになりました。私は鯖の味噌煮とか作ったことなかったんですけど、今やパートナーはスタンダードな料理も揚げ物もなんでもできるようになっています。すごい!

そしていくらなんでも私も、「別に料理が苦手じゃないし、子どもができたら料理するようになるのでは」と思っていたんですけど……全然やらないですね。予想の5倍くらいやっていません。

自分の母親がやってくれたことは、自分の子どもにやってあげたいという気持ちはあったんですが、いかんせん、息子も食に意欲のない子どもだったのです。食事を作る意欲のない母親と、食べる意欲のない息子……。お父さんが仕事でいないときは基本、コンビニへ行ってしまいます。最近のコンビニの冷凍食品は本当に安くて美味しいので、なんの罪悪感もありません。っていうかたぶん、普段から全然料理しないので罪悪感もないのだと思います。たまに息子が「オムライス食べたい」というときだけオムライスを作っています。

とはいえ、私自身「お袋の味」に関しては思い入れがあるものがあります。それは実家でお祝いのときに出てきたローストチキンです。これだけはたまに食べたくなるので、母親にレシピを聞いてクリスマスのときだけ私が焼いています。「食べたい」というモチベーションがあれば、料理はできるんだなと思っています。

が、偏食の息子は私の焼いたローストチキンは食べません……! 年に数回の母親の料理でもおかまいなし!! ちなみにパートナーはお菓子は作らないので、私がクッキーやマドレーヌなど焼き菓子だけは結構作るんですが……それもまったく食べません! 私が食べたいから作るんで、いいんですけど。

別に、母親が頑張って料理しなくても、普段から満たされてたら問題ないんだな~。だから食事を母親が作ろうが、父親が作ろうが、別に問題ないんだなと思いました。

子どもにとって家庭というのは安心できる場所であれば、家の中の役割がどうであれあんまり問題ないんだと思います。家族の仲が良くて、意思疎通ができて、ちゃんとご飯が食べられて、安心して眠れる。それができていれば、食育とかお袋の味とかあんまり気にしなくても大丈夫なんじゃない? という感じで我が家は運営されています。

将来、息子の「思い出の家庭の味」が何になるのかはわかりませんが、何になってもいいんだろうなと思っています。

ちなみにパートナーのお袋の味「豆腐ぐちゃぐちゃスープ」はまだ我が家の食卓に上っていません。見たことがないので絵にも描けませんでした。超気になります。そのうち作ってもらおうと思います。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。