「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第111回のテーマは「合理的なコミュニケーション」です。
前回「甘え方にはスパルタ指導」で、「ネガティブな甘え方とポジティブな甘え方」がある、という話をしました。どうして親しくなると、ネガティブな甘え方をしてしまうんだろう……と考えます。
前回は子どもから大人への「ネガティブな甘え方」についてでしたが、今回は大人から子どもへのネガティブなコミュニケーションについてです。
我が家のパートナーは、なにかと合理的でないことに腹を立てます。まあ、たしかに息子も私も「今、興味があること」に夢中になりがちで、時間にルーズなタイプです。私は息子が寝る時間がちょっと遅くなっても「まあ、これくらいだったらいいか」となりがち。パートナーはいつもそのルーズさにモヤモヤしています。
パートナーがイライラしがちなシーンはわりと決まっていて、寝る前や保育園に行く前などのルーティンワークの前です。こういう時に「もっと合理的に動いてほしい」と思う気持ちはわかります。私も息子に対して、朝自分で時間を見て行動してくれたらいいなと思ってはいるので……。
ただ、私は子どもの行動原理を「怒られるから○○しない」「怒られたくないから○○する」というようにしたくはないのです。「やる必要があるからやる」と理解させないと意味がないと思っています。
私としては、保育園は登園時間が多少ルーズなので「まあ、5分くらいいいか」と思ってしまうし(小学校はもっと時間にシビアなので、そうなったらやらざるを得ない)、寝る時間も同様です。
一方で、パートナーにとって「時間を守る」ことが必然なのか、それとも「きちんとした生活がしたい」という価値観なのか、と考えると現状としては価値観なんですよね。価値観の相違だったら、お互い落としどころを見つけてイライラしないでほしい。
とはいえ、パートナーが「時間をきっちり守る生活をしたい」と思ってくれているのは助かります。実際、いつも同じくらいの時間に食事を用意するなど、タイムキープをしてくれる。わたしはその労力がわかるので、感謝もしています。
でも、「自分は合理的である」と言いながら、子どもに対して「早くやりなさい! 」と感情的に怒って行動させるのは、はたして「合理的」なことなのか……。みたいなことを考えてしまいます。
たしかに子どもは、やらなくてはいけないことを「なんとなくやりたくない」と先延ばしにし、親に怒られない限り「まだいいんだ」という態度をとる……なんてこともあります。そういう時は適切に叱る必要があると思います。
でも、そういう適切に叱るのとは別に、忙しい時や疲れている時など、私も子どもに言うことを聞かせたくて「いいから早くやって!! 」と怒ってしまうことがあります。これって、「親から子へのネガティブな甘え」なんじゃないかと思っているんですよね。
だって、子どもは親の言うことを聞かざるを得ない。食事、睡眠、衛生、教育……すべてを親から得ているわけで、最終的に言うことを聞く必要があります。だからこそ、親は「何をしてもいい」という立場に、なろうと思ったらいくらでもなれてしまう。
それって、「親が子どもに甘えてる」っていうことだと思うんですよね。相手は反撃するのが難しい立場なのだから。そう考えると私は、「子どもから反撃されない」という立場に親が甘えていると感じてしまいます。
パートナーは、自分が他者にイライラしたり、感情を出して圧をかけがちである……ということは理解していて、それをやると円滑にコミュニケーションできないのでなるべくやらない、という行動を心がけてくれるようになっています。
でも彼にとって「合理的ではない」という状況になると、やっぱり感情的になりがちなんですよね。本人は努力しているし、実際に過去の振る舞いよりも改善しているので、そういうネガティブなコミュニケーションがより減っていくことを期待しています。
私自身も、疲れたり余裕がなかったりすると、子どもに対して感情的に怒ってしまうのですが、大体それは週末遊んだ後など子どもも疲れて感情的になっているし、お互い「ネガティブな甘え」をしてしまいがちです。
でも、大人と子どもどちらも疲れているなら、やっぱり大人のほうが頑張らないと不公平だと思うんですよね。子どもは体力もないし、先も読めない。本来気遣いだってできません。だから、大人は「反撃できない」立場の子どもに対して、踏ん張ってポジティブに振る舞わないといけないなあと思うのです。
ネガティブなコミュニケーションを発すると、お互いが険悪になり怒りが怒りを呼びます。第52回「ニコニコ楽しい家族であるための練習」でも書きましたが、子どもに対してネガティブな甘えをしないために、私は余裕がなくて子どもと険悪になったら、子どもに対しても「かわいくお願いする」とか「おもしろくお願いする」ようにしています。
いつもうまくいくわけじゃないのですが、自分が子どもに甘えないように意識しておくことで、子どものネガティブな甘えに対してもはっきり指摘して指導できると思っています。
子どもの成長に理想を掲げつつ、実現のためには親も理想に向かって練習したり改善したりしていかないといけないなあ……と感じています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。