「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第11回のテーマは「事実婚で浮気は心配じゃないの? 」です。

  • 事実婚で浮気されたらどうなる?

「事実婚って、相手が浮気したらどうするの? 」という質問、何回か聞かれたことがあります。

まず個人的な感覚から言うと「相手が浮気したらどうしよう」って考えたこと、初婚でも今の再婚でも一度もなかった……。パートナーの浮気の心配をする人のお相手は、そんな浮気なあんちくしょうなんでしょうか。

私の男性の好みは「不器用なタイプ」で、積極的に女性と距離をつめられるような感じの人じゃないので、あんまり心配したことがありませんでした。

という個人的な話は置いといて、「事実婚だと浮気されたときどうするの? 」という質問には「法律婚と同じように対処できます」と答えています。

法律婚だと、別れるときに揉めた場合、法律にのっとって処理できるのはメリットではあるのですが、事実婚でも別れるときに揉めに揉めた人が「家裁に行ったら解決した」と言っていたのを聞いたことがあります。

今回のマンガでは「家を出ちゃったら関係解消できる」と描きましたけども、実際は揉めたら法律婚でも事実婚でもそう簡単にはいきません。

そして、法律婚であっても別居が長く続いたり、「結婚の実体」がなくなったりすると、片方が離婚したくなくても、離婚できることもあります。外国人の滞在資格のために偽装結婚しても捕まっちゃいますし、なんだかんだいって大事なのは「実態としての結婚生活」なんですよね。

とはいえ、そういう質問をする人の気持ちもわからないではないのです。私も「結婚」したかった経験があるので……。「法律婚」して名前を変えると、なんだかとても「関係が約束」されたような気がしました。だから、早く「約束」してしまいたかった。「公的な約束が手に入れば、もう安心だ! 」と思っていたのです。初婚までは。

ところが、何の安心もできなかったんですよね。「この人と一生一緒に暮らす」ということに、全然安心できなかった。どれくらい将来のことや、私たちの生活のことを相手が考えているのかがわからなかった。「全然考えてないな」と思ったので結局離婚になってしまったのですが……。

私が結婚生活において求めていたものは、浮気しないとかお金とかじゃなくて「一緒に将来のことを考える」とか「当事者意識を持って生活する」とかだったのです。それを求めている場合「公的な約束」は全然役に立ちませんでした。

でもそれに初婚前から気がつけるほど「結婚」について知らなかったし、問題意識も持っていませんでした。

今、私たち夫婦が「公的な約束」に意味を感じられないのは、やはり「離婚経験」があるからです。婚姻届を出して、神に誓ったり人の前で誓ったりして、「一生一緒にいます」なんて大きな「約束」をしてみても、全然守れなかった。

そして「公的な約束を守る」ためだけに生活をしても意味がないと感じていました。

私たちは「夫婦は別れることがある」を前提として家庭運営を考えています。なので、家などの大きなモノは買わない。家財道具も各々が欲しいモノを買っています。というか「別れられない状態」になればなるほど、コミュニケーションが閉塞していきがちだと経験から感じているからです。

なので「いつでも別れる可能性がある」くらいの状態にしておいて、「別れたくない」から話し合うし、理解し合おうという方針です。

ちなみに、子どもの親権者は私になっているのですが、我が家は事実婚にするときに「姓」を父親と同じものにしたので、親権者も父親にした場合、何かあったときに私が息子の親であると証明するのが難しくなってしまいます。なので私は息子の親権者になることを望んでいました。

それについてパートナーは異論はなくスムーズに決められましたが、知人から「日本は事実婚だと共同親権がないから、親権者が連れ去りをした場合対処できないことがリスク。パートナーさんはよく了承したね」と言われました。しかしパートナーは「さるころはそういうことしないでしょ」と言って終わりでした……。

そして我々夫婦は「別れることもある」を前提としていると同時に、「一生同じ相手に同じ気持ちでいられるとは限らない」ということも共有しています。「夫婦の恋愛感覚」については次回に続きます。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。