「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第101回のテーマは「母子別姓歴5年 子どもと姓が違うけど」です。
我が家は事実婚で、母子別姓です。出産時に一時的に法律婚をして、3人同一の戸籍になったあとに私だけが戸籍を抜けて単独の戸籍を取得しています。なのでパートナーと息子が同姓ですが、日本は共同親権がないので息子の親権は私が持っています。
戸籍が別れていても母と子の関係は切れることなく相続権もあります(夫婦にはありません)。我が家は3人同居していて世帯は同一なので、自治体からは「家族」として扱われており、法律婚にかなり近い形の事実婚のスタイルです。
なんでこうしたか……をおさらい的に書くと「姓を変えたほうが元々の姓だった相手に対して従属した」というイメージが、この国では強すぎるからです。夫の姓に変えた妻は「従属している存在」だと思われることが多いです。まあ、簡単に言えば「奥さんは旦那さんに養われていていいですねえ」とか「旦那さんのお世話はちゃんとしてあげないと」とかそういうことを言われがちであるということです。
反対に妻氏婚をしただけなのに「婿養子?」とか「奥さんは資産家の娘なの?」とか言われることもあるそうで、名前を変えることが会社の吸収合併のごとく、まるで「従属の証し」のように言われることが多いわけです。
私達の結婚は「財布は別で、財産も共有しない」「どちらかがどちらかに従属しているわけではない」という結婚だったので、事実婚にしてどちらも姓を変えないという選択をしました。そのおかげか、初婚のときによく言われた「旦那さんがいるんだから、もうお金の心配はないね」とか言われることはありません。
正直言うとそれだけでも、すごいストレスフリー!!! 私は私の仕事でお金を稼いで生活していて、誰にも従属していないので、事実と違う認識をされないということが嬉しいです。
さて、そこまでが夫婦別姓を選んだ理由なのですが……。我が家は母子別姓です。これについては「イヤじゃないの?」とか「不安にならない?」とか言われることがたまにあります。結論を先にいうと「イヤじゃないし、不安ではない」です。だって、私は息子の母親であるという事実は揺るがないからです。
別に自分で産んだから……というだけの話ではありません。息子が生まれてから今日にいたるまで、毎日一緒に過ごして育ててきたからです。息子にとって母親は私しかいないし、私にとっても息子は間違いなく息子なので姓が違うということはあまり大きな問題にはなってません。
実際にやってみないとわからないなと思っていたのですが、5年間やってみて「『親権者』であるほうが重い」というのが実感です。とはいえ、同一世帯で世帯主、息子と同じ姓の父親であるパートナーは「親権者ではない」と思われる機会すらありません。
今までで唯一「親権者のみができる」ことだったのは息子のパスポートの発行で、それは私だけしかできませんでした。つまり、姓が違ってもサインができるのは私だけということ。パートナーがどうしても息子のパスポートを作らないといけない……という事態は起こらないので、やっぱり我が家では母子別姓も親権が片方にしかないことも、現時点では問題になっていません。
あと、子どものコミュニティにおいては「○○くんのママとパパ」なので姓がどうかとか気になることもないんですよね……。というか、私の場合は「水谷さるころ」というペンネームであることを隠してないので、ママ友コミュニティにおいては姓よりも「マイルくん(仮名)のママをなんて呼ぶか」という、下の名前のほうが問題になっているような気がします……。
私は38歳で初めて子どもを得たわけですが、息子が成人するころ……私は58歳です。普通に大学進学して社会人になる頃には60歳。……なんですが、今のご時世で60歳って、まだまだ働くしリタイヤって年齢でないですよね……。
しかも、私のあこがれは90代まで現役で仕事をしたやなせたかし先生やかこさとし先生など……! 「子育てが終わってからも、まだまだ時間はある!」と考えています。子育て終わってから30年くらいは働きたい。
そう考えると、実は子育てをしてる期間って人生の中のほんの一部なんじゃないかなあ……と思うようになりました。「息子が世界一大事であることは揺るぎないのですが、私の人生のすべてではない。私の人生の一部である」と考えています。
息子が大人になったら、息子の人生を歩むわけです。私は大人になってもべったりな親子関係というものに憧れはなく、社会人になったら年に2回くらい連絡くれたらいいなという感じです。 むしろ親にかまけてないで、自分の人生を生きてほしい。そして私は子どもが巣立ったら、私の人生を大事に歩みたい。
もちろん、大人になっても息子が困ったら助けるし、同時に親が困ったときに息子に助けてもらうこともあると思うんですけど、緊急時以外はほどよい距離が理想です。
そうなるために、子どものうちは揺るぎない信頼関係を築こうと、とことん向かいあっているつもりです。……パートナーには「妖怪甘やかしババア」と言われていますが……。「これで愛情不足って言われたら後は何をしたらいいのかわからない」くらいには愛情表現しているつもりです。息子が成長と共に好きなところに行けるようになってほしいし、私はそのよりよい踏み台になりたいと思っています。
初婚では姓を同じにしても、信頼関係を築くのに失敗したバツイチ同士の我が家。夫婦が「名前が同じ」ことよりも、お互いが信頼できるか相手かどうかという「事実」を大事にするというのが我が家の理想です。そしてそれは親子間でも同じことだと思っています。
息子と姓が違っていても信頼関係が構築できるほうが大事。信頼関係があれば、いつか遠く離れていっても大丈夫。そんな親子になりたいと思いながら別姓の親子をやっています。
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