FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。3人のお子さんを育てるシングルマザーの相談者。「子どもたちに習い事をさせたいけど、教育費が足りるのか心配です」という相談です。今回は、AFP資格を持つ女性のお金の専門家・矢野舞美さんがアドバイスします。

  • ※画像はイメージ

◆相談者さんのプロフィール

相談者

あおさん(仮名/女性/40歳/会社員)

家族構成

小学3年生/女の子、小学1年生/女の子、5歳/男の子

◆お悩み

現在、会社員をしながら3人の子どもを育てています。忙しい毎日に追われて、節約はしていても夕飯はスーパーの惣菜で済ませたり、子どもに欲しいものを買ってあげられなかったりと我慢させることも多いです。子どもたちに「申し訳ないな…」という気持ちです。

上の2人が小学生で、そろそろ習い事もさせてあげたいと思っています。日々の生活費と将来の教育費のことなど、「今のままで大丈夫なのかな?」と心配です。子どもたちには、のびのびと好きなことをして欲しいと思っています。これからかかる教育費のこともありますし、どれくらい習い事に費用をかけて良いかアドバイスをいただきたいです。

◆あおさんの家計収支

収入

手取り: 25.4万円

支出

住居費が6万円、光熱費が2万円、通信費が1万円、車関連費2万円、食費・日用品費5万円、保険料1.8万円、その他4.7万円、貯蓄2.9万円。

現在の貯蓄額

普通預金: 200万円
定期預金: 300万円
合計: 500万円

年間収入

ボーナスは年間30万円

ボーナスの使い道

車検代や住宅の維持費、残りは貯蓄へ

加入保険の内訳(月額保険料)

・相談者の医療保険・がん保険 8,000円
・学資保険(18歳満期/200万円)×1人分(第1子) 10,000円

習い事の希望

水泳教室、英会話、ピアノ教室、ダンス教室などを検討中

◆FPからのアドバイス

3人のお子さんをひとりで育てながら、家事や仕事もされて、とてもがんばっていらっしゃると思います。そんな中でも将来のために、貯蓄に回すことができているのは素晴らしいことです。これからお子さんが成長するにつれ、教育費の支出が増えていきます。先を見据えて今から計画的に教育費を貯めていきましょう。

アドバイス1:公的制度を活用し貯蓄を増やす

文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」によると、小学校から高校まで公立の学校へ通う場合、学習費総額は約477万円です。学習費総額には、子ども一人当たりの学校教育費、学校給食費、学校外活動費が含まれます。さらに、国立大学へ進学した場合は約243万円、私立大学の理系に進学した場合は約543万円が必要となってきます。

あおさんの場合、シングルマザーで児童扶養手当を受給しているので、就学援助を受けられるでしょう 。自治体によって内容が異なる部分もありますが、入学準備金や修学旅行の費用などのまとまったお金だけでなく、学校給食費や学用品費の援助もあります。

そのため、お子さんが高校生になるまでは学習費等の支出が抑えられる時期でもあり、公的制度を活用しながら教育費を貯めていくチャンスとなります。それぞれ子ども名義の口座をつくり、定期預金で貯めていきましょう。利息は微々たるものですが、3人分の教育費を貯めることに意識が向き、確実に増えていくのを実感できます。

小学校から大学まで、すべて国公立の学校に通うと想定した場合、約720万円が必要です。まずは、720万円を目標額として貯めていくと良いでしょう。

お子さんが大学や短大、専門学校へ進む際は、私立や国公立など進路によってかかる教育費は異なり、県外へ行くか県内から通うのかなど、条件によっても必要となるお金は変わってきます。お子さんと進路について親子でしっかりと話し合うことが大事ですね。

アドバイス2:情報収集が節約の鍵

シングルマザーの場合、お母さんがお子さんの勉強をみる時間の確保が難しく、学力に対しての心配を抱える方も多いです。学習塾に加え、スポーツ系や教養などの習い事へ通わせるとなると送迎が必要か、保護者の参加度合いはどうなのかも悩みの種となるでしょう。

公立の小学校へ通う場合の年間学習費総額は、約32万円です。 学習費総額のうち学校外活動費はどれくらいなのか、文部科学省の「平成30年度子どもの学習費調査」をもとに内訳を見てみましょう。

  • ※文部科学省:「平成30年度子どもの学習費調査」をもとに筆者作成

年間の学習費総額のうち、学校外活動費は約21万円、その中でも自宅学習や学習塾・家庭教師などに費やす割合が全国的に高くなっていることがわかります。

現在、シングルマザーのお子さんを対象とした無料学習を支援する団体もあります。 オンラインで学べるケースも増えているので、習い事の費用を抑えるための選択肢の一つとして考えると良いですね。シングルマザーを対象とした学習支援は様々です。お住まいの地域の自治体へ相談するなど積極的に動いてみましょう。

近年、英会話や音楽教室なども、オンラインで学べる環境が整ってきています。家事・子育て・仕事とがんばるシングルマザーにとっては、送迎の必要もなく大きな負担軽減となるでしょう。インスタグラムではリアルな発信も多く情報収集のツールとして活用できます。お子さんの習い事にかかる費用を抑えて、教育費を早い段階で貯めていけるでしょう。習い事の支出を抑えて子どもたちの学びの場を整えられると良いですね。

習い事の選択肢は様々ですが、お子さんの「好き」や「興味関心」に目を向けてみましょう。子どもは「できた?」という積み重ねで自信がつき、チャレンジ精神が向上していきます。「ちょっと難しいかも…」と思うようなことにもどんどん積極的に関わるようになっていきます。子どもが自立していくとお母さんも子育てに余裕が生まれて自分の時間もできるようになっていきます。あれもこれもと思わずに、教育費を貯めながらできる範囲で、習い事を選択していくことも大事ですね。

◆相談者からの感想

漠然としていた3人分の教育費がどれくらいかかるかをわかりやすく教えていただきました。3人分の教育費を知り不安はありますが、コツコツと貯めていきたいと思います。

習い事については、子どもが3人もいて、私ひとりでは「諦めるしかないかな?」と思っていました。今回、シングルマザーを対象とした支援やオンラインでの習い事についても教えていただき、子どもたちと習い事の話をするのが楽しみになりました。同じシングルマザーだったので、とても相談しやすく、気持ちを汲み取っていださりとてもうれしかったです。ありがとうございました。