FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は「昨年結婚しこれから住宅購入とお子さんの出産を予定している」と話すYさん(35歳・妻と2人家族)の家計相談に対し、米国のコーチング資格を有し、お客さまからのヒアリングを大事にしながらFP相談に取り組んでいる佐藤彰さんがアドバイスしました。
◆相談者さんのプロフィール
相談者Hさん
男性/正社員/35歳
東京都/賃貸(近いうちに戸建てを購入予定)
家族構成
妻(専業主婦/32歳)、子ども なし
◆お悩み
昨年結婚し、今後は子どもが欲しいと考えているので、3人家族で暮らしていきたいと夫婦で話し合っています。
ただ、子どもの教育にどれくらいお金がかかるのかわかりません。今の家計からどのように変化するのかイメージがつかず対策が取れない状況なので、アドバイスをいただきたいです。
なお、今は賃貸物件に住んでいますが、子どもと3人暮らしになることを想定して、今年郊外に物件を取得する予定です。
◆家計収支
支出
支出額は40.2万円
収入
月間の平均収入は55万円
現在の貯金額
現在の貯金額は1,000万円となっています。
◆FPからのアドバイス
アドバイス1:住宅資金の設計が最優先
現状、家計は黒字で、毎月コンスタントに投資もして着実に資産を作られており、大きな問題はありません。
しかし、今後どのような住宅を購入するかでマネープランが大きく変わってきます。ですので、お子さんの教育費の前に住宅資金の設計を固めましょう。
そのためには、お子さんをどのように育てたいか、旦那さま自身今後どのように働きたいか、奥さま自身は何を大事にして日々の生活を送っていきたいかなどについて、ご夫婦でしっかり方針を話し合うことが必要です。
この点、現状では住宅取得の際の頭金をある程度用意することができそうですが、今後のお子さんの出産で想定外の出費が発生する可能性もあります。また、ご夫婦の老後生活資金のことも考えることも重要です。
こういったことも想定して、銀行が提示するローン金額をフルで借りるより、多少ゆとりを持ったプランで住宅ローンを組むのがおすすめです。
住宅ローンの金利については、比較的契約時の金利が低い変動金利型を選択される方が多いです。
ただ、昨今急激な物価上昇に伴い金利は上昇傾向にあり、住宅ローン金利も今後上がっていく可能性も否定できません。
金利変動リスクが気になる場合、契約当初の金利は変動型より高めですが、固定金利型で住宅ローンを組むのも一案です。固定金利型、変動金利型の両方のパターンを合わせてシミュレーションした上で、金利パターンも選択してみてください。
アドバイス2:教育費の平均値を把握する
まだお子さんが生まれていないため、今後どれくらいの教育費がかかるか現時点で計算するのは困難です。
その場合は、一般的な平均値をまず把握しましょう。
文部科学省等のデータをまとめると以下の通りです。
このように、学校が公立か私立かでだいぶ学費が変わってきます。特に小学校や中学から私立に入学となると、早い段階でまとまった資金が必要になります。
今の時点で綿密なシミュレーションができなくても、平均値からある程度の予想を立てながら教育費の用意することは可能です。その後のお子さんの成長に伴ってより正確な資金計画が作るという2段構えで教育費を用意という形です。
まずは平均値から大まかな計画を立て、時を経て変更が生じた際に柔軟に資金計画を変更できるにしながら、徐々に計画を具体化させていくといいでしょう。
アドバイス3:資産運用や保険の見直しする
住宅取得をする際に、団体信用生命保険に加入すれば、旦那さまに万が一のことがあった場合、住宅ローン返済は不要になります。その分、住宅取得をすれば、賃貸物件に住んでいる今よりも、残された家族のための資金としての必要保障額が減少します。
そのため、住宅取得後に保険の見直しをすることで、保険料を削減できる可能性があります。ここもぜひ検討してみてください。
また、毎月10万円の積立投資をされていますが、今後は住宅取得および出産とさまざまな費用がかかってきますので、金額を減らすことも検討した方がいいでしょう。
現時点でもそれなりに金融資産を持たれているため、住宅資金の設計次第ではいったん全額新規積み立てをストップするのも一案です。
◆相談者さんの感想
さまざまな課題がある中で、頭の中で整理できていなかったことに気がつきました。複数の課題をどのような順序で考えていったらいいかわかってよかったです。ありがとうございました。
住宅ローンはもっと多めに借りようと思っていましたが、子どもの教育費も考えた上で借り過ぎに注意しなきゃなと感じたので、もう一度プランを作り直してみます。
資産運用では、漠然と老後の資産を作らなくてはと考え投資していたのですが、よく考えると実は目的をしっかり定めず運用していることに気がつき、驚きました。