どうも、松田洋昌です。あ、知らないですよね…吉本興業にお世話になっておりますハイキングウォーキングというコンビのハンサムの方です。は? 何言ってんだコイツ! 知らねぇし! と思った方、正解だと思います。えっと、卑弥呼じゃない方! と言われがちですし、いるんだかいないんだか分からないですし、まぁ見える人には見える背後霊みたいな芸人なもので。しかし、ここではあえて「ハンサム」でキャラを立たせたいと思います。

なぜならば…今日から「俺がモテたい料理」の連載がはじまるからです。毎回、ホレちゃうんじゃない? というお料理レシピを紹介していきます。その名も、ホレシピ! 実際は、モテるおじさんというのは仕事ができるに限るんでしょうが…。そこもふまえてこんな時、こんなシチュエーションで、こんな料理作ったらモテるんじゃねぇか? 作られた人はホレるんじゃねぇか? というのを、自分勝手な目線だけで提案してみよう! というわけです。といっても、私…バリバリの既婚者なので、完全な妄想劇場になりますが、その辺はツッコミながらお付き合いしていただけたら幸いです。はい。


松田洋昌(まつだ ひろあき)
1976年10月21日生まれ。富山県出身。身長173cm。AB型。NSC東京校2期生。2001年に鈴木Q太郎とお笑いコンビ・ハイキングウォーキングを結成。Q太郎のコーラ一気飲みネタと「卑弥呼さま~!」の一発ギャグで一躍有名になり、以後バラエティ番組を中心に活躍している。妻は女優の安藤聖。
撮影:多月宏文(Sketch)

都内の広告代理店に務める37歳独身、本多真也。新卒で入社し、今年で15年目を迎える。32歳で係長、35歳で課長に昇進し、今は2つのプロジェクトを仕切るリーダーだ。同期の中では早い出世だと思う。人並みに恋愛はしてきたが、日々の仕事に追われ婚期は逃してきた。自宅は、豊洲駅から徒歩4分のタワーマンション。43階の2LDKだ。リビングから一望できる東京湾が気に入って、売りに出されてすぐに購入した。

とある休日、チームの結束を固めるため、プロジェクトの部下たちを自宅に呼んでホームパーティーを開いた。皆をもてなす料理は、いつもの休日より早く起きて用意した。前菜には、生ハムとルッコラのサラダ、モッツァレラチーズとトマトのサラダにマグロのカルパッチョの3種。そして、いろいろな野菜をトマトソースで煮込んだカポナータ、いさきをハーブとローズマリーでグリルしたもの、子牛のカツレツ。メインのパスタは仕込みだけしてあり乾杯した後作り出す。料理が並べられたテーブルはパッと見その辺のイタリアンレストランと変わりない。

先に到着したのは6年目の丸田茂雄、3年目の島村勇人、7年目の河本恵の3人。比嘉と佐藤は遅れているようなので、先にビールで乾杯をした。テーブルの料理を勧め、食べてもらっている間にパスタを調理。キッチンから皆を見ると、料理の写真を撮ったりして楽しそうに食べてくれているようだった。頃合いを見てでき上がったタコミンチとオリーブのトマトソースパスタをテーブルに出した。3人は「えぇ!?」と感嘆の声をあげ、互いに顔を見合わせていた。そんなパスタ作れちゃうんですか!? といったところだろうか。

しばらく歓談することにして自分も椅子に座った。会話は、仕事のことは抜きにして普段あまり話さないプライベートな話を聞いてみた。しかし、遠慮しているのか、皆口数が少ない。恐らく、そういった類いのことは聞かれたくないのだろう。部下の気持ちをすぐくみ取るのもリーダーとしての大事なスキルだ。切り替えようと、「さて、デザートのティラミスでも作ろうかな」と席を立ちキッチンに向かった。

「え? 課長、ティラミスも作れるんですか?」と河本恵が興味有り気にキッチンに入って来た。チーム内で1番気が利き、控えめで美人。理解力にたけ、こちらから説明をするまでもなく、してほしいと思うことは言う前に全てやり終えているようなタイプだ。「まぁな」「えぇ~教えてください」「ん? あぁ、いいよ」「あ、でも難しいですか?」「いや、全然簡単だし、5分もあればできちゃうよ」「そんな短時間でできちゃうんですか?」「あぁ。まぁ、見てて」とボールとホイッパーを用意して、冷蔵庫からマスカルポーネと生クリームを出した。

「課長、そのマスカルポーネって何ですか?」「ティラミスに使うクリームチーズだよ」と言いながらパックを開けて中身をスプーンでボールに出した。「え? 全部入れちゃうんですか?」「うん。これは分量をいちいち量らなくてもできるレシピなんだ」「へぇ?! じゃあ面倒くさくないですね」「そうなんだよ。この容器から全部出したマスカルポーネ100gに、生クリーム200ccのパックを全部入れちゃうわけだ」「はい」「で、徐々に混ぜていく」とホイッパーで混ぜはじめた。ボールの中のマスカルポーネと生クリームが飛びちりながら混ざり合っていく。「すごい、マスカルポーネが溶けて無くなっちゃいましたね」「うん。こうなったら手を止めて、スプーン大さじ4杯の粉糖をここに入れる」

「ふんとう?」「粉砂糖のことで、大体どこのスーパーでも売ってるよ。よくお菓子に使われてる」「なるほど」「で、ここでよーく混ぜる」再びホイッパーを力一杯回す。しばらくすると「あ、課長! だんだん固くなってきましたね」とボールの中の状態を見て河本は言った。「ん…もうちょっと固くした方がいいかな」とさらに気合を入れて激しく混ぜた。そして、「このくらいかな」とホイッパーをボールから持ち上げて見せた。「結構な固さまでやるんですね」「うん。で、卵を」と冷蔵庫から卵を取り出し、黄身と白身に分けた。そして、黄身の方をスプーンで解きながら、ボールの中へ3回ぐらいに分けて流し込みまた混ぜた。

「何で何回かに分けるんですか?」と河本は不思議そうに聞いた。「一気に入れると緩くなっちゃうからだよ」と本多は答えながら、黄身が混ざったところで手を止めて「よし、これでほぼ完成」と言った。「え? もう完成ですか?」「あぁ。後は盛りつけ」「すごく簡単ですね…本当に5分だ」と腕時計を見た。「まぁ、本格的なのは、白身でメレンゲを作ってそれを混ぜてふんわりに仕上げるんだ。で、グラスにスポンジ、ラム酒、エスプレッソ、ココアパウダーで層を作るんだけど。皆を待たせるのも悪いから、今日は簡単に5分でできちゃう手抜きティラミスにしたんだ」と説明すると、河本からは「あぁ」との返事。続けて盛りつけに取りかかった。スプーンでボールの中のティラミスをクルりと取り出しお皿にちょこんと載せる。

「うわぁ! なんかかわいいですね!」「おぉ、いい感じだな…で、茶こしでココアパウダーを粉雪が舞うように振り落とした。「すごい、すごい」と興奮して河本は声が大きくなった。「よし、完成」ティラミスはいつも通り奇麗に仕上がった。「ちょっと、さっきから何2人で盛り上がってんすか?」とダイニングで談笑していた丸田と島村がキッチンに入ってきた。

「うわっ! すげっ! これ課長作ったんすか?」と丸田が言い「すげぇ! 何か、白い芋虫に泥がかかったみたいですね!」といつものようにデリカシーのないことを島村は言った。スマフォで写真を撮ったりしてひとしきり盛り上がってから、人数分盛りつけをして、それを皆で食べた。「おいしい!」と満面の笑みで河本は言った。他の2人は「あぁ、うまいっすね」と中途半端なリアクションだった。まぁ、男はそんなもんだろう。河本の笑顔が見れただけでも満足だ。

コーヒーを入れようと席を立つと「課長、じゃあそろそろ帰ります」と丸田が言い出した。「じゃあ、俺も」「私も」と島村と河本もそれに続いた。「もう帰るのか? まだ、来て1時間ちょっとしかたってないだろ。それに比嘉も佐藤もまだ来てないし」「すみません。この後、用事を入れちゃってまして」「あ、俺もなんですよ」「すみません、課長、実は私も」と3人共時計を見たり、スマフォをいじったりして困った顔をしていた。

空気を読み取り、無理に引き止めるのをやめて、「今日はわざわざありがとうな。今度またゆっくり遊びに来てくれ」と玄関まで送り出した。「課長、今日はごちそうさまでした」と3人は足早に帰っていった。島村はいいとして丸田と河本はよほどの用事があったのだろう。皆が帰った後、本多はリビングで1人コーヒーを飲みながら「まぁ、これでまた皆も頑張ってくれるだろう。しかし、比嘉と佐藤はどうしたんだろう…」とひとりごちた。

本多の家を後にして、丸田と島村と河本は豊洲駅に向かって歩いていた。丸田は「あぁ~家から料理から話すことまで全部うっとうしかった~」と我慢を解放するように言った。「あいつ、自慢したいだけじゃないですか」と島村は賛同した。「本当だよ、料理も全部微妙にまずかったし」「俺、ほとんど手つけなかったっすわ」「量もハンパなかったしな」「そうっすよ、柔道部の練習後じゃないんだから」と愚痴が止まらない後輩たちを、河本が「ちょっと2人共! もうちょっと食いつきなさいよ、課長の料理に」としかる。島村が「ていうか河本さん、よくあんなに興味ありげにできましたね」と感心すると、河本は「あんたらが露骨なのよ、フォローが大変…」とけだるそうに言った。

「でも、比嘉さんと佐藤どうしたんすかね?」「知らん、あぁ、本多マジ勘弁だわ~」などと本多への愚痴は止まることはなかった…。前日の社内、比嘉と佐藤はデスクで話していた。「比嘉さん」「何だよ?」「明日、課長のホームパ」「行かねぇよ、バカ」「ですよねぇ」

完。

■ホレシピまとめ

わずか5分で完成するティラミス。手抜き調理ながら、"無駄を省いている"というスタイルがスマートさを増大させ、女性の心をわしづかみ…。また、ホームパーティなどでは、他を差し置いて意中の女性とイチャイチャできるというメリットも。


といったわけで第1話が終わりました。文章表現が下手なところはひとつ大目にみていただいて…。今回は、うっとうしい上司が料理することでモテるのか? というのが焦点でした。部下たちは文句言ってましたが。中には好きな人がいるんじゃないかなって…。さて、こんな感じで妄想シーンを交えつつレシピを紹介していこうかなと今のところ思っております。どうなることやら…。では、1回目のホレシピはここでお別れです。またお会いしましょう、松田でした。

■今回の材料!

・マスカルポーネ 100g

・生クリーム 200cc

・粉糖 40g

・ココアパウダー 適量

以上。