本連載ではビジネスシーンで陥りがちな誤用表現などを取り上げている。第10回はビジネスパーソンの1日を通じて、誤用の多い言葉・慣用句を紹介していく。

雑談もビジネススキル

例えば商談の始まる前、挨拶代わりに天気の話題に触れることは珍しくない。そこで、まずは「雨模様」という言葉を取り上げよう。

「本日は、あいにくの雨模様ですね」

このとき外は「小雨が降ったりやんだりしている様子」だろうか、「雨が降りそうな様子」だろうか。正しい意味は後者だが、間違えて使っている人が多い。つまり降りしきる雨を見つめながら「雨模様ですね」とは言えないので注意したい。

さて商談において、要点を的確にとらえた意見が出た。そんなとき……

「的を得た意見ですね」

この表現、実は間違いで、正しくは「的を射た意見」。これも言い間違える人が多い。

追記:2017年7月26日
■ 「的を得る」について
本原稿では、文化庁の平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要をもとに「的を得る」を本来の言い方ではないとしていますが、三省堂国語辞典 第7版では、それまで「誤用」としていた「的を得る」について誤用ではないとの見解を寄せています。

ところで商談において、先方とはどうあっても折り合いが付かなかった。帰社して、上司にその由を報告する。

こんなとき……

「取り付く暇もありませんでした」

と言いがちだが、これもよくある言い間違い。正しくは「取り付く島もない」である。意味は「話を進めるきっかけが見つからない。何も頼りにするものがない」。海に漂流してしまい、流れ着く島も見つからない、そんな状況をイメージできれば、以降は言い間違えることもなくなるだろう。

ビジネスシーンでは何気ない雑談から話が盛り上がり、商談に弾みがつくことがある。雑談によって相手を知ることもある。その意味では、雑談力もビジネススキルのひとつと言える。話のタネは、色んなところに転がっている。「雨模様は、雨が降りそうな様子を表した言葉なんですよね」なんて話題も、雑談の取っ掛かりとしては良いかも知れない。