地方出身者が地元の料理を食べたくなったら駆け込める、同郷の人との触れ合いに飢えたときに癒してくれる、そんな東京にある“地方のお店"を紹介していくこの企画。コロナ禍の昨今、せめておいしい地方の物を食べて各地を旅行した気持ちになりたい! という他県のあなたも必見です。
栄えある1回目は高知県。地理に詳しくない方向けに説明すると、四国に南西に位置する横長い県ですよ。「最後の清流」四万十川を有し、竜馬がカツオでよさこいぜよ。だいたいこんな認識です。また高知は酒飲みの多いことで知られ、総務省が出している「家計調査にみる品目別支出金額及び購入数量の都道府県. 庁所在市別ランキング(二人以上の世帯、平成23年)」では、「飲酒代(外食)」の年間支出金額が平成21年から全国1位なのだそう。
そんな高知で愛されるご当地グルメのひとつが「餃子」です! 今回は、高知餃子を東京でも食べられる赤坂の「高知屋台餃子一屋」さんにお邪魔して、その魅力をさぐってみました。
高知県の餃子はひと味ちがう……!
そもそも高知では、餃子はお酒の〆として屋台の餃子屋さんで食べるものなのだそう。一般的に思い浮かべる餃子よりも小ぶりで、野菜多めの餡を薄めの皮に包み、油を多めに使って揚げるように焼き上げるのが特徴です。
パリパリと香ばしく軽めの食感となっており、飲み会のあとでもおつまみ感覚でぺろりといけてしまうのだとか。餃子というと、有名な宇都宮や浜松のようにおかずとして大量に消費するイメージですが、高知には異なる餃子文化があるんですね。
そのうえ近年流行りの羽根つき系や肉汁系でもない独自のスタイル。餃子の奥深さを感じさせます。
では、さっそく食べてみましょう。人気メニュー「高知屋台餃子 焼餃子」(480円)は、毎日手作りしている特製の餡を、オーダーを受けてから包み始めるのが特徴。餡作りから、包み、焼き、どの工程も味に大きく左右するので、細部に至るまで気を抜けないのだそう。美しい焼き上がりに惚れ惚れしつつ、タレは店長の小野誠幸さんからオススメいただいた醤油2:酢1:ラー油1さじでいただきます。
焼きたての熱々を口の中に放り込むとサクサクとした食感の向こう側に、野菜とお肉のうまみが一気に広がる味わい! そこに高知の老舗・大高醸造さんの濃い口醤油と、特製ラー油のビリ辛アクセントが完璧にキマっています。サクサクパリパリとしているのでスナック感覚でいくらでも食べられてしまう。なんて危険な食べ物なんだ……。
ここでトッピングの「生レモン汁」(50円)を投入。揚げ物っぽさもあるこの餃子に合わないわけもなく……!? 食感はしっかり残しつつ、さっぱりいただけるミラクルな食べ合わせ。滑らかで豊かな味わいの餡の輪郭がより鮮やかに浮かび上がります。
新鮮な野菜といただく高知のソウルフードたち
一緒に高知ではおなじみのおつまみ「ちくきゅう」(380円)をオーダー。名前からするに「ちくわにきゅうりが入ってるアレ」をイメージしていたら、きゅうりまるごと一本突っ込まれたちくわが登場。かなり豪快なビジュアルです。
口に放り込んでかみしめた瞬間、よくある1/4程度にカットしたきゅうりをちくわに詰めただけのものでは到底得られない力強い歯ごたえ。口いっぱいに広がるきゅうりの瑞々しさ。ちくわも普段食べる物より密度が高く味わいも強い。きゅうりに負けない主張の強さでした。
さらに高知の野菜のおいしさを楽しめるオリジナルメニューがあるというので、そちらもオーダー。「一屋の肉味噌」(580円)は、高知県産のピーマンに肉味噌を包んでいただきます。
甘じょっぱい少し濃い目の味つけがピーマンの爽やかな苦みとシャキシャキとした歯ごたえにマッチした、おつまみにちょうどいい一品。寄せては返すうまみと爽快感の波状攻撃。人気メニューというのも頷けます。
高知屋台を東京で楽しもう
お店は高知の老舗紳士服メーカー「一や」が、東京で高知の餃子を広めたいという気持ちで2017年10月3日にオープン。本場高知の屋台を感じられるようなお店作りを目指しつつ、カツオ、ニラ、生姜、ミョウガ、ジャコなど高知の食材が楽しめるメニューでお客さんをもてなしてくれます。
「特にニラやミョウガは、高知が全国で1位の生産数を誇るものなので、外せない食材です」と店長の小野さん。ドリンクメニューには、高知の酒蔵から日本酒4種と焼酎4種に加え、ゆずの生産で有名な馬路村のゆずジュース「ゆーず」を使用したドリンクが並びます。
飲んでも食べても高知の味覚が満載。東京の真ん中、赤坂で働いているエネルギー溢れる方々が、仕事帰りの時間過ごす地元密着型の同店。"いごっそう"なあなたも"はちきん"のあなたも寄っとーせ。
<店舗情報>
「高知屋台餃子 一屋」
住所:東京都港区赤坂4-2-3 ディアシティ赤坂一ツ木館208
営業時間:[平日]17:00~翌3:00、[土、祝] 17:00~24:00
定休日:日曜日
アクセス:東京メトロ千代田線「赤坂駅」から徒歩5分、銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」から徒歩5分
※価格は全て税別
古屋敦史
取材・文=古屋敦史、構成=小山田滝音(ブラインドファスト)