普段の生活から、旅行先での移動手段など、さまざまな場面で役立つタクシー。便利な移動手段だけではなく、ほっこりと心温まる場面に出会える場所でもあります。
この連載では、タクシーに乗った時の「ほっこりした」読者の体験談をマンガで紹介。タクシーにまつわる何気ない日常のエピソードをお届けします。
タクシーでの出会いが教えてくれた、人の温もり
夜の街は静まり返り、タクシーの車内には柔らかなラジオの音が流れていました。仕事を終えた帰り道、疲労感と共に車に乗り込んだ私は、数分走ったところで大事なことに気付いたのです。財布がない。
「どうしよう……」胸の中が冷たくなる思いで運転席の後ろに座ったまま、言葉を選ぶ時間が過ぎる。やがて覚悟を決め、運転手にそのことを告げました。
「すみません、財布を忘れてしまったようです」
ミラー越しに目が合いました。初老の運転手の顔は険しくもなく、驚きの色も薄かったです。ただ静かに微笑みを浮かべて言いました。
「そんなこともあるよね。今度でいいよ。ここに名刺の住所を書いておくから、後で送ってくれればいい」
その言葉にどれほど救われたか、恐怖と恥ずかしさが混ざり合っていた私の心は、不思議と落ち着きを取り戻しました。彼の名刺を受け取り、目的地まで無事に送り届けてもらったのです。
翌日、約束通り封筒に現金を包み、お礼の手紙とともに運転手の住所に菓子折りを持って訪れました。玄関先で再び顔を合わせた彼は、笑顔で迎えてくれました。
「お菓子なんて気を遣わなくてよかったのに」と軽く頭を振りながらも、その優しさは変わりませんでした。
人は困難に直面した時、誰かの善意に触れることがあります。その瞬間こそが、人生の中で最も心に残るものになるのでしょう。
調査時期: 2024年6月14~15日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 300人
調査方法: インターネットログイン式アンケート