"掛け捨て"というと、お金を捨てるようで、なんだかソンな気がするという人がいるようですが、実際はどうなのでしょうか?
死亡保険。掛け捨てタイプが"定期保険"、貯蓄型の代表が"終身保険"
保険の対象となる人(被保険者)が「亡くなったらいくら」という形で保険金が支払われる死亡保険。その掛け捨てタイプが"定期保険"です。例えば、契約期間が10年だと、その間に被保険者が亡くなったら、契約時に決めた死亡保険金が支払われますが、亡くならなければ何も支払われず、払った保険料は返ってきません。
一方、掛け捨てでない貯蓄型の死亡保険の代表が"終身保険"。被保険者が亡くなるまで保障が続くので、いつかは必ず死亡保険金が支払われ、途中で解約した場合は、解約返戻金が支払われます。
この仕組みだけ見ると、掛け捨てはソンなように思えますよね。では保険料を比べてみましょう。
35歳の男性が、亡くなったときに1000万円が支払われる保険に入るとしましょう。ある保険会社の例だと、契約期間10年の定期保険の保険料は2810円。それに対して終身保険は2万5,520円(60歳払込満了の場合)と、とても大きな差があります。
保険会社のほうから見ると、定期保険は保険金を支払う確率が低いので保険料を安くすることができますが、終身保険はいつか必ず保険金を払わなければならず、それに見合った保険料を積み立てていく必要があるので、このような大きな差が出てくるのです。
死亡保障の保険は、一家の大黒柱に万一のことがあったとき、残された家族が経済的に困らないようにするためのもの。小さい子どもがいる人は、自分が亡くなったとき、子どもの生活費や教育費を残さなければならないため大きな保障が必要です。でも、子どもが大きくなるにつれて残すべき金額は減っていくので、死亡保障の必要額も少なくなります。 つまり、大きな死亡保障が必要な時期は限られるわけです。であれば、保険料の安い定期保険で備えるのが賢いといえるでしょう。
終身保険などの貯蓄型は、支払われた保険料を保険会社が運用します。かつてのように金利が高かったころは高い利率で運用されたため、保険が貯金にもなりました。でも今は低金利なので、保険の貯蓄性は大幅に低下しています。また、貯蓄型の保険の運用利率は、契約したときのものが契約が終了するまでずっと続くので、今のように金利が低いときに加入すると、この先、世の中の金利が上がっても、低い金利のまま20年あるいは30年以上も運用されることになってしまいます。
今は保険が貯蓄になる状況ではありません。
医療保険は、基本的に掛け捨てタイプ
医療保険は、「入院1日当たりいくら」という形で給付金が受け取れる保険で、これは基本的に掛け捨てタイプです。
ただ、中には一定期間、給付金の請求をしなかった場合に"健康祝い金"や"健康ボーナス"といった名前でお金が支払われるものがあります。
一見、おトクに見えますが、ボーナス分は保険料に上乗せされています。つまり、自分で払ったお金を自分で受け取るだけの仕組みなのです。そのうえ、受け取れる金額は、上乗せされた保険料の合計と同じか、それより少ないのが普通。それだったら、金利が低くても、定期預金にしておいたほうがトクです。
このように、保険は死亡保険も医療保険も「必要な保障を買う」と考えて、掛け捨てタイプを使うのがリーズナブルといえます。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。
http://www.m-magai.net/