自動車の安全技術が進み、自動運転の車が走る日もそう遠くない未来で実現する―― そんな時代がやってきた。でも、自動運転と聞いて気になるのは万が一事故が起こった時のことです。過失の矛先や保険の適応範囲など、実際のところどうなっていくのでしょうか?
既に進んでいる自動車技術とそれに伴う保険の変化を知ることで、そのまた先の未来を予測してみましょう。
自動車の安全技術の発展と現状
まずは現状どのような安全技術が実用化されているかを見てみましょう。
実は昨年、自賠責保険の保険料が値下げとなりましたが、これは自動車の安全技術の発展により事故が減ったことが理由です。
そして、現在実用化されているASV(先進安全自動車)技術は以下の通り。
- 追突被害軽減ブレーキ
- レーンキープアシスト
- ESC(横滑り防止装置)
- 駐車支援システム
- ふらつき警報
- ACC(定速走行・車間距離制御装置)
この他、自動運転車の実用も本格化し、アクセル・ブレーキ・ハンドルの複数の操作をシステムが同時に行う車が、すでに市場にも出ています。
自動運転に対応できるのか? 自動車保険の現状
現在実用化されている自動運転機能は、運転者自身が運転することを前提としたもので(運転支援技術と言います)、事故が発生した場合には原則として運転者が賠償責任を負うことになっています。
しかし、今後更に自動運転技術が発展し、またコネクテッドカー(インターネットと接続しICT端末の機能を有する 自動車)なども加速的に普及しくことになると、必ずしも運転者の責任ではない事故も考えられます。例えば、システムの誤作動、サイバー攻撃、ウイルス攻撃などによる事故の場合などです。
これに対して現在、各保険会社では、自動車保険に付帯する新しい特約として「被害者救済費用特約」というものを新設しています(保険会社によって名称は多少異なります)。
これはどういう補償かというと、「自動車の欠陥・不正アクセス等」による事故など、運転者に法律上の賠償責任がなかったことが確定したときに、被害者に生じた損害について保険の加入者が負担した費用を補償する、というものです。
この他、車両保険においても、同じく車の欠陥・不正アクセス等に起因する事故により車両保険を使っても、継続契約の等級に影響しないとしています。
ちなみに、これらの特約や特則は原則として追加保険料がかからず、自動的に付帯されることになっています。
このように、自動運転の技術発展に対して、今の所、自動車保険は対応していると見ていいでしょう。ただし各保険会社によって違いもあるので、自動車保険に加入する時には事前に確認する方が安心です。
自動運転の未来
最後に、未来に目を向けて自動運転が今後のどのように進化していくのか、概要を見てみてみましょう。以下は国土交通省によるものです。
自動運転はこのように、レベルゼロ(自動運転なし)から段階的に、レベル5までに分けられています。
■ 元データ(6ページ目)
http://www.mlit.go.jp/common/001188229.pdf
レベル1~2においては「安全運転に係る監視対応主体」は運転者にあります。つまり、もしも事故が起こった場合、レベル2までは、その責任は運転者にあるのです。しかし、レベル3以上からは、この主体がシステムに取って代わります。
運転をしなくても好きな所に車が自動的に行ってくれる、そんな未来は案外近い所に来ています。もちろん、自動運転にはまだまだ課題もあります。世界の各自動車メーカーは、これを一つひとつクリアしながら、2030年に完全自動運転時実現を目指し技術開発を進めているところです。10年ちょっとの未来には、私たちを取り巻く交通の姿は大きく変化することになるのです。