来年に向けて種まき開始
本格的な冬となり植物にとっては成長しにくい時期ですが、春夏野菜は今がまき時。初期の成長が後の収穫を左右しますので、丈夫な苗を育てて来年に楽しみをつなげたいものです。
発芽に必要な要素は1.水、2.温度、3.酸素で、どれが足りなくても発芽率は著しく低下します。乾燥しがちな冬は水切れしないように小まめな給水が必要ですが、水に浸かった状態では酸素が取り込めなくなり、発芽を阻害する原因になってしまいます。
また、勢い良く水やりすると小さな種子は流されてしまうので、容器の底から水を吸わせる底面給水が基本です。霧吹きでやさしく吹きかけるのも良いでしょう。気温が低すぎて発芽適温に達しない場合は、ビニール袋をかぶせて簡易的な温室にする方法があります。
この場合も充分な酸素がとりこめるよう、密閉しないことが重要です。
小さな種子は水に流されやすい。同じ品種なら右のようにコーティングしたペレット種子がオススメだ |
誤解されやすい要素は肥料と光で、基本的にはどちらも必要ありません。発芽/発根は種の養分を使うので水だけで充分ですし、発根したての弱い根を痛めることがあるので、本葉が開くまでは肥料を与えない方が良いでしょう。
丈夫に育てるためには活力剤がオススメで、定番はメネデール【http://www.menedael.co.jp/product/product01/index.html】で、種まきから定植、株が弱った時にも使える便利グッズです。筆者はフマキラーのカダンシャワー液AO全植物用1000ml【http://www.fumakilla.co.jp/products/garden/power/post-45.html】を愛用しています。
100倍に薄めて使うメネデールに対し、カダンシャワー液は原液のまま使えるので、テマがかからないのが魅力です。
活力剤の定番・メネデール。養分/水分の吸収を促進し「サプリメント」の役割を果たす |
近所のスーパーで購入したカダンシャワー液は257円也。原液のまま使えるテマ無し仕様が有り難い |
光は、ほとんどの植物の発芽に影響しませんが、なかには必要な種子もあるので注意が必要です。これらは好光性種子と呼ばれ、バジル、ニンジン、セロリ、パセリなどが該当します。
暗い場所では発芽率が悪くなってしまうので、培地の表面にバラまきするか、浅く植えて種子に光が届くようにしておきましょう。植えるというよりも、バラまきした種の表面が隠れる程度に土をかけるだけで充分です。逆に嫌光性種子のナス、キュウリ、トマトなどはしっかりと覆い光を遮る必要があります。深過ぎると葉が地上にたどり着けず腐ってしまいますので、種の直径の2~3倍の深さを目安に植えてください。
温度は低いと発芽率が悪くなり、高いと種子が腐ってしまうため、水や酸素と比べて管理が難しい要素です。発芽には気温よりも地温が重要で、冬に屋外で大きなプランターに直まきすると、晴天でも培地が温まり切らず、発芽しなくなるので注意が必要です。この時期は、発芽適温を維持しやすい室内で、地温が上がりやすいようにセルトレイやポリポットで小分けしておくのがオススメです。夜間は電気アンカや電気毛布で補えば完璧です。
寒すぎる夜間はヒーターで加熱。低消費電力の電気アンカでも効果は絶大だ |
オーソドックスな土耕の種まき
土耕の場合、水はけが良く、肥料が含まれていない土を使うのがポイントで、「種まき用」「さし芽用」の土を使うのがベストです。「花や野菜用」の土でもダメではありませんが、混合培養土には肥料が含まれているものが多いので、あまりオススメできません。また、マメ類のように腐敗しやすい種子には川砂を使い、水はけを最優先します。
種まき用の培養土はなるべく肥料が少ないものを選ぼう |
川砂は、腐りやすいマメ類の発芽の定番アイテムだ |
育苗はセルトレイかポリポットを使い、成長の良いものをプランターなどに定植します。定植までの時間=育苗期間が長い場合は、培地の少ないセルトレイは不向きですので、途中で植え替えるテマを省くためにも少し大きめのポリポットを使うのが良いでしょう。
セルトレイは小さいものでも9~16穴に分かれているので、必要な分だけ切り取って使えば置き場所にも困りません。どちらも、底面の穴が1つしかないものが一般的で、平らな場所に置くと穴がふさがれ、水はけが極端に悪くなってしまいます。専用のトレイやホルダーも存在しますが、無ければ食器用の水切りかごやザルなどを流用すると良いでしょう。
複数の鉢が合体した形のセルトレイ。少量の種まきなら切って使うのも良いだろう |
ポリポットは厚手のビニール製。強くつかむと培地が変形するので要注意 |
培養土を入れ、底から流れ出るほどに充分な水を与えてから種をまきます。発芽しない種子もあるので複数まくのが基本ですが、直径9センチのポリポットなら1ポットに2~3ヵ所に植えても良いでしょう。
発芽後、本葉が開く頃から成長の遅いものを間引きします。いきなり1株だけに減らすのではなく、成長を見ながら段階的に3→2→1株の要領でおこなってください。苗が大きくなると根が張り、他の株と絡み合うことがあります。引き抜くと残したい株の根まで痛めてしまうので、ハサミで切り取るのがベターです。
複数の株を1ポットに植えて省スペース化。大きくなり過ぎないうちに定植しよう |
水耕ならお手軽&簡単
水耕では培地に発泡煉石やロックウールを使います。種まきには、ハイドロコーンなどの名称で販売されている発泡煉石のなかでも、米粒大の細かい製品を選びましょう。
これは発泡煉石の隙間を抜け、種子が落ちてしまうのを防ぐためです。容器はセルトレイやポリポットでも構いませんが、オススメは電子レンジ調理器。内側のザル状容器に培地を、外側の容器には水を入れると、通気性を保ちながら底面から給水できる理想的な水耕容器として使えます。種まき前に発泡煉石を水に浸しておくのがポイントで、種子に充分な水が与えられ発芽しやすくなります。
小さな種でも安定するように、米粒大の発泡煉石を敷き詰めるのがポイントだ |
本来は調理用ながらも、通気性と給水を両立させた理想的な容器。かなりマイブームですっ! |
種まき後も、発泡煉石が水を吸い上げる「自動給水」なので、水やりは不要です。外側の容器に水を入れ過ぎると種子が水没したり根腐れの原因になるので、ザル状容器が1センチぐらい浸る程度の水位にします。
培地の表面が乾かないように新聞紙で覆っておけば、あとは発芽を待つだけ。水は減った分の補給と週1回の交換だけでOKで、肥料を与えるのは、土耕と同様に本葉が開いてから。希釈した液体肥料を水の代わりに与えましょう。
ロックウールは人工的に作られた繊維で、保水性・通気性ともに植物に適した素材です。高炉スラグと岩石が主成分なので、発泡煉石と同様に、これ自体には養分はありません。種を植える穴は爪楊枝でつつくだけで開けられ、綿状なので種が落ちてしまう心配もありません。水を張ったトレイの上に置いておけば、繊維を伝って水を吸い上げるのでこちらも水やり不要。水位を1センチ程度にしておけば、水没や根腐れの心配も無用です。
ロックウールも大小さまざまなサイズがあるので、種の大きさに合わせて購入しよう |
春菊の発芽の様子。少し遅い種まきながらも保温BOX+LED照明でガンバります |
水耕での育苗は、後の定植が簡単なこともメリットとして挙げられます。土と異なり、発泡煉石はゆするだけで簡単に落とせますし、根にからんで残ってしまっても支障はありません。
ロックウールの場合は、繊維の合間を縫って根が伸びるので取り除くことは不可能ですが、このまま土に植えても大丈夫なので、土耕に切り替えるのも楽勝です。対して土耕で始めた場合、水耕に切り替えるには土を完全に取り除かなければならず、根を傷つけずにおこなうのは至難のワザです。最終的な栽培方法を水耕か土耕か決めかねている場合も、水耕からスタートすれば、後にムダな苦労をせずに済みます。
余った種はどうする?
一般的に、種子はハガキ大の袋に数百粒以上詰められているので、ベランダ菜園で全て使い切るのは稀と言えるでしょう。最近植えた春菊の種は非常に小さいため、1袋に4000粒以上(!)も入っていたため、全て育てると…来年は毎日3食が春菊になりそうですね……。
とは言え捨ててしまうのも忍びないと思う方は、密閉できるチャック袋がオススメです。これに入れて冷蔵庫で保存すれば、発芽のトリガーとなる水分(湿度を含む)・温度・酸素を大幅にカットできるからです。有効期限が明記されているように、種子は永遠に保存できる訳ではなく、時間が経つほどに発芽率は下がりますが、趣味の園芸であれば許容範囲と考えています。
発芽率が悪くても「まぁ良いか」って思える方は、ゼヒお試しください。ただしニンニクのように、冷蔵すると発芽しなくなってしまう種子もあるので、事前のチェックをお忘れなく。
種子の保存に最適なチャック袋は35枚入りで105円。来年も使えることを祈りつつ冷蔵庫に保管します |
おまけ
998円で購入したしいたけ栽培キット。箱を開けると既に発芽済みで、ちょっと残念…