悪いムシはもとから絶つ

今回のテーマは害虫。これから寒くなるのにナゼ?と思われるかも知れませんが、秋も害虫が活発化する時期。大事な野菜が被害にあう前に、しっかりと対策しておきたいものです。

今年の夏に大発生したコナジラミ。生育が悪くなるだけでなく、排泄物によって「すす病」も引き起こし2重のダメージを受けた

害虫対策はa.発生した害虫を駆除するb.別の場所に誘引するc.寄せ付けないd.物理的に遮断する、の4つの方法があります。

a.発生した害虫を駆除するはスプレー式や、肥料のように土に混ぜて使用する殺虫剤が一般的ですが、せっかくの家庭菜園。なるべく薬品は使いたくないのが本音です。

木酢や竹酢などの自然由来のものを使う方法もありますが、製品によっては有害物質が含まれているとの話も聞きますので、出元のしっかりしたものを選ぶのが良いでしょう。

いざとなったら頼りになる園芸用殺虫剤。プロが使う農薬よりも効き目はソフトだが、なるべく使いたくないのが本音

b.別の場所に誘引するはムシの好む光や匂いで植物以外の場所に引き寄せる方法。代表例は紫外線で引き寄せられたムシを高電圧で殺虫する電撃殺虫器で、鮮魚や精肉店でも見かける定番な方法です。

c.寄せ付けないはこの逆で、ムシの嫌がる光や匂いを使って近づけさせない方法です。銀色の帯を入れたネットやマルチはアブラムシ対策の定番ですし、匂いの強い植物を一緒に植えるコンパニオン・プランツと呼ばれる方法もあります。

b.c.ともにムシの性質を利用した方法なので、高い効果が望める反面、性質の異なるムシには全く効果がありませんので、家庭菜園には向きません。

880円で購入した電撃殺虫器。「蚊には効きません」の注意書きのように、どんなムシにも効く訳ではない

最後のd.物理的に遮断するはネットなどで物理的に遮断し、ムシが付くのを未然に防ぐ方法。原始的ですが、これなら薬品も不要でどんなムシにも対処できるので、放置菜園にふさわしい方法です。ということで、プランター用の防虫ネットを作ってみることにしました。

不織布と防虫ネットを比較する

まずはホームセンターで、FarmGraden 不織布パオパオ90FarmGarden 防虫サンサンネットの2種類を購入し、比較してみることにしました。どちらもよく見かける製品ですので、入手に苦労することはないでしょう。

不織布(ふしょくふ)は換気扇のフィルターやCD/DVDの袋にも使われている素材で、繊維が不規則に並んでいるのが特徴です。

軽くて柔らかいため植物の上に直接かける「ベタがけ」に使われるのが一般的で、水も通し透光率も90%と良好ですが、通気性はいま一つと考えられます。また、強く引っ張ると簡単に裂けてしまうので、何シーズンも使い続けるような耐久性は期待できません。

一方、防虫ネットは縦糸と横糸から成り立つ織物で、不織布よりも重く丈夫なのが特徴。透光率は同じく90%あり申し分ありません。おまけに10センチ間隔でアルミの反射材が織り込まれ、アブラムシを避けるのに効果があるのもうれしいところ。

また、ハサミやカッターで簡単に切断できるものの、切り口からほつれてしまうので、やっかいな面もあります。

その名の通り織らずに作られた不織布は、和紙のように不規則な繊維で構成される

縦糸と横糸から成り立つ防虫ネットは、不織布よりも引っ張り強度が強いのが特徴

どちらも1.8m×5mのシート状なので、これを袋状に加工し、プランターにかぶせて使うことにします。加工にはホットシーラーHS-50を使用することにしました。これはハンダゴテにローラー状の先端を取り付けたような構造で、これで不織布や防虫ネットを溶着して袋状にする作戦です。

マルツパーツ館で購入したホットーシーラーは50Wで1,638円

先端のローラーが溶けた樹脂で汚れてきたら、熱いうちに濡れ雑巾でふき取ろう

加工手順は下にあるイラストの通りで、ネットの表を緑、裏をオレンジで示しています。まず1のようにプランターの大きさに合わせてカットしたネットの両端を5センチほど折り、2の赤色部分を溶着し筒状にします。

次に2のように、赤色の部分が見えるように折り、3の青色部分を溶着します。最後に溶着箇所が内側になるように裏返し、筒状の部分にヒモを通せば完成です。

最も簡単な袋型・防虫ネットの製作手順。4ヵ所を溶着すれば完成だ

ネットは溶着できない?

今回は楽勝!と思いきや、溶着を始めるといきなり失敗……。シーラーで触れたとたんに裂けたり穴が開いたりと、うまく溶着することが出来ません。

温度が高すぎるのでは?と思い、電圧を下げて試してみると、今度は温度が低すぎて表面の色が変わる程度にとどまります。

シーラーの電圧を5V刻みに75~100V間を試すも、溶けるか溶けないかの両極端な結果しか得られず、溶ける場合は穴が開く、溶けない場合は表面の色が変わるだけで、2枚のネットを溶着することができませんでした。

あれこれ試すうちに、茶漉しフィルターのように目の細かい繊維は溶着できることを発見! つまりアミではなく「面」に近い素材ならOKと分かりました。

もっと密度の高いアミを使えば良いのですが、これでは通気性が悪くなってしまいますので、溶着する部分に別の素材を重ね、補強してみることにしました。

シーラーの熱で溶けてしまったネット。不織布の方は切断されてしまい、溶着には程遠い結果となった

絶縁用のビニールテープをはじめ、家中のテープ類を片っ端から試したところ、最も良好だったのは水道補修用のシールテープで、強度も仕上がりの良さもダントツでした。

5メートルで300円前後とコストパフォーマンスが悪いのを除けば、補強材として最適と言えるでしょう。

2番目は意外にもビニールヒモで、古新聞をしばるのに使われるような安価なものでも、充分な効果が得られることが分かりました。

ビニールヒモと呼ばれるもののポリエチレン製で、熱に弱いのが幸いし、溶けたポリエチレンがネットの目に入り込み、強度アップにもつながります。幅広タイプでも500mで300円程度と安価なので、これを使うことにしました。

補強材には幅広のビニールヒモを採用。溶けたビニールがネットの目を埋め「面」になるのがポイント

溶けたビニールは接着剤の役割も果たし、どちらもキレイに溶着できるようになった

補強は、溶着したい箇所の外側に行います。つまり、2枚のビニールヒモで2枚のネットをはさむように加工する訳です。いきなり4枚を重ねて溶着するのではなく、まずはそれぞれのネットにビニールヒモを溶着し、その後に2枚の補強済ネットを留めるのがベストでした。

新聞紙や板の上に敷いたネットに適当な長さのビニールヒモを被せ、まずは仮止めします。シーラーは、10センチ間隔を毎秒2往復ぐらいの速さで、力を抜いてすばやく動かすのがポイントです。

仮止めが終わったら、ヒモ全体が密着するよう、シーラーでくまなく加熱します。もう一枚のネットも同様の作業をおこなったら、ネット同士が触れ合う向きで重ね合わせ、さらにシーラーで加熱します。

この段階では少し力を入れながら、10センチ間隔を毎秒1往復ぐらいの速さで動かし、充分に熱を伝えます。加熱し過ぎて穴が開いてしまった時は、穴の上にビニールヒモを2枚ほど重ね、シーラーで溶かしてふさげばOKです。

作業後は、少し力を入れて2枚のネットを引っ張り、きちんと溶着できているかを確認し、はがれてしまった時は再度シーラーで溶着します。穴開きや溶着不足がないことを確かめながらネットを裏返し、筒状の部分にヒモを通せば完成です。

ジャージなどに使う太めのゴムヒモを使うとプランターへの固定が楽になりますが、風で飛ばされたりムシが進入しないよう、少しキツめにしておいてください。

支柱には、ダンポールなどの名称で販売されている樹脂ポールをU字に挿して使います。FRP製で釣竿のようにしなやかなので、極端に小さいプランターでない限り装着できる便利グッズです。2本の樹脂ポールの交点を結束バンドで留め、防虫ネットをかぶせれば完成です。

1本155円で購入した直径5.5ミリの樹脂ポール。復元力が強いので、外す時は物に当たらないよう注意

四角いネットと楕円の支柱でイカっぽい風貌になってしまいました……

ビニールヒモのお陰で、不織布も防虫ネットもキレイに加工できるようになりました。不織布は保温用、防虫ネットは長期用と使い分けるのが良さそうですね。ちなみに1つ作るのに1時間ぐらいかかり結構タイヘンです…どこかのメーカーで、このようなプランター用・防虫ネットが販売されることを期待しています。

おまけ

ビニールハウスをピンクにすると生育アップするとか。ピンク色のゴミ袋(?)で試してみます。