夏野菜の苗も多く見かけるようになり、家庭菜園には絶好の季節になりました。豊作を目指すべく今回は肥料をテーマに紹介します。
植物が生育するのに必要であることは、皆さんご存じのことと思いますが、多くの製品が存在するため、どれを選べば良いか迷う方も多いと思いますので、植物に必要な成分とその効果をご紹介しましょう。
肥料の基本は無機質
肥料の分類にはいくつかの方法がありますが、三大要素と呼ばれるチッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の「単肥(たんぴ)」、単肥をブレンドした「複合肥料」、動植物を成分とした「有機質肥料」に分かれます。
チッ素は空気の約80%を占める元素で、常温では無味無臭の気体ですが、植物にとっては「葉肥」とも呼ばれ、葉や茎の生育に欠かせません。チッ素が不足すると生育不良になり、葉色が薄くなってしまいます。
リン酸は開花や結実に欠かせないことから「実肥」とも言われます。光合成や細胞分裂にも影響するため、不足すると成長が止まってしまうこともあります。
根や茎を丈夫に育てるカリは「根肥」とも呼ばれ、全体の生育に大きく影響します。三大要素以外にも、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)などが必要で、これらは有機質肥料に対して「無機質」とも呼ばれます。
単肥は、成長に合わせて葉や実などにピンスポットで栄養を与えることができるため、高度な施肥が可能ですが、与えすぎると生育障害を起こすこともあるので、ある程度の知識が必要です。不安に感じる方には複合肥料がお勧めで、あらかじめ複数の成分がブレンドされているので、用量さえ間違わなければ簡単に扱うことができます。
複合肥料の多くは三大要素が含まれ、チッ素、リン酸、カリの含有率がN-P-Kのように記載されています。例えば8-8-8はそれぞれが8%ずつ含まれていることを意味し、合計が30%以上のものは「高度化成肥料」と呼ばれます。
化学肥料と有機質肥料
化学肥料は、植物に必要な養分を必要に応じて与えられるため、効果が大きく即効性があるのが特徴です。「化学」の文字から不安を持たれる方も多いと思いますが、植物に必要な養分は、つまるところ無機質であり、化学の授業で習った元素記号で表される物質であることを考えると、理にかなった肥料と言えるでしょう。
対してオーガニックや有機栽培で知られる有機質肥料は、自然由来の原料が使われている安心感が一番の魅力ですが、即効性は低くN-P-Kの含有率も自然任せなため、過不足が生じやすいのも否めません。
2つの肥料の最大の違いは、化学肥料は植物に、有機質肥料は土に栄養を与える、と考えると分かりやすいでしょう。化学肥料には植物の成長に必要な要素しか含まれていませんが、タンパク質やアミノ酸を含む有機質肥料は、土中の有用微生物を育て、豊かな土作りに役立ちます。
特に、長期に亘って化学肥料を与え続けた土は、土中の微生物が減り、固く締まった土になってしまい、根が伸びにくくなり、結果的に生育が悪くなってしまいますので、土耕栽培の場合は植物を植える前の土作りに使う「元肥(もとひ)」には有機質肥料、その後の成長過程で与える「追肥(ついひ)」には化学肥料と両方を使うと良いでしょう。
元肥と追肥
第9回でもご紹介したように、シーズンを終えた土はそのまま使わず、乾燥、消毒、酸度の調整をおこなってから新たな植物を植えますが、その際に土に養分補給をおこなう元肥を施します。
化学肥料でも構いませんが、長い時間をかけて緩やかに効く有機質肥料が最適で、牛のふんを原料とした「牛糞」や、リン酸とカリが豊富な「鶏糞」、これらにワラや落ち葉を混ぜて発酵させた「堆肥」などが代表的です。 また、雨によって酸性に傾いた土を中和する「草木灰」や、通気性・排水性が悪くなった土には「腐葉土」「くん炭」が有効です。
有機質肥料の注意点は、腐植によって養分化する点で、土中で腐植する際にガスを発生し、根を傷める場合があります。元肥を施した後は2~3週間程度なじませてから植え付けるのが良いでしょう。
「完熟」「醗酵」と記されている肥料はガスの心配はありませんので、すぐに植え付ける場合や追肥にも使用できるので便利です。
追肥には即効性のある化学肥料がお勧めです。液体肥料なら500~1,000倍に薄めてジョウロで与えるだけですから、さほど手間もかかりません。2週に1回程度与えればOKです。
もっと手間を省きたい方は、元肥と同様に長期間に亘って緩やかに効く錠剤やスティックタイプの化学肥料が良いでしょう。また、開花や結実を促進する専用の肥料もありますので、成長段階に合わせて使い分けてください。
水耕栽培の場合
水耕栽培の場合、化学肥料のみの無機栽培が基本で、有機質肥料は使用しません。
醗酵や腐植によって養分化する有機質は、水のみの環境では腐敗し、植物に有害な物質を生み出してしまう可能性があるためで、液体や粉末の化学肥料を薄めて使うのが定番です。
おまけ
ムシのような姿のソラマメの花。収穫が楽しみです。