夕方が春の到来を予感させる今日このごろ、園芸コーナーでもやっと見かける時期になりましたので、今回は野菜の「苗」をご紹介しましょう。

種から始める場合、開始時期を自分で決められることや、手作り感が強いことがメリットとして挙げられますが、温度を一定に保つための工夫や水の管理、品種によっては明るさを考えながら進めないといけないので、規模・労力ともに大掛かりになってしまうのがデメリットです。

写真は2月上旬にまいたゴーヤで、発芽/発根までに3~4日、12センチほどに成長するまでに1カ月ほど要しました。もちろん発芽しなかった種もありますし、発芽後もヒーターで25℃前後をキープし続けるなど、決して楽ではありません。

対して苗の場合は装置や設備も不要で、ある程度の大きさまで成長しているため神経質な管理をしなくて済む「手軽さ」が何よりのメリットです。以前、ソラマメの発芽に苦戦し、何度もやり直した挙げ句にギブアップし苗を購入したことがありましたが、2株で3~400円と安価なのにがくぜんとした記憶があります。

コストパフォーマンスに優れた苗は、初めてチャレンジする方や、あまり手間をかけたくない方には最適といえるでしょう。

日々の成長がはっきりと分かるダイナミックな期間だが、手間がかかるので忙しい方にはお勧めできません

苗選びのポイント

苗も生き物ですから、個体によってバラつきがあります。農家から出荷される時はほぼ均一でも、ホームセンターや園芸コーナーで展示されている間に、育ちの差がはっきりと出てしまいます。

写真のパセリは同じお店で同時に購入したものですが、1つはヒョロヒョロと伸び過ぎていました。このような状態は徒長(とちょう)と呼ばれ、肥料や水のやり過ぎ、日照不足が原因として考えられます。同時に、枯れた葉や黄色くなった葉が目立つのは肥料や水が足りなかったことが原因で、2つの逆の現象から、手入れのムラが大きかったと推測されます。

大まかな目安として葉の量と茎の長さのバランスが取れ、少し小さく感じるものの方が良い苗と言えます。これからの時期は気温も上がりやすく、日々の手入れが育ち具合を大きく左右します。

この程度の弱り方であれば、枯れたり黄色くなった葉を切り取り、しばらく水と日照を控えめに過ごせば回復可能ですが、旬の終わりが近づくと、伸びきった苗が在庫処分で安く販売されるケースが多く、これらはうまく育たないことが多いので注意してください。

全体的にバランス良く成長し、こんもりと盛り上がった感じの苗を選びましょう

成長不足もさることながら、成長し過ぎた苗も避けた方が良い

苗には「自根(じこん)苗」と「接木苗」があり、何も手が加えられていない自然状態のものが自根苗と呼ばれ、2つの苗を合体させたものを接木苗と呼びます。接木は別品種の長所を取り入れるのが目的で、例えば、収穫量の多い品種と病気に強い品種を合わせることで、収穫量と耐病性を両立できるのがメリットです。

トマトやナス、キュウリやスイカなどには「接木苗」が多く見られ、自根苗よりも少々高価ですが、病気の予防や害虫駆除を考えるとむしろ安い買い物になりますので、手間をかけたくない方は迷わず接木苗を選んでください。

2つの苗を使うので少々高価だが、耐病性や収穫面では断然有利だ

苗は植え替えがスムーズにおこなえるように、柔らかいポリポットに植えられているのが定番です。土が離れにくい時はハサミで切ることもできるので便利な鉢ですが、土の重さで底穴がふさがれやすく、平らな容器の上に置くと水はけが悪いので注意が必要です。

網やザルを敷けば改善されますが、もとより長期間を過ごすための鉢ではありませんので、購入した苗はなるべく早い時期に植え替えるようにしましょう。

厚手のビニールでできたポリポットは簡易的な容器。長期間の栽培には向いていない

水はけの悪い容器なので、なるべく早く植え替えよう

パセリを水耕栽培する

パセリは日照を好む野菜ですが、日当たりの良い窓際なら室内でも育てることができるので、発泡煉石(ハイドロコーン)を使い室内で水耕栽培することにしました。2つの苗を同居させるため、直径18センチと少し大きめのスリット鉢を使います。比較的涼しい気候を好み25℃を超える高温では育ちが悪くなる野菜ですので、屋外の場合は、夏は日陰に移すか日よけをつけるなどの工夫をしてください。

市販の苗はほとんどが土耕なので、水耕に切り替える際は土を完全に取り除く必要があり、土が残っていると細菌やバクテリアが悪影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。

土を取り除く際はなるべく根を傷つけないことが大事ですが、成長し過ぎた苗は根も伸び過ぎているため、写真のように「根巻き」しているケースが多くあります。根巻きが進むと土落としが困難になりますので、水耕の場合は少し未熟な苗を選ぶのがポイントです。

土は乾いている方が根から離れやすいので、作業の1~2日前から水やりを控えておくと良いでしょう。最初は全体をもみ崩すように土を落とし、その後は根に沿ってブラッシングするように払い落とします。

毛先の柔らかいハケや筆を使うと作業が楽になります。最後に流水できれいに洗い流せば完了です。苗にも大きな負担が掛かりますので、時間をかけずに新しい鉢に植え替え、底から流れ出るほどにたっぷりと水をかけておきましょう。

枯れ葉や育ちの悪い部分は、この段階で切り取っておこう

水耕栽培へ移行完了。明日の朝食が楽しみです

サニーレタスはベランダで土耕

サニーレタスはリーフレタスとも呼ばれ、パセリ同様に冷涼な気候を好む野菜です。一般的なレタスのように葉が重なりあって球状になる「結球」しないのが特徴で、短期間で収穫でき比較的簡単に育てることができます。 複数を植える場合は株間を10~15センチほど開ける必要があり、パセリと比べて少々大掛かりなためベランダで土耕栽培することにしました。ポリポットの土を除去する必要がないので作業は至って簡単です。

サニーレタスも2株用意し、1つは外側/内側の葉の大きさのバランスが良く、コンパクトにまとまった印象ですが、もう1つは枯れ始めた外側の古い葉と、飛び出すように伸びた内側の新しい葉のバランスが悪く、成長を促進されたような感じが受け取れました。根も底の穴からはみ出し、すぐに植え替えないといけないことが分かります。購入時はポットの底穴を確認し、根がはみ出していないものを選びましょう。

決して大きくはないが、全体のバランスが良く期待が持てそうだ

新しい葉の勢いが強く、気温に対して「成長し過ぎ」感がある

鉢/プランターの準備が整ったら、ポリポット内の根と土が入る穴を掘り、軽く水をまいておきましょう。水分によって土が粘着力を持ち、穴が崩れにくくなるからです。深く堀りすぎると土よりも苗が低くなるため、水はけが悪く根腐れや病気の原因になります。

苗が土よりも1センチほど飛び出すぐらいに穴は浅目にし、段差が大きい場合は周りに土を足して修正します。最後に、大目の水やりをして全体をなじませれば完了です。1週間程度は日照・温度を控えめにし、強い刺激を与えずに落ち着かせておくのが良いでしょう。植え替えてから元気がなくなった場合は、肥料は絶対に与えないでください。根を傷めている可能性が高く、余計に状態を悪化させてしまうからです。

根のはみ出しは植え替え時期を過ぎた証拠。購入時にチェックしておこう

苗が周りよりも高くなるように、ポリポットの高さ-1センチぐらいを目安に掘る

葉菜は害虫に狙われやすいので、暖かくなる前に防虫ネットをかけておこう

サニーレタスは苗からスタートすると1カ月ぐらいで収穫できますので、その間はベランダで放置。パセリは朝食用に、少しずつ「おすそ分け」してもらうことにしましょう。もう少し暖かくなると、ゴーヤやトマトなどの夏野菜の苗が店頭に並ぶことでしょうから、元気な苗を選び家庭菜園を楽しんでください。

おまけ

昨年11月にまいたカブも直径5センチほどに。もう一回り大きく育てたいところですが、限界サインのひび割れを発見!無念な収穫となりました…

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