前編に引き続き、今回もユニーク&使える専門ライブラリーをご紹介します。……とはいえ、ホントにたくさんあるので、どれをピックアップすれば……と、迷ってしまうのが本音。しかし、ここは心を鬼(!?) にして本誌が「ここぞ!」と選んだ専門ライブラリーをテンポよくお伝えしていきます。なお、こちらのサイトには専門図書館の一覧を見ることができます。ただし、中には古い情報もあるのでご注意を。

戦前の文献も充実! ミステリー文学資料館

JR池袋駅から徒歩10分、または地下鉄有楽町線要町駅から徒歩3分ほど、光文社のビルの1階に「ミステリー文学資料館」は入っています。この資料館は、1999年、光文シエラザード文化財団によって創設されました。「同じくミステリーの専門図書館といえば、パリに市営のミステリー専門図書館(BILIPO)が挙げられるくらいで、世界でも珍しい専門ライブラリーと言えるでしょう」(同館の安達さん)

推理小説などを数多く出版している光文社のビル

会員登録すれば誰でも利用可能で、利用料は1回300円。館外貸し出しは行われていませんが、所定の手続きさえ踏めばコピーはできます(1枚50円)。収蔵されている書籍や専門誌には戦前の探偵雑誌も多く、しかも開架式で自由に手に取れます。たいへん貴重な文献をこれほど気軽に読める場所は、ほかにはないでしょう。

また同館では年に2回、館内展示も行っています。現在は「推理とロマンの狩人 孤高の作家 笹沢左保の世界」展が開催中。期間は来年1月中旬まで。なお、3月からは第12回日本ミステリー文学大賞を受賞した島田荘司氏をテーマとした展示が始まる予定です。

ミステリーファンや研究者などの利用が多い

「探偵」「探偵小説」など、ファンにはたまらない文献がそろう

笹沢左保は「木枯し紋次郎」シリーズの作者としても知られる

おいしい情報がいっぱい 食の文化ライブラリー

東京・高輪の閑静な住宅地に位置する味の素食の文化センター「食の文化ライブラリー」。ここは味の素創業者の邸宅があった場所で、現在は同社の研修センターとして使われています。ライブラリーは1階の入口左手。ゆったりとしていて、とても落ち着いた空間です。

地下鉄都営浅草線高輪台駅から徒歩約3分。JR品川駅から歩いても10分ほどだ

蔵書はおよそ4万冊を数え、一般的な料理関連書籍・雑誌から専門的なものまで幅広くそろっています。その内容は食材や酒、調味料、デザート、調理道具、食にまつわる文学・エッセイ・マンガ、歴史的に貴重な書籍など、専門家にはもちろん、一般の人にも興味深いものばかり。利用カード登録(登録手数料100円)をすれば貸出しも可能です。

さらに映像資料も充実しています。同財団が企画・製作した映像記録をはじめ、国内外の食文化に関するビデオDVDが並んでいて、ブースで視聴することができます。同じく同財団が発行している季刊の食文化誌『VESTA』を読めるのもここならではのこと。2階には展示室があり、企画展、常設展が行われています。

棚の配置、本の配列ともに見やすいように工夫がされている

日本の伝統食品を多角的に探った同財団企画・製作のDVD

また2階には「食とくらしの小さな博物館」もあり、こちらもおすすめ。食卓の風景や味の素の歴史などの展示には、思わず「懐かしい!」と声が出てしまうはず。意外と知らない"うま味調味料"についても知ることができ、親子で訪ねてみるとより会話が弾むのではないでしょうか。

世代によって、さまざまな思いがこみ上げてくる博物館の展示。備品のひとつひとつに至るまで、当時のものがそろえられている

味の素の歴史も興味深い。味の素が「化学調味料」ではないこと、知っていますか

映像資料も鑑賞できる 演劇博物館

早稲田大学の構内の奥に建つ伝統的な西洋の館。「早稲田大学坪内博士記念演劇博物館」は、建物そのものも鑑賞に値します。日本の文学、演劇の発展に貢献し、早稲田大学文学部の創立者でもある坪内逍遙の古希と、『シェークスピヤ全集』全40巻の翻訳完成を記念して、1928年に設立されたこの建物は、16世紀エリザベス朝時代の英国の劇場「フォーチュン座」を参考に設計されたものです。

優美な佇まいの博物館。正面は舞台となっている

1階には和書閲覧室があり、国内外の演劇、映画に関する図書や雑誌がそろっています。演劇博物館のコレクションは、図書15万冊をはじめ、錦絵4万6,000枚、舞台写真20万枚などととにかく膨大。もちろん、常設展や企画展も見応えがありますが、演劇関連の資料の宝庫としてもたいへん貴重な施設です。

さらに利用価値が大きいのが、AVブース。演劇博物館手前の6号館3階にあり、演劇や民俗芸能などの映像資料だけでもおよそ8,000点を公開しています。最近は一般の図書館やレンタルでも演劇等の資料が借りられるようになってきましたが、それでもまだまだごくわずか。このAVブースでは、特に現代演劇や歌舞伎などの人気が高いとのこと。見逃してしまった作品もここなら見つかるかもしれません。

AVブースにはブースが7つ(映像資料用6、音声資料用1)用意されている

博物館1階の閲覧室。ここでも建物の歴史を感じることができる

シャンデリアと柱の重厚さがいにしえの優雅さを物語っている

所蔵資料の内容と充実度、博物館の展示、そして博物館そのものの建築美……。演劇ファンでなくても、足を延ばしてみる価値は大きいのではないでしょうか。(開館時間は博物館とAVブースでは異なるので、ホームページで確認を)

3階は古代から現代までの芸能、演劇に関する常設展示スペース。2階ではさまざまな企画展が開催される

そのほか、専門ライブラリーをピックアップ

大宅壮一文庫

昭和の評論家、大宅壮一(おおやそういち)の膨大な蔵書などを中心に創設。世田谷本館は明治から現在までの雑誌約1万種類を所蔵していて、マスコミ関係者には欠かせない施設となっている。

お茶の水図書館

日本で唯一の女性雑誌専門図書館。昨年、創立60周年を迎えた。20歳以上で、調査・研究を行う人を対象としている。

現代マンガ図書館

1955年に貸本屋「山吹文庫」を開業し運営してきた内記稔夫(ないきとしお)氏が、1978年に日本で初めての漫画図書館として開館した。同館の設立と運営に対して1997年、第1回手塚治虫文化賞特別賞を受賞。単行本、雑誌など18万以上冊を所蔵しており、特に昭和30年代の貸本マンガのコレクションが充実している。

住まいの図書館

新宿マインズタワーの21階、積水ハウスの受付横にあり、建築史、作品集などからインテリア、デザイン関連、都市関連など、住まいに関する書籍、雑誌を多数所蔵している。

ポーラ化粧文化情報センター

五反田のポーラ文化研究所内にある化粧文化関連の専門図書館。国内外の化粧、女性や美に関する書籍、雑誌がそろっている。

自動車図書館

社団法人日本自動車工業会が運営。自動車関連の図書、雑誌やモーターショーの記録をはじめ、統計資料などを所蔵している。