「自分の本をつくる」「100%オーガニックフードを育てる」「アプリ開発力を身につける」……。そんなユニークな講義を行っている「自由大学」をご存知ですか? 「今年は何かにチャレンジしたい」「今年こそ自分を変えたい」「これからがちょっと不安」などと思っている方、この大学が「きっかけ」になるかもしれませんよ。
廃校再生から始まった新しい"学び"のかたち
「自由大学」があるのは、廃校になった池尻中学校の校舎に誕生した「世田谷ものづくり学校(Ikejiri Institute of Design、通称IID)」の教室。IIDについては、本連載でも2009年4月に紹介しています。
IIDでは、2005年9月に、デザインや映画などについて学ぶ「スクーリングパット」が開始されました(詳細はこちら。「自由大学」は、さらにより多くの人に"学び"の場を提供する目的で、2009年6月に始められたものです。
学びたい人々が集まり、自ら探してきた教授に教えを受けるという大学の原点に立ち返ったのが「自由大学」の大きな特色。あらかじめ講師や授業内容が決まっているカルチャースクールや、単に起業などを目的としたクラスとは大きく異なります。
具体的にはこういうこと。月に1度、何か学びたいことがある人が「キュレイター(一般的には学芸員の意味)」として講義の提案を行い、講師は誰がいいか考えたり、受講者を募ります。そして、定員に達すれば講義は開始されるというシステム。なので、講義内容はどれも実にユニーク。一方的な授業ではなく、ひとりひとりが共通の問題意識を持ち、議論していく、それが「自由大学」のスタイルです。
ほかにはない刺激的な講義の数々
では、今後予定されている講義を簡単に紹介していきましょう。
■カーボンで自転車をつくる(初級)
「自転車はつくることができる」という内容はインパクト大。しかも、カーボンで。これは次世代型自転車を意味します。世界で1台だけの自分専用自転車。持ってみたいかも。
■自分を活かすポートフォリオ
アーティストやデザイナーなどが持っている、自分の作品集がポートフォリオ。自己PRに最適で便利なポートフォリオを持つことで、新しいつながりができるだけではなく、自分が「やってきたこと」が整理できます。
■未来の仕事
「これから生まれてくる仕事」「これからの働き方」などを考える講義。いわゆる仕事術や有利な資格など目先のことではなく、未来の社会や世界のことを、キーパーソンを招いて学んでいきます。
■サッカーイタリアン
ザッケローニ監督就任記念、ということもあり(?)、サッカーを通じてイタリアを学ぶ講義。普通の学校では教えられることのないイタリア語を学び、そしてイタリアを満喫する裏話を楽しむことができそう。
「未来の仕事」講師の西村琢氏。1981年生まれで、23歳のときに、体験をギフトにして販売する会社を設立している |
以前開かれた「サッカースパニッシュ」。サッカーを通してスペインを学んだ。「サッカーイタリアン」はどんな話題が出てくるか |
■入門日本酒学
ふつうの居酒屋やスーパーでも、以前に比べれば数多くの種類が見られるようになった日本酒。最近、日本酒を飲む機会が増えた人も多いかもしれません。でも、日本酒について案外知らないことも多いのでは? 日本酒が粋に楽しめる講座です。
■自分軸をつくる占い(初級)
占いは「よりよく生きるための最強のツール」。しかし、占いの結果どう行動するかは、当然、自分次第。この講座では占いに頼るのではなく、占いをツールとするために、ぶれない自分軸を持つことを学びます。
仲間と出会うという財産
予定されている講義には、もうひとつ「自分の本をつくる方法」があります。教授で自由大学のディレクターでもある深井次郎さんに話をうかがいました。
これまでの参加者は20代半ばから30代半ばが中心。7割が女性とのこと。今の働き方に疑問を持った人などが多いそうです。「仕事仲間とはできないような深い話ができるのも特徴です」。講義が終了しても同期会が継続するなど、自由大学で新たなコミュニティーも生まれています。そこから新しい仕事へつながることも。
「実際に本を出版された方もいますが、本を出すことが真の目的ではなく、その人個人が何をできるか、何を持っているか、そこに気づくことがこの講義の醍醐味です」。講義でほかの人たちと出会うことにより、自分でも知らなかった自分自身が見えてくる。人と比較することで初めてわかることもあるわけです。
「すでに何期か講義をしてきましたが、その期の個性というのがそれぞれあって、内容は毎回違いますね」。ほかの講義も同じように、毎回教える側と教わる側のやり取りは変わってくるとのことで、これも自由大学ならでは。ダイナミックな"学び"の場へ、飛び込んでみてはいかが?