まだまだ残暑が厳しい今日この頃。そんなとき、ヒンヤリとした気分に浸れる(?)施設として、オススメなのが「南極・北極科学館」。今年の7月24日、立川にある国立極地研究所がオープンしたこの科学館、わずか17日目で来館者が1万人を超えました。ここのウリは何といっても、すべての展示品が実際に使われていたホンモノ、だということ。動物の剥製や隕石などの標本もホンモノ。そして、実際に手で触ることができる南極の氷も、もちろんホンモノなのです。
南極はでかい、そして高い!! そして氷は……
多摩モノレールに乗って、立川北駅から2、3分の高松駅で降りて徒歩約10分、国立極地研究所が入っている6階建の建物の裏手に「国立極地研究所の南極・北極科学館」があります。今回ご案内いただいた国立極地研究所広報室長の川久保守さんは、第20次南極観測隊での越冬隊参加をはじめとして、その後3度南極に滞在した経験があるとのこと。現地の昭和基地では、総務として隊のまとめ役をされていました。
科学館に入ると、まず南極大陸と日本を比較してもらうための大陸の模型があります。南極大陸は日本のおよそ33倍、大陸を取り巻く棚氷を含めると37倍! その広さに改めてびっくりです。さらに、氷の厚さは平均約1,856m、最も厚いところでは4,776m!! 軽~く富士山超えてます。
気温はというと、昭和基地は南極大陸の沖約4kmの東オングル島にあるので、年平均マイナス10度と意外に寒くない。しかし、基地から内陸へ1,000kmほどの場所にあるドームふじ基地は年平均マイナス54度くらいとのこと。この寒さ、想像できません。
ちなみに、このドームふじ基地では、2回にわたって南極大陸氷床深層掘削計画が実施され、1995年には2,503mの深さまでの氷(氷床コア)を採取し、32万年前の気温の変化を解明するなどの研究が進みました。2005年からは新たに掘削を開始し、2007年には3,035mの深さまで氷を掘削することに成功。72万年にわたる地球環境の歴史が解明されるものと期待されています。
で、これで掘り出したものではありませんが、南極の氷も展示されていて、自由に触れることができます。雪が固まってできた氷は、やはりちょっと違う感触!? これはぜひ実際にお試しを。
結構、暮らしやすい? 昭和基地なう
ところで、南極での生活、昔と現在で一番大きく変わった点は? 川久保さんに訊いてみると、「やはり、通信環境でしょうね」との返事。川久保さんが最初に南極生活を体験した頃は、モールス信号が使われていたそうです。それが今ではインターネット環境が整っていて、さらには「わたしのデスクからも内線電話でつながってますよ、昭和基地まで」。うーむ。
昔の南極生活はさぞたいへんだったと思いきや、皆それなりの覚悟を持って参加していたので、たいへんだと思うことはなかったとのこと。むしろ、日本から遠く離れたひとつの孤立したコミュニティーの中で、団結力が強くなり、それぞれ知恵を働かせて日々の困難を克服していったそうです。そういう点から考えると、電話が簡単に通じるというのは、南極にいても、まるで日本にいるかのような感覚なのかも?
科学館では昭和基地の今がオンタイムで映し出されています。日本から約1万4,000km離れた基地は、まるでホントにそこにあるかのようです。昭和基地の生活の様子についてはビデオも流されています。
また、現在の昭和基地の個室も再現されていますが、結構、暮らしやすそう。木の温もりが感じられて、東京のアパートよりよっぽどいいかもしれません。広さは4.3畳で床暖房完備。その前は3畳、さらにその前は1.9畳だったといいますから、生活環境は格段によくなっているわけです。
そして、「一番の楽しみは、やはり食事です。日本にいるときより、よっぽどおいしくて、バラエティーに富んだものを食べていたと思いますよ」と川久保さん。まさに映画『南極料理人』の世界。みんなが同じものを食べることで、結束力も生まれるそうです。
日本は世界最大の隕石保有国!?
現在、オーロラシアターでは南極のオーロラ映像を観ることができます。この映像ももともと研究用に撮影したもので、作られたものではありません。リアルな迫力が伝わってきます。このシアターはオーロラの映像を見ることができる常設の施設で、月ごとにその内容は違うそうです。
観測機器、雪上車などもホンモノならではの迫力が感じられますが、何よりも目玉のひとつはさまざまな隕石でしょう。全世界の隕石のおよそ3分の1が日本にあるって知ってました? しかもここ、国立極地研究所に。なんで??
「南極には隕石が集まりやすい場所があるのですが、そのシステムを発見したのが日本の南極観測隊だったんです」と川久保さん。南極に落ちた隕石は氷の中に保存されたまま、数千年から数十万年かけて氷の流動とともに海へ向かって移動しますが、山脈があるところでは流れが遮られてそこで氷が消耗し、やがて氷の表面に露出するとのこと。これに基づいて探査を続けたところ、これまでに1万6,836個の隕石を発見、採集したそうです。
なお、昭和基地の近くではルビーやサファイヤなどの宝石も採取されます。これはかつてゴンドワナ大陸として、昭和基地の付近が現在のスリランカに接していたため。宝石の産地として知られるスリランカと、昭和基地周辺の地質構造は同じなのです。
その他、南極の意外な動植物なども展示されていて、「知らないことばかり」というのが実感できるはずです。
あなたも南極観測隊員に!? 中高生にはコンテスト!?
ところで、南極観測隊員は一般からも公募されます。職種は調理、医療、装備・安全管理、環境保全、建築・土木など(年次によって異なる)。毎年11月初旬から12月中旬まで、国立極地研究所のホームページ上で募集されますので、南極で仕事をしてみたいと考えている人は検討してみては?
また、中学生と高校生から「南極や北極でこんなこと調べてみたい」というアイデアを募る「第7回 中高生南極北極科学コンテスト」というのもあります。締め切りは間もなく、9月8日ですが、お子様にチャレンジさせてみてはどうでしょうか。詳しくはホームページを。
■南極・北極科学館
・住所:東京都立川市緑町10-3
・開館時間:10時~17時(入館16時30分まで)
・休館日:日曜、祝日、月曜 12月28日~1月4日
・入館料:無料
http://www.nipr.ac.jp/science-museum/index.html