昨年10月末にオープンした「米沢嘉博記念図書館」は、明治大学が運営するマンガ専門の図書館。懐かしのマンガや貴重なマンガの数々に出会える、マンガファンにとってはたまらない場所、ですが、マンガファンではないという人も、ぜひとものぞいてみましょう。マンガの奥深い世界に触れられるだけではなく、ほかではなかなか見られないコレクションが待っていますよ。
米沢嘉博氏のコレクションに脱帽!!
明治大学のリバティタワー(あの高いビルです)や山の上ホテルの裏手、山の下の閑静な場所にある図書館は、御茶ノ水駅から歩いて10分弱。近くには夏目漱石が通った小学校や石段で知られる男坂があり、大都会の中心でありながら、どこかゆったりとした空気が感じられます。
この図書館は、2006年に逝去された米沢嘉博氏が収集したコレクションを展示・収蔵しています。米沢氏については当サイトでも何度かご紹介しているので、詳しくはそちらをご参照いただきたいと思いますが、明治大学在学中よりマンガを中心とした評論活動を行ってきた米沢氏は、いまや世界的な規模となった同人誌即売会「コミックマーケット」の創立メンバーの一人でもあります。
同館の1階には展示室があり、その人物像はここでだいたい知ることができます。入室は無料ですので、ちょっとのぞいてください。室内は決して広くはありませんが、そこに展示されているものから、スゴさ、がわかるはず。マニアならば狂喜乱舞しかねないほど。マニアでなくても、それらの価値は瞬時にして感じ取れます。
「まんがとサブカルチャー」という名称が図書館名につけられているとおり、マンガの種類やサブカル関連の書籍などがずらりと並びますが、その一筋縄ではいかない「こだわり」には思わずうなってしまうでしょう。珍しいマンガがあるのはもちろんのこと、レディコミやちょっとマニアックなマンガ、そして「付録」までちゃんと残っているのです。
いまや「付録」の価値などは急上昇しているようですが、すでに、当たり前のようにコレクションに加えていた米沢氏という人物の感覚にはびっくり。包括的に集めるだけではなく、「残りづらいものをコレクションしている」(同館スタッフ)という姿勢に納得です。"コミケ"とは無縁の人も、米沢氏の話を聞いてみたいと思うに違いありません。
特別展示コーナーでは「米沢嘉博の迷宮」を開催中。仕事関連や交流のあった人々などの資料なども見られる |
コミックマーケットと米沢氏に関する展示と資料。カタログやグッズなど、コミケの歴史に触れることができる |
1日中過ごしていたい閲覧室
展示室の横の入口から2階に上がると、閲覧室があります。棚にはもちろん、マンガがびっしり。閲覧室の開架資料は約6,000冊。そのほかの雑誌、単行本などを含めた総所蔵数は約14万冊を数えます。閲覧室の棚は少女マンガが充実していて、同館スタッフによれば、「これだけの数の少女マンガが一度に手に取れる場所はほかにはないのでは」ということでした。
図書館の開館時間は、月曜日と金曜日(14時~20時)、および土日祝日(12時~18時)となっています。明治大学の学生と教職員は無料。そのほかは18歳以上であれば、会員となって利用できます。会員は一般(期間1年6,000円)、1カ月(2,000円)、1日(300円)の3種類。館外貸出はしていませんが、閲覧室の資料は自由に見ることが可能です。
また書庫の閉架資料(約6万4,000冊)は、請求すれば1冊につき100ポイントで館内貸出ししてもらえます。プリペイド式のポイントカードを購入するシステムがとられていて、500円(500p)、1,000円(1,100p)、3,000円(3,400p)のカードが用意されています。ちなみに、1日に何冊でも閲覧請求できる「1日閲覧券」(3,000円、現金のみ)もありますので、どっぷりとマンガの世界に浸りたいという人にはこちらがおすすめです。
現在のところ、利用者の年齢層は大学生のほか30代から40代が中心とのこと。男女比はだいたい半々のようです。やはり土日の利用者が多いそうですが、平日の月曜日と金曜日も夜8時まで開いているので、仕事を早めに切り上げて立ち寄ってみてはいかがでしょうか(会員登録、資料請求等は閉館30分前まで)。
2014年度には「東京国際マンガ図書館」(仮称)もオープンの予定。こちらも当サイトの関連記事をご覧いただきたいと思いますが、マンガが今よりさらに重要視されるのはもはや当たり前の流れ。大きな施設がつくられるのは楽しみでうれしいことです。しかし、「米沢嘉博記念図書館」の意義は、規模の大小にかかわらず重要でしょう。
「森ではなく木を見なければなりません。そして、木が枯れれば、森は衰えてゆくのです」。同館を訪ねれば、この言葉を残した米沢氏の理念が伝わってくるはずです。