都立多摩図書館都立中央図書館に続いて、今回は大御所(?)、国立国会図書館の登場です。何しろ、日本で唯一の国立図書館。名前のとおり、国会のすぐ横、永田町1丁目にあるし、敷居高そうだし、自分には関係ない、と思っている人、結構いるのでは?

でも、ふたつの都立図書館も単なる図書館ではなかったように、ここもすっごいとこなのです。それを熟知している人(漫画オタクとか、中小企業のビジネスマンとかも)は、通い詰めているほど。こんな宝の山、活用しないのは、もったいないっ!!

日本の出版物を網羅する知識の泉

満18歳以上であれば、誰でも利用できる国立国会図書館。「でも、貸出し、してないから」。そう言っている人、ホントにもったいないですよ。出版社などが書籍などを納入する納本制度によって、国内の出版物を幅広く収集しているため、極端に言えば、ほぼすべての書籍、資料などが、ここには所蔵されているわけです。

2008年度は、図書約930万冊、雑誌・新聞は約20万種類・1,310万点、地図約53万点、録音資料約63万点、博士論文約51万人分……。なお、年間入館者は約46万人で1日平均にすると約1,600人。ホームページのアクセス件数は約3,198万件、1日平均は9万件弱。と、とにかくスケールが違います。

歴史的にみると、1948(昭和23)年の国立国会図書館法が制定施行され、現在の迎賓館を仮庁舎として開館し、1968(昭和43)年、現在の本館が完成、1986(昭和61)年に新館が建設。2002(平成14)年には支部図書館である国際子ども図書館が全面開館し、同年関西館も開館しました。

帝国図書館と帝国議会の貴族院・衆議院の各図書館の蔵書が基礎となっている国立国会図書館は、名前のとおり国会のための調査図書館。ですが、とにかく他の図書館にはない書籍や資料があるので、利用方法はさまざまです。個人的によく利用するのは、書籍もさることながら、雑誌の記事検索。一般的な雑誌から専門誌、そして学術論文も検索できるので、貴重な資料に出合えます。

また、漫画がかなりそろっていることでも(知っている人には)有名で、閲覧室の机に何冊もの漫画を積み上げて読みふけっている人も結構います。それから、いわゆる発禁本が見られるのも、ここの大きな特徴のひとつ。最近は、電子図書館サービスも進められているので、貴重な資料や写真などさまざまな画像をパソコンで見ることも可能になってきています。

国立国会図書館の一般利用者入口。右手奥には新館が建っている

荷物をコインロッカーに預け、この機械で館内利用カードを発行する

蔵書を検索するOPAC端末。館内利用カードをセットして資料を探し、見つかったら画面上で申し込む

地下8階まである書庫を見学

国立国会図書館は閉架式の図書館です。膨大な量の書籍や資料は地下の書庫に保存されていますが、新館の地下はなんと8階まであります。それでも「光庭」と呼ばれる天窓のある吹き抜けがあるため、それほど地下深くにいるという感覚にはなりません。

書庫の通路に立つと、ひゃーっと声が出るほどその端が遠い。全長はおよそ135m! その規模に圧倒されます。古い書籍はもちろん、明治時代の新聞や、地方の新聞、すでに休刊となった懐かしの雑誌や、見たこともない雑誌、さらにはフリーペーパーまで……。あれこれ見ていると、どれも興味深くて時間がいくらあっても足りないほど。

国立国会図書館ですから、当然、帝国議会の時代からの国会会議録も所蔵しています。海外の国会関連の議事録などの資料もあり、その数にまたまた圧倒されっぱなし。これだけある資料の中から、なにか見せてもらえれば、とお願いしたところ、明治時代の書籍を拝見させていただきました。

相当ボロボロかな、と思っていると、意外ときれい。書庫に保存されてきたのだから、当たり前といえば当たり前。でも、例えば新聞は明治のものより戦時中のものの方が紙質が悪く、傷みもあるとのことです。いろいろな本を見ていくと、口絵がとてもきれいでびっくり。

明治20年から30年代頃には口絵を専門に描く口絵師がいて、紙質も口絵だけはいいものを使っているそうで、確かに本文のページとは違っています。製本も今より丁寧に感じられました。口絵は黄表紙の伝統が引き継がれたものですが、明治30年代に出版された『金色夜叉』などに見られます。こういう本が復活したらおもしろいと思ったものの、実際に作ったら相当値段が高くなりそうです。でも、個性的で魅力的な本は、昔の方が多かったのかもしれません。

新館地下8階の書庫の通路。書庫の規模が実感できる。これでもスペースはあと数年でいっぱいになってしまうという

明治26年8月1日の朝日新聞。政治関連の読み物のページは挿絵が印象的。広告は「色白美人に効果あり」といった内容で今も昔も変わらない

光庭と呼ばれる吹き抜け。地下にいる圧迫感がないように設計された。天窓は中庭の隅に位置している

明治時代の本の口絵。イケ面のことを想っている女性? なんとなくストーリーがうかがえる

こちらはなんともあやしい雰囲気。色恋もの、スキャンダルものはやっぱり昔から人気があったようす

西郷さんは当時から人気が高く、西南戦争後、早い時期に一代記が出版されたという

創刊号からそろった『少年サンデー』。これだけ並んでいると、なかなかの迫力だ

起業家、中小企業ビジネスマンの味方

いかにも図書館らしい出合いをした後は、ぐっと今の図書館を象徴する「科学技術・経済情報室」へ。こちらはビジネス情報の宝庫として、ビジネスマンにはとてもありがたい場所です。

現在、1日の利用客数は平均700人ほど。業界雑誌をはじめ、世界各国の経済事情 / 経営・サービス全般 / 工学 / エネルギー / 建設 / 運輸 / 化学 / 食品 / 生物学 / 農林水産 / 薬学 / 医学・医療などなど、ビジネスに関連する書籍・資料がずらりと並びます。中には1冊10万円もする書籍などもあり、購入が難しい個人や中小企業のビジネスマンにとっては、力強い味方となっているのです。

特に、「○○産業について調べるには」といった基本的なことから、その産業に関する「基礎的知識を得るための資料」「主要統計資料」「企業リスト」「主要調査・レポート類」など、利用者の要望に答えてくれるサービスが充実しているので、「何を見ればいいのかわからない」といった場合でも、適切にアドバイスをしてくれます。

これは国立国会図書館のホームページでも調べることが可能。「調べ方案内」から「リサーチ・ナビ」「しらべるヒント:経済、社会、教育」と進めば、各種産業の調べ方をまとめた「産業情報ガイド」をはじめ、ビジネス情報が効率よく入手できるようになっています。インターネット上で情報が得られる場合はサイトが紹介されていますし、国立国会図書館に所蔵されている関連書籍もわかります。

この便利さは、単にインターネットで検索したときを考えれば、よくわかるはず。いくら検索項目を具体的に入力しても、膨大な情報がヒットし、欲しい情報になかなか辿り着けないという苦労をしている人は多いのではないでしょうか。「科学技術・経済情報室」の情報源は、ぜひとも活用したいものです。

ちなみに、問い合わせが多いのは、業界や市場の動向、会社情報など。最近は、電子部品のシェアなど、ピンポイントの細かい質問も増えてきているそうです。世界の動向、特に中国について調べる人も増加。ここには今の社会がダイレクトに反映されているわけですね。「科学技術・経済情報室」も、それに合わせて日々進化しています。

バックヤードツアーも定期的に行っている国立国会図書館。まずは、この宝の山に分けいってみようではありませんか。

科学技術・経済情報室の室内。熱心に調査をするビジネスマンでいっぱいになる

さまざまな専門雑誌とともに、各国経済事情は欠かせない資料となっている

業種・分野別の資料はきれいに分類されていて、たいへん利用しやすくなっている

重要なテーマや利用頻度の高いテーマについては、簡潔にまとめたリーフレットも用意されている