すっきりとしない夏が過ぎ去り、ちょっと陽射しの強い秋が訪れつつありますが、みなさん、いかがお過ごしですか? 長引く不況に疲れ、夏休みの家族サービスに疲れ……、と、お疲れがどーっと出てくる頃かもしれませんね。からだのケアはもちろん大切ですが、こんなときは大人の隠れ家的バーで過ごすのも一興、では? 今回は、マイコミジャーナル編集部お薦めの個性派バーを2軒ご紹介しましょう。

本に囲まれた洋館に迷い込む
図書館バー Library Lounge THESE(テーゼ)

中世の雰囲気もどこかに感じられるお店の旗

六本木駅から徒歩約10分、西麻布交差点からやや奥まった通りにある白い建物に、何やら洋風(?)な旗が……。これがお店の目印。シンプルな外観、入口とは対照的に、中に足を踏み入れると、そこはまさに「洋館」といった風情です。

木造りの室内にはどっしりとした重厚感が漂いつつも、カウンター席の上は吹き抜けとなっていて、圧迫感はありません。と、いうか吹き抜け!? 当たり前ですが2階があるわけです。単に洋館風の部屋のつくりとなっているわけではなく、一戸建ての洋館となっていて、本当に異空間に迷い込んだかのような気がします。

もちろん、異空間を思わせるのは、店内を埋め尽くす本の数々。3,000冊以上の書籍が壁の本棚に並んでいます。場所柄もあってか、デザイン関係の専門書や写真集などが充実しているようですが、国内外の小説や娯楽書なども揃っていて、本のタイトルやカバーデザインを見ているだけでも楽しめるのではないでしょうか。

1999年にオープンしたお店は、女性は20代から30代、男性は30代から40代がお客の中心を占めています。混み合うのは、だいたい22時頃から深夜1時、2時とのこと。ひとり客からカップル、グループ客まで訪ねてくる人はさまざまで、この落ち着いた空間で思い思いに過ごしています。でも、楽しみは本だけではありません。

1階の奥まったところには、隠れた書斎のようなスペースがある

和書、洋書ともに個性的な本が目立つ。2階には小説なども用意されている

大人気! 本格派カレーライス

THESEで外せないのは、カレーライス。本場の味が楽しめる店の看板メニューとなっていて、これを食べるのが目的というお客さんも多いようです。香り高くスパイシーな味わいは、確かにクセになるはず。種類の多いトッピングも、すべて試してみたくなるほど気になります。

その他の料理メニューもピザ、カジキマグロのソテー、エスカルゴのガーリックトースト、季節野菜のチーズフォンドュなど、なかなかの充実ぶり。もちろん、チーズやスナック類もそろっています。

そして、当然ながらドリンクメニューもさすがといった品揃えです。店のお薦めは、好みのフルーツをお客に選んでもらい、それをカクテルに仕立てるというもの。それぞれのフルーツがどんなカクテルに生まれ変わるのかも楽しみですし、その日の気分に合ったフルーツをオーダーするのもおもしろいものです。

ビール、シャンパン、ワイン、ウイスキー、カクテルなどの定番も、ここでは普段とは少し違った味わいになるかもしれません。それは、やっぱり書物が秘めた不思議な磁力(?)のためなのでしょうか……。

カウンターの棚にも、お酒のボトルだけではなく、数多くの本が並ぶ
(C)Library Lounge THESE」

タンドリーチキンのバターカレー。そのほかに、ポークカレー、たっぷり野菜のグリーンカレーもある

ナッツ類なども取り揃えられたトッピング。カレーをさらに引き立ててくれる

見た目も鮮やかなキウィーのウォッカベースのドリンク。盛り合わせのフルーツからお好みのドリンクをつくってもらえる

気軽に楽しめる盆栽の魅力
盆栽バー 盆さいや

「盆さいや」が入っているビル。下から4番目の青い看板が目印となっている

恵比寿駅から徒歩約3分。ビルの4階にエレベーターで上がると、あちらこちらに盆栽が飾られた小ぢんまりとした空間が現れます。どこか家庭的な雰囲気も感じられるこのお店「盆さいや」は、2001年にオープンしました。

オーナーの藤田さんが盆栽に出合ったのは、アメリカのディズニーワールドでジャパン・パビリオンの仕事に携わったとき。1989年のことです。1970年の大坂万博をきっかけに、日本の「ボンサイ」は世界に注目されるようになったといわれていますが、90年代からは、いわゆる「ミニ盆栽」が日本や世界で流行し始めました。

藤田さんは、盆栽の魅力をより多くの人に知ってもらおうと、1992年に有限会社ボンサイアートを立ち上げ、表参道に店を出しました。すると、若者を中心に人気が高まり、メディアにも取り上げられるようになったのです。

そうして「盆さいや」を開店したわけですが、20代から40代の女性が客層の中心で、外国人も結構やって来るとのこと。盆栽、と聞くと、少し敷居が高いように思ってしまうかもしれませんが、ここでは気楽に盆栽の魅力に触れながら、バータイムが過ごせますし、盆栽についても教えてもらえます。

アットホームな雰囲気が漂う店内に、盆栽が点在している

ちょっと狭いがカウンター席も用意されている

オリジナルのイタリアンも絶品ばかり

ところで。

「盆さいや」のウリは、盆栽が身近に楽しめるというユニークな点にあるのは、間違いありませんが、誰もが「!!」とまぶたをおっぴろげてしまうのは、料理。

今年の5月からここのkitchenをまかされている井上さんは、イタリア北西部ピエモンテのレストランで修業を重ねた、本格的なイタリアンシェフ。そこら辺の高級イタリア料理店にまったく負けない、オリジナリティーにあふれた絶品のイタリアンが満喫できるのです。パスタもすべて自家製、前菜も自家製、というか、すべてが自家製で、本当に驚かされます。

今回の前菜も、濃厚な味わいが赤ワインにぴったりの、タン、ハツ、レバーを使った「豚のテリーヌ」、さっぱりとした風味の「スモークサーモンパテ」、イタリアの山岳地方の定番料理と言える「牛もも肉赤ワインマリネ」は、噛みしめるほど深みのある味……。ひとつひとつにシェフの確かな仕事と愛情が感じられる逸品ばかりです。

前菜の盛り合わせ。一番奥がゴルゴンゾーラクリームをのせたパン。右回りに、スモークサーモンのパテ、牛もも肉赤ワインマリネ、豚のテリーヌ、ヒコイワシのマリネ。中央にはピクルス。いずれも自家製だ

手前は豚スペアリブの赤ワイン、バルサミコ酢煮込み。右手はペンネのほうれんそうソース

自家製パスタは5、6種類用意している

フルーツカクテルはさわやかなのどごしで、アペリティフとしても最適

メニューはその日の食材によって決まるので、逆にどのようなものが味わえるかが楽しみ。ドリンク類では、自家製フルーツカクテルが女性には一番人気だとか。なかなかお目にかかれないニュージーランドワインも用意されていて、これ目当てにお店を訪れる人も少なくないようです。

盆栽にこころ安らげつつ、美酒と美食にも酔いましょう。