夏! といえば寄生虫の季節。そして、寄生虫といえば「目黒寄生虫館」です。ここは、寄生虫を専門に扱った世界で唯一の研究博物館で、しかも入館無料。ぜひぜひ寄生虫に親しみましょう。え? なんか気持ち悪いって? ……確かに。でも、寄生虫のこと、どれだけ知ってますか? これまでの人生でちゃんと寄生虫と向き合ったことはありましたか? 寄生虫の立場になって物事を考えたことがありますか? はい、ないですね。あったらちょっと変わってますね。しかし、です。寄生虫の不思議な世界、意外とはまっちゃったりして。
私財を投じて設立された研究機関
目黒駅から権之助坂を下り、目黒川を越え、山手通りを渡ると、大鳥神社のすぐ先に目黒寄生虫館はあります。駅からは徒歩15分くらい。6階建てのビルの1、2階が展示スペースとなっていますが、まずは寄生虫館の歴史を少々……。
ここは医学博士の亀谷了(かめがい さとる 1909-2002)氏が私財を投じて、1953(昭和28)年に設立した研究施設兼博物館であり、1957年に財団法人として認可されました。以来、国や自治体から補助を受けることなく、独立採算制で運営を続けているのです。入館は無料となっていますが、入館者の寄付も募っていて、1階入口近くに募金箱が設置されています。寄付金も寄生虫館の研究、展示活動の貴重な財源となっています。
当初は、研究者を中心に、広く一般の人も対象とした施設でしたが、20年ほど前からはサブカルブームの中で寄生虫館が取り上げられ、若者も数多くやって来て、デートスポットにもなっていました。現在、入館者の年齢層は幅広く、家族連れもたくさん訪れています。
不思議で奥が深い寄生虫の世界
1階では、主に寄生虫とは何かということについて、2階では、さまざまな寄生虫について展示がされています。パネルなどに解説がありますので、寄生虫に関する基本を知ることができますが、より深く知りたいという人は、2階のミュージアムショップで販売されている『目黒寄生虫館ガイドブック』(300円)を買って見学するのがおすすめです。
1階展示室。さまざまな寄生虫が見られるほか、寄生虫の全体像についてパネルで学ぶことができる |
まさに寄生虫といったイメージの回虫。なかなかのインパクトで、その姿は脳裏に刻まれるはず。印象は……、いかが? |
しかし何よりも、寄生虫たちの強力なインパクトある姿に、ガツンとやられてしまうはず。最初は、ちょっと「グロい」と思われるかもしれませんが、だんだんとかわいく見えてくる、かも。「うわーっ」と思いつつも視線を外せなかったら、あなたはもう、彼らのトリコになっています。最初から魅了されたら……、より深い寄生虫の世界を探求してください。
実際、寄生虫には不思議なことも多く、その世界は奥が深いようです。寄生した相手に有害なマラリア、住血吸虫(じゅうけつきゅうちゅう)などの寄生虫も存在しますが、ほかの動物から「家」と「食べ物」をもらっている寄生虫は、寄生している動物に害を与えてしまっては、自分も生きていくことができなくなるわけで、できる限り寄生相手に影響を与えないように、おとなしく(?)生活し、進化してきました。
とにかく、展示されている寄生虫たちは、どれも個性的ですが、圧巻は、2階で見られる「日本海裂頭条虫(にほんかいれっとうじょうちゅう)」、いわゆる「サナダムシ」の標本。人の中に住んでいたもので、長さは8.8メートル! 腸の中でどのようになっていたのか、よくわかりませんが、お見事としかいいようのない成長ぶりです。幼虫が付着していたマス寿司を食べ、体内で成長したとのことですが、寄生されていた本人に自覚症状はなかったそうです。
寄生虫と人間、寄生虫とペットの関係なども解説されていて、ただ奇妙な寄生虫を見るというだけではなく、実生活に役立ついろいろな知識も得られるので、家族連れで訪ねるのもいいのではないでしょうか。
ミュージアムショップで超レアグッズを
2階のミュージアムショップは、ぜひ立ち寄りたい場所。寄生虫に関する書籍がそろっているほか、オリジナルデザインのTシャツも7種類あって、圧倒的なインパクトです。寄生虫館で採取された寄生虫の幼虫が入ったキーホルダーも、ほかでは絶対に入手できません。タラ、スルメイカなどに寄生するニベリン条虫の幼虫と、イワシ、サバなどに寄生するアニサキスの幼虫の2種類があります。
ストラップもおもしろいものがありますが、中でも注目はフタゴムシのデザイン。フタゴムシは、幼虫のときに出合った相手と一体となって、そのまま生涯を送るのだとか。恋人同士のお守りにぴったりではないでしょうか。プロポーズのときに「フタゴムシのように、これからずっと一緒になろう」と手渡すのもいいかもしれません。結果は保証しないけど。