国道246号線の三宿交差点から世田谷公園を目指し、5分ほど歩くと、公園の前には世田谷区立池尻小学校のグラウンドが広がっていて、小さな生徒たちが体育の授業でかけっこをしていました。ぽかぽかした春の午前10時。とっても平和な風景です。
その小学校の隣にあるのが、今日ご紹介する「世田谷ものづくり学校」。IKEJIRI INSTITUTE OF DESIGN。通称、IID。なんだか、かっこいい名前。でも、何をするところなんだ?
と、いうことで、訪ねてみました。興味深いイベントやワークショップもあって、一般の参加も可能ということが判明。それに、かっこいい、のは名前だけじゃなかったっ。
中学校の記憶も蘇る? クリエイティブ空間
グラウンドの奥にある建物は、まさに中学校そのまま。入口を入ると、「ああ、なつかしいこの感じ……」と思わず言ってしまいたくなる廊下が左右に続いています。まさに学校の空間。廊下の幅といい、ドアの高さといい、昔の記憶を呼び起こしてくれます。
この世田谷区立池尻中学校は、2004年3月に統廃合のため廃校となりました。都内の公立小中学校は、少子化のため統廃合が進められ、03年度末にはその数が90校近くもあったそうです。IIDは、廃校跡地の再生プロジェクトとして04年10月にスタートしました。
教室などを活かした建物には、現在、40ほどの企業が入居しています。中学校は、オフィスビルとなったわけです。企業の内容は実に多種多彩。木工作品を手がけるアトリエ、有名CMにも関わっている広告会社、SANYOのデザインラボ、建築事務所、デザイナー事務所……などなど、なるほど、幅広い意味で「デザイン」と「ものづくり」に携わる、ユニークな人たちが集まっているのです。オフィスビルとは言っても、それぞれの教室でおもしろいことが日々生まれている、クリエイティブな学校といった印象。かっこいい大人たちが、いい仕事をしている中学校とも言えます。
IIDは一般の人にも開放されています(11時~19時 月曜休館)。1階奥の「GO SLOW ゆっくりとカフェ」は日替わりのデリランチなどが人気を呼んでいます。学校のグラウンドを目の前に眺められるカフェというのも、あまりないはず。以前は保健室だった場所なので、保健室談議(?)でもしながら、のんびり過ごすというのはいかがでしょうか。
大人も子どもも楽しめるワークショップ
IIDは、「学ぶ」「遊ぶ」「働く」がひとつになる場所です。ものづくりに関わるワークショップ、イベントなどからさまざまなことを「遊びながら学び」、入居企業と地域などがつながりを広げていくなかで、それらを通じて新たに「ビジネス(働く)」を発展させていく。IIDは単なる施設ではなく、このような活動が幅広い展開を見せていく可能性に満ちあふれた場所なのです。
IIDにはいろいろな企業が入っていて、企業同士の交流も盛んですが、そのような場でいいアイデアが浮かぶことが多いとのこと。なんとなく、わかるような気がします。そして、イベントやワークショップなどにより、一般の人たちとも交流を深めていくわけですが、ワークショップは入居者それぞれによる、プロモーションの場でもあります。
もちろん、その内容は本当にいろいろ、なので、公式サイトでチェックしていただくのが一番。手軽なものづくりから、布に関する表現を4回にわたって学ぶというクリエーターを目指す人のための本格的な講座まで、自分の中にある「ものをつくりたい」「表現したい」という気持ちがくすぐられるものばかりです。
春のイベント・ワークショップでは、4月29日の「IID GREEN DAY」がおすすめ。「みどりの日(現在は昭和の日)」にちなんではじめられたこのイベントは、今年で6回目を迎えます。IIDや池尻小学校の第二体育館、世田谷公園が会場となり、花や野菜などを販売するグリーンマーケットをはじめ、木材を使ったワークショップ、自然観察などのイベント、ライブなど、「みどり」をキーワードにして催しが開かれます。
IIDの魅力が満喫できるこのイベントに、ぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。