「ネタが被ってます」

編集Cさんにまたダメ出しされてしまった。「ネタが被っている」と言っても、最近取り上げた絵日記や下水道のことではない。こちらが取材案に挙げていた「JAXAシンポジウム2007」のことである。編集Cさんによれば、取材にはすでにマイコミジャーナルから編集者を出すことが決まっているのだという。それでは仕方ない。

野口「わかりました……」
編集C「わかってくれましたか」
野口「便乗します!」

押し切ってしまった。というわけで今回お邪魔したのは、10日に都内で行われた「JAXAシンポジウム2007 探る宇宙 食べる宇宙」。今年夏にJAXAが打ち上げを予定している月周回衛星「かぐや」のミッションを解説するとともに、どんどん進化している最近の宇宙食事情を紹介し、実際に一般の方たちにも食べてもらおうという、かなり大盤振る舞いなイベント。インターネットなどで1,000人を募集し、早々に定員に達したというから人気の高さがうかがえる。今回の取材のお目当ても、もちろん宇宙食。本来の記事を担当する女性編集者Hさんの後ろに従って、いそいそと入場する。

野口「いやー、今回は無理を言ってすみません。その代わりといってはなんですが、宇宙食の試食は僕にお任せください」
編集H「あの、シンポジウムのレポートは……」
野口「それはHさんにお任せします!」
編集H「ひどい!」

初対面のHさんにいきなり悪印象を持たれてしまった。ともかくそういうことなので、今回の詳細なレポートについては編集Hさんの記事をご覧いただきたい。

シンポジウムは東京タワーのすぐそばの「ザ・プリンス パークタワー東京」で開催。どことなく今日は東京タワーもロケットっぽい

司会は楠田枝里子さん。知的な話題を引き出しつつ笑いを織り交ぜる司会ぶりはさすが。それにしても月面に行くまで長生きするという楠田さん、ノリノリである

この日集まったのはなんと1,000人! 専門的な話題もわかりやすく説明され、笑いや感心の声が随所で起こっていた

とは言え、投げっぱなしもさすがに悪いので、こちらからも落穂拾いを少々。シンポジウムでは順を追って宇宙食の歴史が紹介されたが、初期の宇宙食はやはりまずかったらしい。狭い宇宙船で数々のミッションをこなさなければならない宇宙飛行士たちにとって、食事は何よりの娯楽。まずい食事は当然士気に関わるので、宇宙開発を進めるとともに、宇宙食もどんどん改良されてきており、今回試食できる宇宙食は普段我々が食べているものと比べて、まったく遜色ないのだとか。

1960年代という初期の宇宙食。見た目どおりにかなりまずかったそうな

2005年に宇宙飛行士の野口総一さんが宇宙でラーメンを食べていたことも記憶に新しいが、将来宇宙で暮らすことを考えて、食事という一番身近なポイントに注力するのは、なかなかの着眼点だと思う。実際に日本が開発した宇宙食はNASAでも評判がよく、とくにレトルトのカレーが人気だとか。各国共同で建設されている国際宇宙ステーションでは「お前の国のメシのほうがうまそうだからちょっとよこせ」なんてやり取りがされているかもしれない。

理系離れが叫ばれている昨今、食事のことなら誰にでもわかりやすい、というのも宇宙開発に対する心理的なハードルを下げるのに一役買っていると言えるだろう。この日も理系のシンポジウムにはあまり見られないおばちゃん達が結構来ていたりして、老若男女様々な人たちが最新の宇宙事情に触れられる貴重な機会となっていた。

ちなみに、このコラム的にシンポジウムで気になったのは、実は宇宙食ではなく、世界各国で準備が進められている月探査計画。月にはまだまだ未知の部分が多く、2025年の月面基地開発を目指して、各国で探査機の打ち上げが計画されているのだが、そのなかでも「チャンドラヤーン」というインドの月探査機がかなりすごい。

世界各国の月探査計画。なんか右上のほうに目に優しくない物体があるんですけど

チャンドラヤーンはサンスクリット語で「月の乗り物」という意味らしい。しかし本当にこんな色なんだろうか……

画像を見てもらえればわかると思うが、極彩色というツッコミどころ満載の外見をしている。専門知識を持たない私が素人目に見てもかなり怪しい。「宇宙船は銀色でなければならぬ」という決まりはないはずなので、べつに何色でも構わないとは思うのだが、それにしてもインドの担当者がわかりやすく図示するために色分けをしているのか、それとも本当にこんな極彩色にする気なのか、さっぱり見当がつかない。

しかも打ち上げ予定は2008年。めちゃめちゃ来年じゃないっすか! しかしそこはIT大国のインド、きっとやってくれるに違いない。チャンドラヤーン……この名前、覚えておこう。

などと余計なことを考えているうちにシンポジウムもお開き。いよいよお待ちかねの試食ということで、会場内もざわつき出した。そこへ「前の席から順にお進みください」というアナウンスが。報道席は一番前。ということは我々が試食会場に一番乗り!?

野口「Hさんやりました! 報道関係者の特権を活用するという長年の夢がついにかないましたよ!」
編集H「夢、ちっさ!」

というわけで、次回はいよいよ宇宙食を試食します。

シンポジウムの途中も、あからさまに立てられたパーティションの向こうが気になってしょうがない

ついに試食会がスタート! 果たして宇宙ラーメンは無事に食べられるのか?