「不思議な館内をさらに探検する次回に続く。」……と書き記して数カ月。不思議な館内どころか、不思議な力で更新できず本当に申し訳ございません。そんなわけで約半年ぶりに少女まんが館レポートの後編をお送りします。

2009年春、東京都日の出町の古民家から、隣町のあきる野市に引っ越した私設図書館・少女まんが館。管理人の中野さんご夫妻の蔵書に加え、捨てるには忍びない単行本や雑誌を、全国の少女まんがファンから預かるようになり、現在までに集まった蔵書が、およそ3万5,000冊。前編でお伝えしたように、引っ越した当時はまだまだダンボールが山積みだったものの、館内の整理も順調に進み、現在では私設というわりにはかなり本格的な、玄人はだしの本格的な図書館が完成。

こちらは開館直後の春の写真から。これでも新築のわりには、かなり風格がありますが……

それが秋にはこうなりました。撮影時の日光の加減もありますが、芝生や植木の緑も増えて、青い建物がさらに周囲と馴染んだ感じ

比較用にまずは春の写真を何点か掲載。こちらは階段まわり。引っ越し直後とあって、スペース的にはまだまだ余裕

続いて1階の本棚の様子から。当初はまだまだ運び込んだダンボールが山積みという感じでしたが……

整理が終わって、現在ではこんな感じに。開架と閉架の区別はないので、元に戻しさえすれば、どれを読んでもOKです

奥の本棚にも現在は年代物の雑誌類が並べられました。フラッシュを焚いて撮りましたが、夕方以降は子どもが怖がりそうなぐらい暗くなります

外見も中身も青く塗られた、ユニークな建物もさることながら、今回あらためてお邪魔してわかったのが、館内に濃厚に詰まった懐かしい空気。お邪魔したのがちょうど夕方とあって、白熱電球に照らされた館内の様子は、どう見てもインターネットがまだなかった時代の日本。それも「昭和を再現しました」というよくある懐かし系のセットではなく、自然と枯れているのがなんともすごい。「少女まんがファンの隠れ家」と言うのは大げさかもしれないが、中高年向けの渋い雑誌に紹介されていても、まったく何の違和感もない雰囲気だ。古民家を利用した引っ越し前の少女まんが館も、座敷童が住んでそうな場所だったが、引っ越し後の新しい少女まんが館も、座敷童は確実に住み移ってきているのだろう。

階段の裏側に白泉社の単行本がぎっしりと。並んでいるのは、樹なつみ『八雲立つ』、大島弓子『綿の国星』、神谷悠「京&一平シリーズ」などなど

階段を上がって2階から見下ろしてみました。こちらにもズラリと単行本がならぶほか、踊り場の本棚には1970年代の「りぼん」なども

再び開館当時の写真から2階の読書スペース。管理人の中野さん(左)と、初めての一般客のおふたり

同じ場所が、秋にはこうなりました。白熱電球の灯りが懐かしい雰囲気にさせてくれます。とても21世紀とは思えません

同じ窓辺を別角度からちゃぶ台ごしに撮影。なるべく古道具を集めたというだけあって、置いてある少女まんがだけでなく、本棚も机もノスタルジック

2階の奥は倉庫スペースに。館内にはかなりの冊数があるとは言え、まだまだ蔵書が増えても大丈夫そうです

1階に戻り、書架の間の窓際にも読書スペースを設置。なんとなく涼しげですが、実際に夏はかなり過ごしやすかったとのこと

こちらも1階の本棚から。蔵書のなかから3冊以上重複している単行本を、特別価格で販売中。売上げは維持費に回されます

引っ越して1年目の今年は、来館者の増加よりも寄贈者の増加のほうが顕著だそうで、この日も有志の方から贈られてきた少女まんがの荷解きが行われていた。毎週土曜日に開館を行うのは10月いっぱいだが、文化の日にあたる11月3日も開館するほか、冬季の間も寄贈書の受け取りや、来館者の事前希望に合わせた開館を随時行うそうなので、気軽に公式サイトの連絡先まで問い合わせてほしいとのこと。

もっともっと少女まんがファンに知ってほしい、でも賑わいすぎてしまうのはちょっともったいない。そんな贅沢な悩みを思わず抱えてしまう、奥多摩の秘密の図書館にぜひ足を運んでみてもらいたい。

こちらは春の1枚から。決して物置きでもトイレでもありません。「水色弁天茶室」と命名された別館で、設計士さんと現場監督さんがついでに建てちゃったとか

内部はなんと茶室仕立て! 現在では児童用スペースとして活用中。まあ、本館は狭いし、子どもが走り回ると危ないですからね

児童用スペースということで、こちらには『ちびまる子ちゃん』『美少女戦士セーラームーン』などポピュラーな作品を設置

東京都とは思えないほど静かな時間が満喫できる少女まんが館。かくして奥多摩の秋の日は暮れていくのでした……