「気になるところに、とにかく行ってみよう」という当コラム。そんなわけで各地にお邪魔させてもらっているが、それでも時折ジレンマに襲われる。単純に筆者が東京在住なので、ネタが関東圏に限られがちなのだ。日本にはもっと面白い場所があるはずだ! 「じゃあなるべく遠くに行ってみますか」ということで、年末年始を利用して九州まで行ってみた。ネタになる場所があればよし、なければ黙って個人の思い出にすればよし、という恐るべきノープランである。出会いはたまたまその道中に起こった。
大分県と宮崎県の県境にある「道の駅 宇目(うめ)」。土産物をあれこれ眺めていると「トトロのバス停の地図」なるメルヘンな文字が目に飛び込んできた。周囲に飾られた写真を見ると、確かに木造の小さなバス停の隣に、スタジオジブリの映画『となりのトトロ』のキャラクターたちが立っている。それにしてもなぜこんなところにトトロのバス停があるのか……?
今回紹介する大分県佐伯市宇目大字南田原字轟はこのあたり。「おおいたけんさえきしうめおおあざみなみたばるあざととろ」と読みます |
拡大してみました。大分県豊後大野市(地図上)と宮崎県延岡市(地図下)をつなぐ国道326号線で行くのが便利です |
さらに拡大。目安となる「道の駅宇目」は、この地図の下部分。そこから北上して、県道6号線を1.5キロほど西へ進んだところが今回の目的地。ご覧のとおり、周囲は見事に山です |
こちらが「道の駅 宇目」。休日ということで結構な人手。右奥に見えるのは、日本で7番目に大きい斜張橋「唄げんか大橋」。すごい名前…… |
道の駅宇目のスタッフと宇目振興局に問い合わせたところ、トトロのバス停がある場所はもともと「轟(ととろ)」という地名なのだとか。いまからおよそ50年前、1959年に轟地区の人たちが子どもたちの通学のため、手作りで小さなバス停を作り、やがて大分バス公認のバス停「ととろ」として定着。時は流れ、1988年に映画『となりのトトロ』が公開されたが、当初はバス停に誰かが作品のシールを貼った程度だったという。
不思議なことが起こったのは、1997年9月21日。一夜のうちに大きなベニヤ製のネコバスが置かれ(未だに誰が置いたのかは謎らしい)、さらに同作品のキャラクターを描いたプレートもいつの間にか増設。地元の人たちの改修などを経て、いまでは「トトロのバス停」「トトロの森」として、近隣各県から観光客が訪れるほどだという。2000年に大分合同新聞に取り上げられたときは、周辺の道に車の列ができるほどの盛況ぶりだったとか。ならばとさっそく現地に向かってみることにした。
それでは行ってみましょう。道の駅宇目や、宮崎県側から北上する場合はこの「↑豊後大野 ←日之影 49km」の標識が目印です。ここを左折 |
交差点の名前もズバリ「ととろ入口」 |
道の駅宇目から車で10分ほど走り、トトロのバス停に到着。いくつかイラストボードが飾られているほかは、紛れもない静かな田舎のバス停だ。戦後にバス路線が開通した当時は『トトロ』の劇中に登場したような、ボンネットバスが走っていたのだとか。最近では2004年秋に台風でバス停ごと吹き飛ばされてしまったが、地元の人たちとボランティアの協力で、できるだけ古い木材を用いて修復されたのだという。今回夕方に訪れたせいもあるがこのバス停、かわいいだけじゃなくて、妖怪やお化けが出そうなちょっと怖いところもあるのがまたいい。
ということでトトロのバス停に到着! バス停自体は約50年前から少しずつ直して使われているだけあって、かなり雰囲気があります |
正面からはこんな感じ。このままでもなかなかですが、雨が降れば劇中のシーンそのままという感じ |
さて、次回はすぐ先にあるもうひとつのスポット、トトロの森に向かいます。実物大(?)のネコバスのほかに、トトロも群れで現れますので、お見逃しなく。
<ご注意>
今回紹介したバス停は現在も実際に使用されているものです。付近の迷惑とならないよう、マナーを守ってご訪問ください。付近の交通量は少ないですが、観光の際は車にも十分お気をつけください。