「気になるところに、とにかく行ってみよう」という当コラム。そんなわけで各地にお邪魔させてもらっているが、それでも時折ジレンマに襲われる。単純に筆者が東京在住なので、ネタが関東圏に限られがちなのだ。日本にはもっと面白い場所があるはずだ! 「じゃあなるべく遠くに行ってみますか」ということで、年末年始を利用して九州まで行ってみた。ネタになる場所があればよし、なければ黙って個人の思い出にすればよし、という恐るべきノープランである。出会いはたまたまその道中に起こった。

大分県と宮崎県の県境にある「道の駅 宇目(うめ)」。土産物をあれこれ眺めていると「トトロのバス停の地図」なるメルヘンな文字が目に飛び込んできた。周囲に飾られた写真を見ると、確かに木造の小さなバス停の隣に、スタジオジブリの映画『となりのトトロ』のキャラクターたちが立っている。それにしてもなぜこんなところにトトロのバス停があるのか……?

今回紹介する大分県佐伯市宇目大字南田原字轟はこのあたり。「おおいたけんさえきしうめおおあざみなみたばるあざととろ」と読みます

拡大してみました。大分県豊後大野市(地図上)と宮崎県延岡市(地図下)をつなぐ国道326号線で行くのが便利です

さらに拡大。目安となる「道の駅宇目」は、この地図の下部分。そこから北上して、県道6号線を1.5キロほど西へ進んだところが今回の目的地。ご覧のとおり、周囲は見事に山です

こちらが「道の駅 宇目」。休日ということで結構な人手。右奥に見えるのは、日本で7番目に大きい斜張橋「唄げんか大橋」。すごい名前……

こちらが道の駅のレストハウス「うめりあ」。右のほうになにやら見覚えのある影が……

どう見てもトトロです。しかしなぜこんなところにトトロが?

おみやげコーナーにもいろいろとトトログッズが。そこで見つけたのが……

トトロのバス停へのイラスト入り地図。今回はこれを手がかりに向かってみます

大分名物・だんご汁のとなりのトトロ。だんご汁、地元の野菜たっぷりでおいしゅうございました

大分名物・吉四六漬(画・富永一朗)のとなりのトトロ。まさか富永一朗先生とスタジオジブリが大分でコラボするとは……

小トトロたちも。当初こうしたグッズの取り扱いはなかったものの、立ち寄る人の「トトロありますか?」という要望に応えて置くようになったとのこと

地元の焼き物の下には、ネコバスたちがちゃんと停留しています

こちらは地元の方たちが作ったトトロのプレート。イラストと押し花を組み合わせた、素朴で味わい深い一品

レストハウスに飾られた大きなイラストボードは、佐伯市内の方が市に寄贈したもの。「それなら多くの人が見られる場所に」と当時の市長の計らいで、この道の駅に置かれたのだとか

レストハウスからは、北川ダム湖と唄げんか大橋が望めます。絶景です

道の駅宇目のスタッフと宇目振興局に問い合わせたところ、トトロのバス停がある場所はもともと「轟(ととろ)」という地名なのだとか。いまからおよそ50年前、1959年に轟地区の人たちが子どもたちの通学のため、手作りで小さなバス停を作り、やがて大分バス公認のバス停「ととろ」として定着。時は流れ、1988年に映画『となりのトトロ』が公開されたが、当初はバス停に誰かが作品のシールを貼った程度だったという。

不思議なことが起こったのは、1997年9月21日。一夜のうちに大きなベニヤ製のネコバスが置かれ(未だに誰が置いたのかは謎らしい)、さらに同作品のキャラクターを描いたプレートもいつの間にか増設。地元の人たちの改修などを経て、いまでは「トトロのバス停」「トトロの森」として、近隣各県から観光客が訪れるほどだという。2000年に大分合同新聞に取り上げられたときは、周辺の道に車の列ができるほどの盛況ぶりだったとか。ならばとさっそく現地に向かってみることにした。

それでは行ってみましょう。道の駅宇目や、宮崎県側から北上する場合はこの「↑豊後大野 ←日之影 49km」の標識が目印です。ここを左折

交差点の名前もズバリ「ととろ入口」

こちらは逆に、豊後大野市方面から南下した場合の見た目。「北川↑ 日之影→49km」の標識があるので、ここを右折

「ととろ入口」の交差点を曲がっただけで、すでになんかそれっぽい! このまま道なりに進みましょう。盛り上がってまいりました

田んぼ脇の道を進むと、ほどなく「←日之影 ととろ→」という標識のあるT字路があるので、ここを右折

T字路をよく見るとカーブミラーの下になんかありますね……

ギャー! 出たー! 経年劣化を経て、ジブリっぽかったトトロの看板が水木しげるっぽくなりました……。ともかくここを右へ

お~『トトロ』っぽい! 思わずここまでテンションが上がってしまうのは、ジブリマジックのなせる業か、それとも轟地区の素朴な魅力ゆえか

道の駅宇目から車で10分ほど走り、トトロのバス停に到着。いくつかイラストボードが飾られているほかは、紛れもない静かな田舎のバス停だ。戦後にバス路線が開通した当時は『トトロ』の劇中に登場したような、ボンネットバスが走っていたのだとか。最近では2004年秋に台風でバス停ごと吹き飛ばされてしまったが、地元の人たちとボランティアの協力で、できるだけ古い木材を用いて修復されたのだという。今回夕方に訪れたせいもあるがこのバス停、かわいいだけじゃなくて、妖怪やお化けが出そうなちょっと怖いところもあるのがまたいい。

ということでトトロのバス停に到着! バス停自体は約50年前から少しずつ直して使われているだけあって、かなり雰囲気があります

正面からはこんな感じ。このままでもなかなかですが、雨が降れば劇中のシーンそのままという感じ

サツキとメイちゃんもさすがにややヘタってきております。まあ、誰でも年はとりますからね

こちらが大分バスの時刻表。数字が小さいですが、平日のダイヤは1日6本、土曜日は3本、日曜&祝日に至っては運行ナシ! こんなところまで妙に『トトロ』っぽい……

なおバス停は、このように小川に渡された丸太の上に建っております。『トトロ』というか『未来少年コナン』っぽい

床板の上にこわごわ乗ってみました。ミシミシ音がします。節穴が空いてますが、残念ながらススワタリ(まっくろくろすけ)は確認できず

バス停の壁には、交通安全の短歌のほか「猫バス トトロの森は150m→にあります」の文字。これは行くしかないでしょう

車で立ち寄る場合は、バス停の少し先に共同の駐車スペースがあるので、こちらを活用しましょう

さて、次回はすぐ先にあるもうひとつのスポット、トトロの森に向かいます。実物大(?)のネコバスのほかに、トトロも群れで現れますので、お見逃しなく。

<ご注意>
今回紹介したバス停は現在も実際に使用されているものです。付近の迷惑とならないよう、マナーを守ってご訪問ください。付近の交通量は少ないですが、観光の際は車にも十分お気をつけください。