ホビーに関するネタであればとにかく足を運んでみる当コラム。2008年も抱き枕工場から痛車イベントまで、様々な場所にお邪魔させていただいたが、じつはまだ紹介していないネタがあった! それは先の学園祭シーズンに行われた、デジタルハリウッド大学主催の「デジハリ祭2008」。様々なクリエイターを特別講師として招いている同校だけに、学園祭のゲストもかなり豪華。いち学園祭としてはもったいないほどの内容だったので、この場を借りて紹介しておきたい。

オレンジがシンボルカラーのデジタルハリウッド大学。大学祭は10月11日、12日の両日に行われた

廊下はこんな感じ。オフィスビルのワンフロアが校舎ということもあって、学園祭の様子もいまどきな雰囲気

まず行われたのは、MTVで放送中のCGショートアニメ『ウサビッチ』の舞台裏を制作者自ら語る特別講義「ウサビッチ特別イベント デジハリ祭の時間」。壇上には同作品の監督・原作・脚本・絵コンテ・アートディレクションの5役を一手に担う富岡聡氏が登壇。「自由にやっていいよ」という当初のオーダーから「ゆるい」「シュールすぎ」という数々のダメ出しを経て、完成形に近づいていく過程が制作時のデータと合わせて解説された。「魚肉ソーセージみたいな体型のキャラはリアルな人体よりよっぽど大変です」と本作ならではの苦労を語る富岡氏。ショートアニメに触れる機会の多いデジハリの学生たちも、現在進行形で活躍する富岡氏の具体的な言葉の数々に聞き入っていた。

富岡聡監督が披露する「メイキング・オブ・ウサビッチ」。主人公のふたりが囚人という設定は、初期のデザイン案でキャラクターがボーダーシャツを着ていたところから転じて決まったとか

衝撃の資料を公開! これが『ウサビッチ』の主人公・プーチンの3Dモデルに貼られているテクスチャー。つまりプーチンの皮である!

続いて行われたのは「『僕の彼女が画面から出てきません!』コンテスト」。オリジナルキャラクターを作成し、そのキャラへのこだわりを一番熱く語った人が優勝、という学園祭ならではの豪快すぎる企画だ。秋葉原に校舎を構え、現代のオタク市場の真っ只中で日夜学んでいるデジハリ生にとっては、まさに本領発揮の場と言えるだろう。コンテストは照れとツッコミと爆笑が入り交じる賑やかなものとなったが、発想の自由さが試されたり、プレゼンの完成度が優劣を分けたりと、ネタ企画の枠を超えて、意外なほど充実した「授業」となっていた印象。これは毎年恒例の企画にしてもいいのでは?

「僕の彼女が画面から出てきません! コンテスト」。生徒のみなさんが考えた「俺の嫁」をプレゼンする、学園祭ならではの企画

優秀賞はこちら! パトカーが美少女ロボに変形する、一挙両得のカツカレー的プレゼン! これは近々『トランスフォーマー』に出るやもしれぬ!

特別協賛のHOBINO賞はこちら! 女性キャラの「足」のみの研究発表を行ったという、一番尖った内容

最優秀賞は電子の妖精「恋するデバッガー マジカルひかるん」! キャラクターだけでなく、プレゼン能力の高さも評価された

受賞者にはすぐにビデオカメラを向けて学生スタッフがインタビュー。こういうところはデジハリらしいかも

ここではそのほかの出展風景を紹介。大きな大学や専門学校に比べると規模はもちろん小さいが、写真やイラスト、自主映画など、普段から学園祭ノリの活動に親しむデジハリ生だけあって、粒よりの出展が行われていた。

撮影スペースを設置し、部員の作品展も設けていた写真部のみなさん。一部コスプレ部と化しているようですが……

こちらでは同人ゲームを販売中。ファンタジーRPGはやっぱり根強い人気

複数の1年生監督による自主映画企画「ごった煮プレジデント」の塩川さん。校舎と地元の秋葉原にサスペンス映画を制作

学園祭らしくこんなかわいい小物の出店も。こちらはイラストと手芸の腕を活かした「Milk Crown」

機材やCDはほぼ自前という放送部のみなさん。デジハリなのでアニメソング中心かと思いきや、洋楽中心のかなり凝った編成

こちらは忍者部……ではなく「NIJNA TOOLS」を運営する株式会社サムライファクトリーのみなさん。こんな見た目でも学園祭だと違和感ゼロ

夕方から行われたのは、サンライズのチーフプロデューサー、古里尚丈氏を招いて行われた「アニメ制作特別講座」。いまのアニメ業界を語る上で欠かせないスタジオ、サンライズのプロデューサーの講義とあって、数多くの聴講者が詰め掛けた。古里氏は「本当はバカ話をしたいんだけど……」と苦笑しながらも、作品にクリエイターとして直接関わる「制作」の話から、作品をいかに商業的に成功させるかという「製作」の話まで幅広く熱弁。アニメの制作工程はもちろん、作画系、シナリオ系、音響系といった役職に合わせたキャリアプランまで、かなり実践的なトーク内容に。最後は「僕にはできない、なにかすごいものをスタッフたちが形作っていく。そういう積み重ねがプロデューサーの楽しみなんです」という言葉で締めくくった。

『舞-HiME』シリーズや勇者シリーズといった人気作に関わってきた古里尚丈プロデューサー。「アニメーターには僕らに見えないものが見える。感動しますね」と現場のやりがいを語った

最後に行われたのは、飯田和敏氏、麻野一哉氏、米光一成氏という名物ゲームクリエイター三氏が送る「ふいんき語り! 夜のゲーム大学 ~アキバの中心でデジハリ祭スペシャル!~」。『日本文学ふいんき語り』といった数々の著作で注目を集める三氏のトークショーだけあって、とっくに日は暮れているにもかかわらず、会場はこの日一番の人手に! 裏話満載のゲーム史概説や、15分まで濃縮したゲームクリエイター講座、制作者自らツッコミを入れるニコニコ動画鑑賞といった濃いネタが、芸人顔負けの絶妙な掛け合いとともに展開され、客席の爆笑を呼んでいた。

左から飯田和敏氏、米光一成氏、麻野一哉氏。三氏ともゲーム制作で活躍する傍ら、トリオによるトークライブも積極的に開催。この日も多くの固定ファンが学外から駆けつけた

三氏が手がけたゲームをニコニコ動画で検索し、その動画に制作者自らツッコミを入れるという前代未聞の企画も! 「あー、ここ作るの苦労したわ」というボヤキが頻出

デジハリ生が制作中のゲームも紹介。こちらはどこでものぞけるスコープを使い、いたずらやスナイプを行うというユニークな作品

この翌日も数々のイベントが行われ、「デジハリ祭2008」は無事終了。最後に実行委員長を務めた、稲益彩香さんに学園祭を終えた感想をうかがってみた。

「勢いだけで妥協のない無茶な企画や連日連夜の死亡フラグを切り抜け、本当に多くの方々からのご協力をいただき、無事開催することができました。この学園祭を通して一人でも多くの方々にデジハリの魅力を伝えられたら幸いです。本当にありがとうございました!」

秋葉原という地の利を活かして、様々な方面で話題を集めるデジタルハリウッド大学。少々気が早い話ではあるが、次回学園祭が行われる際は秋葉原観光のついでにぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。